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「かみかさ」第14話

いのりは、その日の最後のお客様だった。
バタバタと一斉に閉店に取り掛かった。
燈郎が店の扉の札をclose にする時、傘の忘れ物に気づいた。
「さっきの零宮様の傘だ。」と直感的に思った。
先輩の横井に
「傘の忘れ物があって、零宮様のと思うので、追いかけてみます。」
と店を出た。
今日は、梅雨告げる本降りの雨だったのに、今だけ止んでる。また降り出すのではないだろうか。夏の始まりの若葉には露がついていた。

いのりを見つけられなかった。
「零宮様の物とは限らない。」
この手に握った傘は、零宮いのりさんのイメージさせたのだ。
木の持ち手のしなやかさも、いのりさんの髪のしなやかさと一緒だった。

店に戻ると傘立てごと店内に入れた。


気づいてと
感じてと
傘は言う

たった一人でいいから

気づいてと
感じてと
傘は言う

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ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?