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コトバの灯

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cover image/自由学園明日館 Jiyugakuen Myonichikan <タイトル画について> 1931(昭和6)年、自由学園10周年記念に当時の生徒たちによって描… もっと読む
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記事一覧

【随想】コロナが告げ知らせるもの

【随想】コロナが告げ知らせるもの

自粛生活を始めてから、約二週間が経った。毎日、新しい情報が流れ、人々の本音が交錯するSNSを見る。気晴らしにファンタジー小説を読む。退屈とは程遠いけれど、このモヤモヤ感はいったい何だろう?

久々に、重たい歴史に触れたくなって、『新・映像の世紀』を見返した。

20世紀は破壊の時代だった。途方もない資金と資源を費やし、あらん限りの人力と頭脳明晰な人知を結集して、人類を破壊してきた、戦争に次ぐ戦争。

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【随想】王道の始め ―コロナ施策に思うこと―

【随想】王道の始め ―コロナ施策に思うこと―

新型コロナウイルス感染拡大に対する、世界各国の施策の違いを見るにつけ、思い起こす言葉があります。

生ある者を十分に養い、死んだ者を手厚く弔うという意味で、孟子はこれを政治の基本とすべきであると説いています。

ただでさえ感染の恐怖から逃れられないのに、その上、経済的な圧迫に押し潰されそうな国民。その国民の生活を保証することが、政治のあるべき姿、つまり王道です。

ここに紹介する安彦良和『王道の狗

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【随想】寝ても覚めてもクーデンホーフ=カレルギー!?

【随想】寝ても覚めてもクーデンホーフ=カレルギー!?

クーデンホーフ=カレルギー、クーデンホーフ=カレルギー、クーデンホーフ=カレルギー……。なんだか思わず舌を噛みそうですが、これは何かの呪文? いや、これはですね、近代ヨーロッパ史では知る人ぞ知る、「欧州連合(EU)の父」とも呼ばれる人物の苗字です。ちなみに貴族出身。だからフルネームはもっと長い……(詳しくは下の記事へ!)

もともと仕事の企画の一つとして、お知り合いの大先輩ライターさんが教えてくだ

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【随想】"It's not goodbye, it's au revoir." ―英国のEU離脱を惜しむ歌―

【随想】"It's not goodbye, it's au revoir." ―英国のEU離脱を惜しむ歌―

「さようならではなく、また会いましょう」

ヨーロッパ時間の2020年1月31日、英国がEUを去ります。「脱退協定案」可決後、欧州議会では議員たちが一斉に起立し、名残を惜しんで『Auld Lang Syne』を斉唱しました。

いわゆる『蛍の光』ですが、歌詞の意味はほぼ正反対。日本ではなぜか“別れの歌”になっていますが、詩人ロバート・バーンズ作詞による本来のスコットランド民謡はAuld Lang

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【随想】クルディスタンの風

【随想】クルディスタンの風

クルドの人々について伝え続けているフォトジャーナリスト、安田菜津紀さんのインタビューより。

「伝えなければいけないたくさんの問題がありますが、私を引きつける何かがあるんです」

異国に住む民族の存在を“理解する”には、一筋縄ではいかない難しさもありますが、異文化に“思いを馳せる”ことは人間に与えられた想像力をもってすれば可能だし、素晴らしいこと。

戦争・紛争のために悲惨な境遇に置かれていること

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【随想】文化人類学的生き方のすすめ

【随想】文化人類学的生き方のすすめ

ちょうど今から3年前、クリスマスをテーマにこのような記事を書きました。

それから世界情勢も日本社会も目まぐるしく変化し……と言いたいところですが、実質的には悲惨な出来事が増えただけのような気がします。果たして、人類は賢明な方向へいくらかでも進んだのでしょうか?

アフガニスタンで中村哲医師が銃弾に倒れたニュースはまだ記憶に新しく、ともすれば、宗教間の争いや利害関係が生んだ出来事として捉えられてし

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