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バックヤード 【短歌5首】
月並みな悪役でいる所作として
薄目で見やるウェザーリポート
満潮の時刻を過ぎる
薄繭の銀塩フィルムに露光する影
これからがカランと鳴ってしみ入れば
朔夜に虹が架かる 友引
ついさっきすれ違ったか
あの時の素足の君とオカリナを吹く
考えることをやめた日
雑踏のもとでゆらめく濃いめのカルピス
Mellow Yellow【短歌5首】
締まりない朝を飲みほす
恐竜のフィギュアの君はステゴサウルス
負けないと叫びたいから
錆びついたギターの弦はそのままでいい
輝きが足りなくなった歌声で
怯える朝はしらみ始める
鼈甲のギターピックは弾かれて
夢見に甘いメローイエロー
悲しみのマニファクチャーを見やるとき
一輪挿しに唖(おし)の花咲く
久々に短歌を詠む気分になった。少し肌寒い。ハロゲンヒーターで手先を温めている。
春のよすが 【短歌5首】
公園のベンチで君を待てという司令を受けて凪いでいる空
一匙の光を撒いたかのようにたなびく君のスプリングコート
桜には散るわけがあり僕たちは川面に落ちるわけを見ていた
あの角のカーブミラーのその先でタイムマシンが手招いている
秘密裏に安全弁は閉ざされて暮れゆく街で息ができない
久々に休日1日を使って短歌と向き合ってみた。いい出来栄えではないかもしれないが、これが今の私の姿なのである。
砂の三郎 自選 文語短歌
秋の呼び声
ため息の海を泳げる星なればフォーマルハウト(みなみのうお座)息継ぎはせじ
在りし日のシオカラトンボの複眼は死を覗きたり秋の風吹く
スナフキン背は夕映に明くして面差す影よ道行かば行け
手酌日和
「たましひの燃焼室は空だらう」
手酌講じて枝豆に問ふ
詠む歌のひなぶるがごと青首の風呂吹き大根すのおほくある
夜のエチュード
室外機羽音は雨の裏路地にブルーブラックの澱を産みたり