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Nakano Nanae
2022年9月5日 18:57
八月の熱さのせいであっという間に水滴が乾いていくのを見ていた「神様に試されているんだ」と言う君の神様は何をそんなに怯えているの水溜まりに映る色違いの羊雲どこにも続いていない道なるべく思い出さないようにしてるから涼しい雨でどうか この夏を洗い流して
2022年8月21日 12:51
夢の中で、私は時々男の子で、海の見える学校に通っていた。一人目の友達は、夏休みの前に転校してしまった。二人目の友達は、空想上の家族に手紙を書いていた。三人目の友達は、新月の夜について話してくれた。四人目の友達は、「かしこい兎」と呼ばれていた。五人目の友達は、この町のことを何でも知っていた。六人目の友達は、一人目の友達とよく似ていた。七人目の友達は、飴玉みたいな声で笑っていた。七人
2022年8月7日 20:26
”これは君にしかできないことだよ""だから早くあいつらに火を点けて"ぼく一人のためだけにある鉄塔から今日も人体に有害な電波が出ている体温が下がる飲み物ばかり飲むようになってそれからすべてが幻になった美しい人やものが世界から消えていくたびになんだか賢くなったような気がするんだ夜のせいかなそのうち放火事件が起こるこの町でも赤と黄を混ぜればオレンジになるそれだけで生きていけると思っ
2022年8月5日 21:18
誰かが法則を破って軌道から外れたそのうち違う誰かも別の方向へ飛んでいったやがて惑星はひとつもいなくなり太陽も燃え尽きたその塵があつまってまた明日から新しい世界が始まるらしい次に生まれ変わるなら彗星がいい放物線の軌道を描いてさ一度過ぎればもう二度と戻ってこなくてすむように
2022年7月27日 17:27
私の脳や心臓や体中の血管の中にたくさんの人が住んでいてときどきお祭があったり静かに祈ったりしているそのせいで私は浮かれたり悲しくなったりあなたを美しいと思ったりするのだろう
2022年7月22日 10:21
ずっと見つめていないと、消えてしまいそうだった。ずっと見つめていたところで、どうせ消えてしまうんだけど。「朝になるといなくなる星みたいでしょう。」だったら星の寿命ぐらい、長生きしてくれたらいいのに。朝になっても、私が死んだあとも、ずっとそこで、光っていて。
2022年7月20日 01:59
泥でできた舟のあたたかい匂いとやわらかい感触その中で眠っていたかった沈むまでの間だけでよかった
2022年7月17日 21:05
この星を隅から隅まで逃げ回って結局元の場所に戻ってきた時隕石が落ちて津波が星を覆ったそれからその波が全部凍って私の足跡は氷漬けにされた逃げ回ったことも戻ってきたことも誰も覚えていないから足跡は宇宙人のものだということになり晴れて私は宇宙人となった
2022年7月17日 12:23
無知と無関心ととびきりの無力でもって私はあらゆる罪に加担しているいつも手遅れになるのを待っていたそのほうが楽だから本物の魔法陣はあくまでもさりげなく私たちを包囲している誰も見ていない空にだけ架かる白黒の虹綺麗事しか言わないと決めた君が削り出す命は南極の氷ぜんぶよりも重い今ならまだ好きな場所に地平線を引けるのだそうだどうか君の喉元を通っていくものが美しく柔らかで澄みき
2022年7月2日 18:17
王子様が「絶望して死ね」と言ったみんなも真似してそう言ったよく見ると王子様は人形だっただってあんな細い体に内臓が全部入るはずがないから歌うたいが大好きな食べ物を食べたくない時の気持ちについて歌っていた日曜日の記念公園には平等に太陽の光が降り注ぐけど皮膚病になるのは決まってあの町の人本物の銃声を知ったからこの部屋から宇宙の果てまで届く普遍を探してる歳を取っても若いまま死
2022年6月27日 20:16
何にでも"致死量"というものがある例えば一生のうちで何度空から落ちる夢を見るかとか猫とビニール袋を見間違えるかとかホチキスで失敗する針の本数もシュレッダーにかける紙の枚数もさよならの時に手を振る回数もぜんぶ許容量が決まっていてそれを超えたらおしまい時々、人が突然死ぬのはそのせいだよ
2022年6月23日 13:40
真夏の教室に置いてきた透明な炭酸水転校生が食べているピーナッツバターサンドそういうものだけが音楽になることを許されて街中に鳴り響いている握りしめたペットボトルはすっかりぬるくなってしまったから私はこの夏の出来事を誰にも話さずに死ぬのでしょう
2022年6月17日 22:15
紫とオレンジで出来た夕方の空を見てもはや才能だよねと君が言う緑は合わないって分かってるから使わないんだよ私だったら合わなくても使う緑が好きだからだから才能がないんだと君が言う私だったらどの色がいいか分からなくて何も塗れなくて白紙の空になりそうだと思った私も才能ないよと言った
2022年6月14日 07:02
君はいつもより酒を飲んでめずらしく「幸福だ」なんて言う晴れがましい日に流れてくるのはあの頃一緒に口ずさんだ歌懐かしいねと笑ったけれどメロディーも歌詞も歌手の顔も1ミリも思い出せなかったそれが唯一の救いだった