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あなたは一生懸命にわたしのことがすき

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危険系男子が好みのシャーマン見習い天橋玲奈です!わたしの隣の住人、雲坂雅哉を救うため、命をかけた怨霊バトルが始まるんだぞ!プゥ。
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記事一覧

これが小説になるかは分からないけれど、とりあえずは書き始めるの巻

これが小説になるかは分からないけれど、とりあえずは書き始めるの巻

プロローグ

わたしが魔法使いであるかのように、わたしに錯覚させる彼。

わたしの願うもの、全てに『なる』。

彼はわたしで、わたしは彼?

クリスマスイヴ。

寝ているわたしにキスをした。

この間。

寝ているわたしの首筋に顔を埋めた。

それから?

もっともっといろんなこと。

わたしを愛するという証を、もっと。

わたしの願いは全て叶えると、彼は言う。

わたしのいまの願いは?

果たし

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わたしの隣の巻

わたしの隣の巻

こう見えて、日々、シャーマン修行にいそしんでいる。昨日は、高尾山の滝行。今日は、横浜中華街の母の講座。

横浜中華街の母こと、月浜可憐は、わたしのシャーマン師匠。御歳105歳(自己申告)。わたしの死んだばあちゃんだ。

わたしの家系は、代々、山梨のシャーマンだったらしい。これも、月浜可憐から聞いた話。遡れば、その血筋は、戦国時代まで繋がるらしい。

月浜可憐に初めて出会ったのは、3年前。友達とライ

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わたしはシャーマン? の巻

わたしはシャーマン? の巻

わたしの死んだはずの祖母が、占い師の月浜可憐として、いきなりわたしの目の前に現れたのが、いまから三年前。

月浜可憐は、横浜中華街の母として生きていた。

代々続く山梨系シャーマン家系に生まれたらしいわたし。

月浜可憐に再会したその日から、わたしのシャーマン修行が始まった。

「まずは、高尾山の役牛角禅師を訪ねなさい。そして、通信教育で、あたしの講座を受けて、月に一回はスクーリング」

月浜可憐

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隣の住人の巻

隣の住人の巻

「雲坂雅哉さん」

わたしの隣の住人。イケメン木彫りアーティスト。

「はぁ〜」

月浜可憐がくれた教科書を開きながらため息しか出ない。

「雅哉さんに、ほうとう、作ってあげたい」

TELTELTEL TELTELTEL

携帯が鳴った。

「あっ! お母ちゃん? ん? ああ、大丈夫よ、風邪ひいてないし、転んでないし。あ? ああ、大丈夫よ、自炊もちゃんとしてるし。そんなことより、あ?

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彼の部屋の巻

彼の部屋の巻

雲坂雅哉の部屋は暗かった。不気味だった。

「お線香?」

わたしは、鼻をクンクンした。

「かわいいねぇ。犬みたい!」ドギツイメークの雲坂雅哉は、クスッと笑った。

笑顔は、少女漫画に出てくる爽やかな男の子って感じなのに、趣味?が不気味。

よくよく目を凝らして見ると、部屋中に、何体もの木彫りの動物が...

「こわい?」

雲坂雅哉が顔を近づけた。

「やっぱりイケメン...」

雲坂雅哉は、

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夢の巻

夢の巻

目覚めると、そこは明るかった。

わたしは、硬いベッドで、黒いシーツに包まれていた。

シャッシャッシャッと音がする。

大きな背中。黒革のベストからむき出す、筋肉隆々の太い腕。

「雅哉さん?」

大きな背中が振り向いた。後光が差していた。まるでお釈迦様が、ヘビメタバンドのボーカルになったようなお顔。

「起きた?」

「ハッ?!」わたしは起き上がり、自分の身体を確認した。ズボンは履いている。も

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みんなみんな生きているんだの巻

みんなみんな生きているんだの巻

わたしの彼、雲坂雅哉。

イケメンビジュアル系バンドメンバー風な木彫りアーティスト。

彼は、わたしの部屋の隣の住人。

わたしは、毎日彼の部屋に遊びに行く。

彼は、昼間でも、紫色のカーテンを閉めきり、暗闇の中で、ローソクとお線香を焚きながら、木彫りの動物達をチェーンソーで、ギューンギューンと激しく彫っていく。その横で、わたしは、横浜中華街の母 月浜可憐の通信講座の勉強に余念がない。

彼の作業

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生クリームたっぷりのイチゴケーキの巻

生クリームたっぷりのイチゴケーキの巻

「明日はニコちゃんの命日なの」

わたしは、キッチンで生クリームを泡立ててる彼に言った。

わたしの彼、雲坂雅哉は、イケメンビジュアル系バンドメンバー風な木彫りアーティスト。

今日は、ロックな服装の上に、ヒラヒラの可愛いエプロンをして、生クリームたっぷりなイチゴのケーキを作ってるの。

「ニコちゃん?」「そう。わたしのところにいた、死んじゃった犬」

「そう...」彼は、少し元気のない声で言うと

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はじめての降霊術の巻

はじめての降霊術の巻

今日は、わたしの愛犬、ニコちゃんの命日。

朝から、お部屋には、ニコちゃんの好きだった、たんぽぽとスミレの花をお供えして、わたしは、横浜中華街の母 月浜可憐から貰った教科書を熟読していた。

「なになに? 霊を呼ぶには、その霊の好物をお供え? ああ! ニコちゃんの好物は、おせんべい! 美味しそうに食べてたな! あとは、アキレス腱付き肉巻き! あれ、いまは売ってないんだよな、ペットコーナーに」

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山梨ワインは最高の巻

山梨ワインは最高の巻

「あのね、それでね、おったまげたことにさ! ニコちゃんの結婚相手がジュンだったんだよ!!」

わたしは、彼の部屋のソファにもたれかかりながら、日本茶を入れる彼に話しかけていた。

「へぇー! 玲奈ちゃんが最初に飼った犬と次に飼った犬が結ばれるなんて、まるでメルヘン童話みたいだねぇ」

彼はそう言いながら、ソファの前にあるテーブルに、お茶を置いた。

「ありがとう」

お茶碗の絵柄は、たんぽぽ。

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今夜こそは!の巻

今夜こそは!の巻

わたしは、横浜中華街の母 月浜可憐の孫で、シャーマン見習いの天橋玲奈と申します。

そして、わたしが住むマンションの隣の住人、雲坂雅哉は、わたしの彼で、イケメンビジュアル系バンドメンバー風な木彫りアーティスト。

おかげさまで、わたしのシャーマン見習いも軌道に乗り、この間は、数年前に死んでしまった愛犬のニコちゃんとジュンくんの霊を呼ぶことが出来ました。これがわたしの初シャーマン!

わたしのシャー

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生きてるって感じする?の巻

生きてるって感じする?の巻

今日も、わたしの彼で、わたしの住むマンションの隣の住人、雲坂雅哉は、モーツァルトの『ラクリモサ』をラジカセで大音量で流し、やなせたかしの『手のひらを太陽に』を熱唱しながら、チェーンソーで木彫りをしている。

今日は、熊を彫っているそうだ。

「雅哉さん?」「なに?」

「すごぉ〜い! 雅哉さん、こんなやかましい中、歌まで歌いながら、わたしが呼んだのが聞こえたの?」「玲奈ちゃんの声は、どんな時でも、

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憎しみの眼の巻

憎しみの眼の巻

わたしの彼、雲坂雅哉は、自分が彫った木彫りの熊を、暗い目で見つめていたかと思うと、突然、チェーンソーを振りかざし、熊の右腕に突き刺した。

「きゃああああっ!!」

わたしは、悲鳴とともに、両手で顔を覆った。

しばらく、シーンとした。

「ごめん」

彼の声がした。

「ごめんね」

わたしは、顔を上げた。彼は、熊の右腕の傷を撫でていた。

そして、彼は、チェーンソーに目をやった。

チェーンソ

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なんのプゥ〜?の巻

なんのプゥ〜?の巻

「プゥ〜?!」

お尻から音を立てて出た風で、はっきり目覚めたわたしは、じっとりと背中と脇下に汗を感じた。

「え?!」という顔の彼の横顔。わたしを抱える彼は、「え?!」という顔をしたまま、わたしを見た。彼の顔は、まるで歌舞伎役者が雨に濡れたように、目の周りの黒い縁取りが、あっち行ったりこっち行ったりしていた。

「ご、ごめんなさい...」と、わたしは言いながら、すかしっぺでなかったことを、神に感

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