戸舘正史

公立文化施設、美術館、中間支援機関、大学などを渡り歩いてきたブンカ萬屋です(貧乏)。ア…

戸舘正史

公立文化施設、美術館、中間支援機関、大学などを渡り歩いてきたブンカ萬屋です(貧乏)。アートマネジメント、文化政策が専門ということになっています。自治体文化政策に関わったり大学で教えたりしてます。鑑賞メモでは主に現代美術、クラシック音楽、舞台芸術全般を扱います。

記事一覧

【鑑賞メモ】企画展『水俣病を伝える』(みんぱく創設50周年記念)

みんぱく創設50周年記念・企画展『水俣病を伝える』は小規模でシンプルながらも多くのひとに観てほしい展示だ。内容は必ずしも目新しいものではないかもしれない。もとも…

戸舘正史
2日前
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【鑑賞メモ】B・A・ツィマーマン『軍人たち』(2024年1月18日/演出カリスト・ビエイト、指揮フランソワ=グザヴィエ・ロト、ギュ…

ケルンのビエイト演出のツィマーマン『軍人たち』は事実上演奏会形式。ポディウム席をステージにして客席と地続きの物語にしたい意図はあったのかなかったのか。あったとし…

戸舘正史
10日前
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【鑑賞メモ】『終戦の日/WAR IS OVER』(藤井光)

OITA CULTURAL EXPO!24のなかで藤井光が『終戦の日/WAR IS OVER』という作品を発表している(6月16日まで)。アーツカウンシルみやざきのディレクターY氏を誘い、大分県は…

戸舘正史
2週間前
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松山の文化ホール問題のこと

※タイトル及び文中の「公共ホール」を「文化ホール」に変更しました。特別意味があるわけではないですが、アリーナ案に対してホール案に言及する場合、「文化ホール」の方…

戸舘正史
2週間前
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リアリズムとユートピアニズムのひと・小澤征爾

1997年、茨の道を歩んできた日本フィルハーモニー交響楽団が記念すべき第500回定期演奏会を迎えた。曲目はマーラーの千人の交響曲、指揮は小林研一郎。大学1年のわたしは…

戸舘正史
2週間前
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『体験格差』のこと

『体験格差』(今井悠介著、講談社現代新書)を読んだ。この20年くらいのあいだ、学校、ホール、美術館などで子どもとその保護者と接してきた身としては、常日頃感じてきた…

戸舘正史
2週間前
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シアターねこ閉館と5000人アリーナ構想のこと

悔やまれるシアターねこの閉館 愛媛県松山市の唯一の小劇場、シアターねこの本年8月末での閉館が公式に発表されました。個人的には閉館自体が残念であると同時に、予見し…

戸舘正史
1か月前
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松山ブンカ・ラボのことと地域アーツカウンシルのことに関するメモ

松山ブンカ・ラボのこと 松山での6年間の仕事が終わりました。コロナ禍の2年半を挟んだので体感としては3年くらいでしょうか。松山市が2018年3月に策定した松山市…

戸舘正史
1か月前
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【鑑賞メモ】企画展『水俣病を伝える』(みんぱく創設50周年記念)

【鑑賞メモ】企画展『水俣病を伝える』(みんぱく創設50周年記念)

みんぱく創設50周年記念・企画展『水俣病を伝える』は小規模でシンプルながらも多くのひとに観てほしい展示だ。内容は必ずしも目新しいものではないかもしれない。もともと水俣病に興味があったり、実際に水俣を訪れ、相思社(水俣病センター相思社)の方々の話を聞いたり、展示を見たりしたことのある方なら既知のことばかりかもしれない。しかし、この企画展の素敵なところは、リサーチをした企画者(平井京之介・国立民族学博

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【鑑賞メモ】B・A・ツィマーマン『軍人たち』(2024年1月18日/演出カリスト・ビエイト、指揮フランソワ=グザヴィエ・ロト、ギュルツェニッヒ管)

【鑑賞メモ】B・A・ツィマーマン『軍人たち』(2024年1月18日/演出カリスト・ビエイト、指揮フランソワ=グザヴィエ・ロト、ギュルツェニッヒ管)

ケルンのビエイト演出のツィマーマン『軍人たち』は事実上演奏会形式。ポディウム席をステージにして客席と地続きの物語にしたい意図はあったのかなかったのか。あったとしたらちょっと弱い。なぜならニュルンベルクのコンヴィチュニー演出の最終幕では観客をステージに上げて閉じ込めしまいクラスターを浴びせたわけで。しかしいずれにせよコンヴィチュニーもそうだったが、この作品演出の肝はいかにして観客に当事者性を突きつけ

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【鑑賞メモ】『終戦の日/WAR IS OVER』(藤井光)

【鑑賞メモ】『終戦の日/WAR IS OVER』(藤井光)

OITA CULTURAL EXPO!24のなかで藤井光が『終戦の日/WAR IS OVER』という作品を発表している(6月16日まで)。アーツカウンシルみやざきのディレクターY氏を誘い、大分県は佐伯市の鶴御崎まで車で足を運んだ。

展示会場である丹賀砲台園地は豊予要塞という「豊後水道の要所として部隊が駐在」した場所を一部保存している場所だ。昭和6年に日本軍が巨大なカノン砲の砲塔を設営し、昭和17

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松山の文化ホール問題のこと

松山の文化ホール問題のこと

※タイトル及び文中の「公共ホール」を「文化ホール」に変更しました。特別意味があるわけではないですが、アリーナ案に対してホール案に言及する場合、「文化ホール」の方が適切と考えたためです。

松山駅周辺地区車両基地跡地広域交流拠点施設の整備構想にともない、愛媛経済同友会がアリーナ建設案を提出をしたことを受けて、にわかに松山市内の文化関係者がざわめき立っている。先日、ある議員の方の話をきく機会があったが

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リアリズムとユートピアニズムのひと・小澤征爾

リアリズムとユートピアニズムのひと・小澤征爾

1997年、茨の道を歩んできた日本フィルハーモニー交響楽団が記念すべき第500回定期演奏会を迎えた。曲目はマーラーの千人の交響曲、指揮は小林研一郎。大学1年のわたしは市民で編成された日本フィルハーモニー協会合唱団の一員として第2コーラスで参加した。開演の直前、指揮者の真下の最前列席に誰かが駆け込んできた。小澤征爾だった。日本フィルと因縁(後述)のあるこの世界的指揮者がやって来たことに場内はみんな驚

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『体験格差』のこと

『体験格差』(今井悠介著、講談社現代新書)を読んだ。この20年くらいのあいだ、学校、ホール、美術館などで子どもとその保護者と接してきた身としては、常日頃感じてきたこと、そしておりおり問題提起として話したり書いたりしてきたことを裏付ける実態調査と当事者の言葉ばかりであった。はじめに、わたしがさんざんあちこちで書いたり話したりしてるエピソードをご紹介したい。

以前、ある政令市の公立美術館の学芸員から

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シアターねこ閉館と5000人アリーナ構想のこと

シアターねこ閉館と5000人アリーナ構想のこと

悔やまれるシアターねこの閉館

愛媛県松山市の唯一の小劇場、シアターねこの本年8月末での閉館が公式に発表されました。個人的には閉館自体が残念であると同時に、予見していた事態に対して、ちょっとだけ画策はしたものの、結局何もできなかったことを悔やんでいます。一昨年、松山ブンカ・ラボの文化サポートプログラムで、めぐりて・秦元樹さんを企画者として開催した『まつやま演劇人サミット』では、松山市で活動する劇団

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松山ブンカ・ラボのことと地域アーツカウンシルのことに関するメモ

松山ブンカ・ラボのことと地域アーツカウンシルのことに関するメモ

松山ブンカ・ラボのこと

松山での6年間の仕事が終わりました。コロナ禍の2年半を挟んだので体感としては3年くらいでしょうか。松山市が2018年3月に策定した松山市文化芸術振興計画(第一次)に基づき、松山市と愛媛大学による文化芸術振興のための中間支援事業として松山ブンカ・ラボは2018年6月に設立されました。しかし当初の予定とは異なり、第一次の振興計画期間5年を終えるタイミングの2023年3月に終了

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