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SS小説【幸せの幻覚】

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記事一覧

【SS小説】幸せの幻覚 Vol.3

【SS小説】幸せの幻覚 Vol.3

第三章-大城 学(おおしろ まなぶ)-

秋の夜は優しい。
夜風に乗って感じる秋らしい哀愁が
今の僕を励ましてくれる。そんな気がする。

妻からの突然の、お別れのLINE。

何度も電話しても何度もメッセージを送っても
妻に届くことはない。

急いで病院まで向かうが
看護師の方から今は面会できないと断られる。

この辛さは別れる辛さなんかじゃない。
なにも分からないのに全てが終わるかもしれない

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【SS小説】幸せの幻覚 Vol2

【SS小説】幸せの幻覚 Vol2

-第二章- 長谷川裕子(はせがわゆうこ)

私の夫、学さんは優しい。
余命宣告をされて入院となって2ヶ月

毎日仕事終わりに、私の好きな物を買って来てくれる。
昨日はカヌレ。今日はきっとシュークリームだろう。
想像しただけで愛おしく笑みが浮かぶ。
少しでも私との少ない時間を笑顔でいる為に
毎日毎日、笑顔を持ってきてくれる
そんな優しい人。

「ただいま!調子どう?」

病室のドアが空き
恐らくケー

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【SS小説】幸せの幻覚 Vol.1

【SS小説】幸せの幻覚 Vol.1

第一章-大城 学(おおしろ まなぶ)-

いい天気だ。夕方の19時を回っているが
まだほんのり空は青く、風に流されて来る金木犀の香りに心が穏やかになる。

会社の近くの小洒落たカフェで
妻の好きなカヌレを買い、喜ぶ姿を想像しながら
いい大人が少しスキップ混じりに帰り道を進む。

早く会いたい。早く喜ぶ姿が見たい。
こんな事を考えるのは新婚だからか?
いや、違う。きっとこの先もこの気持ちは変わらない

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