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夜中の
2024年5月1日 00:25
君のことぜんぜん好きじゃないって唇はねじれながら歌ってみせるコントロール不能、の、点滅屹立するチューリップたちは夜だって明るく躑躅の蕾が脳の痒い部分を撫でる挨拶はできるようになりましたが電話はまだ少し苦手です清掃チェック用紙に捺すシャチハタを君はふざけて飲み込んだコントロール不能コントロール不能ですコントロール不能です、が僕は全然まともじゃない道理を正常であるかのよ
2023年1月18日 19:25
抑えるのは右手、切るのは左手、やっとあなたの利き手がわかる窓枠の厚いセロファン蝋梅の花びらだった山羊座のマイメロ目張りされ完璧であるはずだった密室春の気配は満ちて犬になるための機構を内蔵し踏み外す予感を楽しんでいる地下街のトイレの寒い電灯が照らす伝線そのままで行く◆◆春がまた来るなんてやだね。芽吹く季節は肌が痛いし脳が光を感知しやすくてなにもかもが眩しくてよくな
2022年12月8日 19:22
大学生のころに恋人だった孔雀が死んだ老衰だった孔雀はよく死を想っていたふたりで死んでみようかと提案したこともあったが孔雀はお前はもっと永く生きろと言った付き合ってはいても孔雀はずっと上にいた上にいたけど舞い降りて私と目線を合わせてくれたから一緒にドライブにも夜のモスバーガーにも行けた七月、一緒に郊外の薔薇園に行った大輪の夏咲きの薔薇よりも次の季節を待つ枝と葉たちは高潔だった薔
2022年9月8日 11:45
住宅街は雨の染みを残して水分を含んだ空気の中を漂っていた僕だけが溺れるように生きている昔、君とかくれんぼしたマンションが立ち入り禁止になっていてもうすぐ解体されるらしい君はもうこの街には帰ってこないし僕のこともマンションのことも可愛がってた猫のことも拾った漫画のことも失踪した先生のことも廃墟にいた「あれ」のことも忘れてしまっただろう虫を採っては羽をちぎったその罪が僕の肉に打
2022年6月19日 14:51
今日は妙に饒舌だなと思ったら喋っているのは口ではなく傷だった真夜中に照らされる薔薇のようで私はますますあなたが好きになる鏡に映るわたしは平凡ないきものだったが並んだあなたには霊性があって思わず信仰してしまいそう傷を介してわたしたちは通信した五月につくった秘密たちはどれも美しく六月に交わした言葉たちはどれも淫靡だった指を絡めるよりも脱いだ服に触れる方が背徳感を得られると知る微
2022年5月19日 09:40
バス停に牛の群れがやってくる牛たちは真っ直ぐ前を見つめ歩いていく牛の群れは途切れずバスは来ない群れの中のひときわうつくしい一頭に君が乗っていたいつもより背筋を伸ばしてどこか異国の王のようだった君は私に気づくことなく牛に乗って去っていくもう会えないのだと思う一緒にお茶をすることもカレーを食べることもない音楽の話をすることもないのだろう私やこの街や他のあらゆることを捨て
2022年5月7日 23:35
公園の木はすべてがすべて別の形をしていて、なんだか恐ろしいような気がしたが、たぶんそれが正しい在り方であり、同じ服を着てみたり似たような言葉を使う僕らの方がいびつだと思えた。メタセコイアの大樹を見上げてぼんやりしていたら、いつの間にか隣に君が座っていた。君は何年か前に「自然は嫌いだ」と言っていた。「自然のものより人が作ったものの方がいい」それは君の魂の誠実さや脆さに関わることだったと、
2022年2月1日 04:23
眠っているきみがすこしわらった僕はお茶を飲みながら眠れない夜を過ごしているきみの呼吸きみの温度ざわざわとした昼間より感じ取れるものを拾ってみる眠れないんだと言ったら眠らなくてもいいよと言ってくれたねきみは昼の住人で僕の住まいは夜にあるきみも僕の寝顔をこんな風に見ていたことがあるだろうかねえ、どんな夢を見ているの吐息は静かな海になり僕はゆっくりと漕ぎ出
2022年1月20日 23:15
高い山だったしかし私が登れる高さだったのだと頂上でお茶を飲みながら気がついた山の上は清々しい匂いびゅうびゅうと強い風アルミホイルに包んできた焼き鮭のおにぎりを食べる遠くを見る山が見える次に登るべきこの山よりも高く険しい山体の奥が燃えてくる魂の在処を自覚する踏み出す向こうへ
2022年1月6日 15:31
こんな雪の日には星を煮込むに限る暖炉はあたたかく犬はまるくなり星はほろほろと煮崩れる今朝はなにかに疲弊し病んでいたような気がしたが透き通る星の香に魂が洗われていくようだったさて夕食の準備はできた窓に寄れば音のない白と銀の世界君はどこかで遭難ごっこでもしているだろうか大きなかたいパンを両手に雪まみれで星を食べにくるかもしれない夜まで少し眠ろう静かな、静かな、午後
2021年12月31日 14:07
いつの間にか眠っていたようで舞台はもう終わりに近づいていたオレンジを剥きましょうかと青年の長い指がナイフを握る金襴緞子に滴り落ちるものうつくしい調べはいつしかきいきいと悲鳴にも似てすべてを仕組んだ少年は笑う終わりはいつだって呆気ない淋しいと声にすればあなたは傍にいるふりくらいしてくれる双頭の猫が甘えてくる腹を割かれた牛が預言する虎たちはわたしを喰らおうと足音を消すさあさあ
2021年12月28日 01:14
砂に長い木の棒で輪を描く中に星を描きこんで記号をいくつかそして呪文を唱えるきみが生まれる生まれたばかりのきみはごじゃごじゃと意味の通らない言葉を吐くわたしのエゴで生まれてしまったきみ生贄の山羊供物の葡萄、無花果、酒きみが生まれたからわたしはもう孤独ではない孤独になる権利を棄てたきみをおぶって山を降りる怪物にどよめく民衆いつか慣れるわたしもきみも慣れることだけが止
2021年12月21日 07:02
はやく起きてしまったのでミルクをあたためて紅茶をいれるおまえはまだ眠っている空は薄い朱と灰がかった緑眠たそうな星が天頂にいる昨日は死にたいような気持ちに満たされていたが今はそれもうやむやになっているテレビをつける誰かの家の知らない犬の動画今日もなんとか乗り越えようあたたかい格好をして甘いお菓子を買いにいこうおはようおはようなにかに祈るような気持ちで
2021年12月2日 06:50
夜のオルガンが鳴っている蕎麦をすする青年Sと薄桃色の薔薇を握り潰す青年H猥雑な喫茶のバックヤード、深夜ふたりはよく似ていたが似かよった部分がとても深かったので誰も共通項を当てられなかった青年Sは鬼の話をする青年Hは大袈裟にわらうおそらくこんな夜はもう来ないだろうと予感するSたぶんまたこうやってわらうだろうと予言するHプレイリストが明るい調子の暗い歌を流す甘った