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◆詩◆孔雀薔薇園

大学生のころに恋人だった孔雀が死んだ
老衰だった
孔雀はよく死を想っていた
ふたりで死んでみようかと提案したこともあったが
孔雀はお前はもっと永く生きろと言った
付き合ってはいても孔雀はずっと上にいた
上にいたけど舞い降りて私と目線を合わせてくれたから
一緒にドライブにも夜のモスバーガーにも行けた
七月、一緒に郊外の薔薇園に行った
大輪の夏咲きの薔薇よりも
次の季節を待つ枝と葉たちは高潔だった
薔薇は一年中どこかで咲いている
だけど枯れてしまった薔薇の
萎れて落ちた花びらが片付けられない
孔雀は何か言うより私の話を聞いていることが多くて
私はくだらないことをたくさんたくさん話した
もっと孔雀の話を聞けばよかった
美しい目玉模様の羽を思い出す
ひかる胸の羽毛を思い出す
私は孔雀のことを思い出し続けるのだろう
そうして老いてやがて死んでしまう

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