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◆短歌◆詩◆春がまた来るなんてやだね



抑えるのは右手、切るのは左手、やっとあなたの利き手がわかる

窓枠の厚いセロファン蝋梅の花びらだった山羊座のマイメロ

目張りされ完璧であるはずだった密室春の気配は満ちて

犬になるための機構を内蔵し踏み外す予感を楽しんでいる

地下街のトイレの寒い電灯が照らす伝線そのままで行く


春がまた来るなんてやだね。
芽吹く季節は肌が痛いし
脳が光を感知しやすくて
なにもかもが眩しくて
よくないんだ。よくない。
偶然きみに会えてしまいそうな
予感で足がはやくなる
気づくと淵に立っている
そんな季節が怖いから
まだ冬眠してるんだと言って
すべてを鈍らせ手を汚す
春なんて来なければいい。
痛みにも似た歓びが降る。もうすぐ。

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