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夕暮月晶
2021年2月28日 16:21
子守唄月の精霊が子守唄を歌う柔らかい光の中に、美しいメロディを織り込んで優しい調べが響く静かな中に暖かな悲しみも喜びもなんだって包み込む聞いてみてよ、子守唄美しい子守唄子供はこてんと眠ってしまう特別な月の子守唄こどくあなたはつかえないひとおつきさまはみているわたしはつかえないひとみなもにうつるつきのよるぽたぽたゆれる揺れる水面がひとのこどくをうつしだすすす
水菜月
2021年2月24日 15:17
雪を載せた椿を見た途端君を思い出した冬になるとすぐに真っ赤になる頬好んでつけていた赤い髪飾りはしゃいで雪を掬った赤いミトン君と繋げるモチーフが色々あるけれど何よりもこの雪に似合う可憐さがひときわ僕に訴えかけてきたようであの街に残してきた君を思い出して勝手に浸っている僕を許してほしい
小槻みしろ
2021年2月14日 00:09
その目は不思議に濡れて光っている。誰かに呼ばれたような気がして振り返ったら誰もいない。それでも確かに呼ばれたという感覚が残っている時があります。呼んだのは誰だったのか、走り去っていってしまったのか、隠れているのか、それとも私の記憶なのか。わかっているのは、振り返るといなくなるということだけです。誰もいない場所をしばらく眺めて、また前に向き直るときの心もとなさは、あるくうちに薄らいで
静 霧一/小説
2021年2月10日 23:17
「―――痛っ!」 私は挫いた足首に顔を歪ませる。 左足を使って恐る恐る床に座ると、私はテーピングで固定された細い足首を擦った。 骨の奥を走る神経が、じんじんと鈍痛を発し、無言で私の心を殴りつける。「危ないから、今日は隅で休んでいなさい」 先生が私の背中をさすりながら優しく呼びかける。 私はその優しい声に、自分の声を殺して涙を流した。 バレエ教室の隅、鏡と壁の境界線に私は座り込む。
金とき
2021年2月12日 18:35
青と黄色を混ぜると緑になるだなんて誰が思いついたんだろうそのひとはきっと気張った日々に疲れて癒やしを求めていたんだろう僕が見ている世界の色と君が見ている世界の色は同じようで きっと違って名前を与えた 不確かな言葉で世界は色にあふれていて愛するひとは光を放ってつまらない日々が色付いて緑の中で微笑んだ優しいひとよすべての色を混ぜると黒になるだなんて誰が思いついたんだろう
2021年2月7日 23:06
(序) 冷たい水の中に溺れてゆく。 不思議と、苦しいとは感じなかった。 むしろ「あぁ、私は溺れていくんだな」と、思えるほどであった。 心許なく光っていた街頭の灯りがだんだんと薄くなっていく。 私は静かに目を瞑り、「これでいいんだ」と細かな水泡となっていく命を吐き切った。(一) 水天一碧。 空と海の境界線が溶けた世界に私は棲んでいた。 たった一人、教室の隅の席で、私は佇んで