月の季節3


子守唄

月の精霊が子守唄を歌う
柔らかい光の中に、美しいメロディを織り込んで
優しい調べが響く
静かな中に暖かな
悲しみも喜びもなんだって包み込む
聞いてみてよ、子守唄
美しい子守唄
子供はこてんと眠ってしまう
特別な月の子守唄


こどく

あなたはつかえないひと
おつきさまはみている
わたしはつかえないひと
みなもにうつるつきのよる
ぽたぽたゆれる揺れる水面が
ひとのこどくをうつしだす


すすき

すすきから垂れた露が、足を濡らしている
鈴の音が草陰から響いてくる
りーりー、ちりちり
「お前は突っ立ってどうするんだ?前にも後ろにも歩けないのか」
りーりー、ちりりり
鈴の音がそう言っている
柔らかいすすきの穂先から夜露が落ちた


いくつもの夢を見る
漂う霧の中
流れてくるいくつもの人生を、ぼんやり眺めて歩いていく
深い霧の中
ときには共感をして、ときには嫌悪して、足元は心許なく
白い霧の中
解ければ消える、現し世の悲喜こもごも
うとうとといくつもの夢を見る


星空

雨がしとしとと降る道は、静まり返っておりました
洒落たレンガ造りの歩道に、ガス灯の名残の電灯が、暖かくあたりを照らしています。
もとはきっと多くの人が行き交う商店街だったのでしょう。今ではすっかり人の姿はありません。
ただひっそりと住宅が遠くに立ち並んでいるだけです。晴れた昼間なら、子どもたちの遊ぶ姿が見えるかもしれません。
雨は地面を濡らして、地面は明かりが反射してキラキラと光っています。
夜空の星のように。

2019.9月

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