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転生狼と人型皇女#7
ハイネス国とほむふわん国の国境に近づくと、あたり一面が荒れ地のような干ばつ地帯が広がっていた。
走り続けて15時間が経過しようとしていたところで、皇女はぼやく。
「や~、さすがに食事をとりたいわ」
「そんなこと言われても、この辺なんにもないし、追われてるんでどこにもいけませんよ」
「ていうか!私だって赤子ではないのですから、歩けます!」
「え~?でもいきなり追手が来たら逃げ切れます?俺置いてっ
転生狼と人型皇女#6
「ウルフ・フルハーネス様、お話したことがありましたので、本日はお呼びいたしました」
幽閉から2週間が経とうとしたとき、フジ・ミナミが俺を呼び出した。
何故か今回は椅子に座れていて、懇切丁寧な感じに妙な緊張感が立ち込める。
もしや、神の声を聞いたか?
しかしながらやたらと気まずい空気が流れる。
なんでこういう時に話をするのがうまくないんだ俺は!
こういう時にこそ、小粋なジョークの一つや二つ言って
転生狼と人型皇女#5
雨が上がっていた。
地面には大きな水たまりがいくつかできていて、たくさん降ったんだなあと伺える。
それと同時に、夕暮れが雲の隙間からこちらを赤く照らしていた。
あの国王陛下、話し長すぎるだろ…。
話をまとめると、こうだ。
この世界の伝説、1000年に一度の両国王妃の同時単独懐妊、同時出産。
それを片割れ双子と呼び、生まれてきた子供は神の子供として祀られる。
成人の儀の際に双子が集結する時、神
転生狼と人型皇女#4
王妃の単独懐妊から早12年。
単独懐妊が噂になってから、子供が生まれるのを国民は今か今かと待ち望んでいた。
それが意味するのは、平和であり、平穏であり、そして不況のおわり、神の導きだ。
片割れ双子は神の声を聞き、世界に届ける。
それが生涯きっての役目なのだ。
しかし、出産後、国は生まれてきた片割れ双子を世に公開することはなかった。
それは紛れもなく、生まれてきた俺が獣人型の忌子だったからだ。
転生狼と人型皇女#3
「あんたね、最近モサリドさんのとこに来た少年ってのは」
「あ、はい…そう…です」
「あたしは嬉しいよ、あの家族はまた幸せをつかみ始めてるってね」
市場にお使いに行った時、野菜を売っているおばちゃんがモサリドさんとミサミルちゃんのことを教えてくれた。
ミサミルちゃんは結婚してすぐ、子供を産んだが、産んだ子供が突然変異で獣人型の個体だった。
当時の旦那は世間体を考えた結果、産んだ翌日にその子供を野
転生狼と人型皇女#2
森を抜けると、街が見えた。
夜だったから暗く、酒場だけに灯りがともっている。
走っても走っても疲れないこの身体にだんだん愛着がわいてきた。
そして何より、知らない世界をどこまでもどこまでも走っていけるこの快感!
ライフイズビューティホ~!
なんて清々しいんだ!
だが、ここからが問題だ。
宿をどうするか。
シンプルにどこで寝るかだ。
こんな金も持っていない子供を宿に泊めてくれることなどないだろ
転生狼と人型皇女#1
生まれたときから不思議に思っていたことがいくつかあった。
まず、俺には耳が四つある。
人間の普通の位置に耳が二つあり、猫耳のようにピンと立った耳が二つある。
それに毎日顔を合わせるおばちゃんは俺をドワーフちゃんと呼ぶ。
そして、ウルフ・フルハーネスという名だが、違和感があった。
俺はついに気づいてしまう。
転生しているということに…!
気が付いたのは6歳になるころだった。
ボールで一人遊び