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ぼくが見たサンクトペテルブルク 第0章 これはロケだ
旅行に行くことを「取材」と称している。
バイトを「仕事」って言っちゃう大学生より恥ずかしい。
でも、旅行に行ったら必ず紀行文を書く。ブログに投稿したり、旅行先の地方紙に投書したりなんかする。ここまで言うとちょっといい趣味に聞こえる。
書くために旅行している。
ぼくの趣味は旅ジャーナリズムです。かっこよ。
2017年、ちょっと背伸びして「ロンドン人ブラックジョークで笑かしたるSP」に挑戦した。
ぼくが見たサンクトペテルブルク 第1章 彼女の手荒い見送り
彼女ができたらそう1人で旅行などはできまいと付き合う前日に予約したロシア旅行は、出発前日に彼女にフラれるという手荒い見送りを受け、初日を迎えた。
案の定、後悔とヤケ酒がしっかりと残っている。
今朝起きて、旅行への脚取りが重くなってキャンセル、というオチを心配したが、杞憂だった。むしろ体が疼き、妙に歩き出したくなった。
ありもしない食欲を捏造し、家系ラーメンを消化管に叩き込んだ。後悔はこうして
ぼくが見たサンクトペテルブルク 第4章 おそロシアの洗礼
おそロシアの洗礼はすぐに始まった。
空港からホテルへの送迎人が来ない。
送迎人はみな、芸術の街らしい華美なウェルカムボードを無愛想に持っているが、ぼくの名前は見当たらない。
明らかに戸惑うぼくに手を差し伸べるのは、巨躯を揺らして歩み寄るタクシードライバーだけ。
送迎の予約票を確認する。
Ms.Alexというenglish speakingの方らしい。名前から推察される欧米系の女性はやはりそこに
ぼくが見たサンクトペテルブルク 第5章 『罪と罰』を歩く
朝4時、オレンジをくすませたような、見たことのない色の空に驚き、カメラと三脚を持って部屋を飛び出した。それはロシアの朝焼けだと思った。
答えはネフスキー通りを一色に染める白熱灯だった。やられた。
せっかく起きたものだから、まだ暗い朝方の街を歩き、ネヴァ川沿いまで行ってみよう。
誰もいないネフスキー大通りを通り、ネヴァ川にたどり着いた。
ネヴァ川のほとりには、凍った大河に沿ってライトアップされた歴
ぼくが見たサンクトペテルブルク 第7章 無愛想?本当にそう?
きっと無愛想も仕事のうちなのだろう。寒さで顔は凍りつき、態度も冷たくなるのか。お釣りやチケットはだいたいノールックで投げて渡してくる。本当は優しいと思うんだけどな、ロシア人。
市民とは違い、ペテルブルクの街はさまざまな顔をもつ。
古都としての顔。
革命の発信地としての顔。
数々の戦争での激戦地の顔。
そして芸術の街としての顔。
玉虫色の表情で、訪れる人々を次々と虜にする魔都、それがサンクトペテル
ぼくが見たサンクトペテルブルク 第8章 凍った川を渡る
サンクトペテルブルクの歴史はパブロフスク要塞から始まった。今日はここから。
サンクトペテルブルクはピョートル1世がヨーロッパ進出を夢見て泥沼の上に作った人工都市。その開拓は困難を極めた。
繰り返す洪水とフィンランド軍の脅威、数多の犠牲の上にこの街は成立している。
また、パブロフスク"要塞"とはいうものの、監獄としての顔を持った時代があり、ドストエフスキーも、思想犯としてここに囚われた。観光客とし
ぼくが見たサンクトペテルブルク 第9章 『グッバイ、レニングラード』
魔法が解けるまでわずか2時間。
ホテルにMs.Alexが迎えに来るのが正午。最後の目的地であり、この旅で必ず行こうと思っていた「レニングラード包囲と防衛博物館」の開館が10時。
しかし博物館入口と書かれたドアはまだ9時30分なのに開け放されていて、中を覗くと剥き出しのコンクリートと諸々の建材が無造作に置かれていた。工事中。次。
「レニングラード包囲戦」については少しだけ。
サンクトペテルブルクは