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社会人芸大生が勉強の合間に買って読んだアート関連書籍・2022.10~12月編

皆さま、本、読んでますか?
ついに3年目をむかえたこのシリーズ。2022年は四半期ごとに更新してきました。

今年もやはり、相変わらず活字にまみれていたわたしが、勉強と趣味もかねて手に取ったアート関連本(それ以外もいろいろ)を紹介&勝手におすすめします。

年末年始のお供になりそうな、なんか面白そう!と思える本と出会うきっかけになったら嬉しいです。

ちなみに2021年編はこちら。

2020年編はこちらです。今から読んでも面白い本ばかりかと。

マガジンもありますよ。


一箱古本市で出会った二冊

2022年秋の個人的ニュースといえば!一箱古本市の実行委員をさせていただいたことでした。詳しくはこちらでぜひ。

会場の様子をTwitterでレポートしながら回っていたとき、これは!!!と出会って、思わずお買い物したのがこちらです。

まず左、『乱読のセレンディピティ』は、タイトルがとても気になって、思わず手に取った一冊。

外山さんと言えば、帯にもある通り、『思考の整理学』が有名ですが、こっちのほうがずっと読みたい!と思えました。

店主だった書肆ねっこ堂さん、並べてらっしゃった書籍一冊一冊、とってもきれいにグラシン紙でカバーされていて、大切な一冊を譲っていただいたんだなぁと嬉しくなりました。

店主のねっこ堂さん、ありがとう!!!

そして右、東山魁夷さんの『北欧紀行 古き町にて』
まさかこの本が手にできるとは!本当に嬉しかったです。

画家 東山魁夷さんの作品を、わたしが初めてちゃんと観たのは、2018年秋に国立新美術館で行われた回顧展で でした。

魁夷さんの人生を振り返る企画展を通して、どんな方だったのかをしっかり知ることができ、作品もとても好きになった、思い出の展覧会の一つです。

『道』が表紙の図録もお気に入りで、ときどき読み返していましたが、当時 展示数があまり多くなかった、ヨーロッパを旅して描いた作品群をもっと観たいなぁと思っていました。

特にここ。1962年に北欧を旅していた頃の作品がとても気になっていて。
その後、京都を描いたシリーズなどには、北欧の風景に通ずるような優しい印象を受けていたので、余計に観てみたかったのです。

1964年に発売された『北欧紀行 古き町にて』は、北欧の旅を2年かけてまとめたリトグラフィ装画本。限定100部、当時の価格で15万円でした。

それを2010年に講談社が復刻したんですが、現在は絶版・入手困難本に。

だから、一箱古本市で出会えて本当に嬉しかったです。
譲ってくださった一夜文庫さん、ありがとうございました!!!

すすすすてき・・・ 大事に読み継ぎます


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博物ふぇすてぃばる で 念願のリトルプレスをまとめ買い

  • 『ミュージアムグッズパスポート』1~5 大澤夏美

ミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美さんが、商業出版をされる前、ご自身で企画編集されていたリトルプレス(ZINE)が『ミュージアムグッズパスポート』です。

1冊¥500。フルカラー。写真にも文章にも、夏美さんのミュージアムグッズ愛があふれています。デザイン、素敵すぎる!!!

北海道在住の夏美さんとは、SNSで交流させていただいたり、ClubHouseでおしゃべりさせていただいてました。
もちろん商業出版されてる書籍は持ってましたが、この『ミュージアムグッズパスポート』は、いつかお目にかかったときに、直接買いたい、と思っていて。

で、今年10月。都内で開催された「博物ふぇす」で、出展されていた夏美さんにお目にかかれて、超絶嬉しかったです。そして、念願の5冊まとめ買いと相成りました✨

とってもお薦めなので、ぜひオンラインからポチってください!


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作ってみたい!もっと読みたい!リトルプレスを集めた一冊

デザインに関わる多くの方がきっとお世話になっているであろう、PIE Internationalさんが手掛けた、47都道府県のリトルプレス(ZINE)を集めた一冊です。

2016年に出たものでして、10月末に東京都現代美術館で開催されたアートブックのイベント TOKYO ART BOOK FAIR に出店されてた、バリューブックスさんのブックバスで買いました。

出版のきっかけ、テーマや発行部数、どうやって印刷してるか、どこでいくらで販売しているか、など、リトルプレスやZINEをつくる人が一番知りたい、でもなかなか聞けない話を、ねほりはほりリサーチしてくれてます。

たっぷり大充実!!!

一箱古本市やZINEづくりのワークショップに実行委員として携わってみたり、コミケや文学フリマに出かけてみて、自分でも近いうちに作りたいな!!!と、かなり前向きにいろいろ考える参考にしまくっております。

有名な『灯台どうだい』も!
こちらも知ってる!『月刊ビル』!


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東京の近代建築の歴史を 関東大震災から紐解く

リトルプレス本と同じタイミングで買ったのがこちら。
1923年9月1日に起きた関東大震災の後、東京の街は「帝都復興事業」という街づくりの計画にそって、今の東京に近しい姿になっていきました。

東京の近代建築にまつわる本は、建築史の専門書からデザインにフォーカスしたものまで、いろんな切り口で出ています。
その中で、そもそもの歴史とデザインを、丁寧かつ親しみやすく知ることができるこの一冊は、また違った視点で近代建築の歴史をたどることができ、何度も読み返したいと思った一冊でした。

で、合わせて、もともと持ってた『シブいビル』も読み返しました。

今年10月、丸の内にあった前川國男さん設計の東京海上ビルが、無残にも解体されてしまいました。
前川國男さんは、ル・コルビジェの弟子で、東京文化会館や東京都美術館を手掛けた方ですが、高層ビルはこの東京海上ビルが唯一のお仕事でした。

完成から50年にも満たない名建築を、あっさり壊してしまうなんて。
本当に悲しい。壊す必要、あったのでしょうか。

他にも、丸の内エリアにある国際ビルと帝劇ビル、有楽町ビルに新有楽町ビルも建て替えが決まってますし、ニュー新橋ビルと新橋駅前ビルも再開発間近と言われています・・・

ほぼ『シブいビル』に載ってるんですが、本当に、なんで壊すんだか。
壁のタイルとか、階段とか、ガラスとか照明とか、今となっては作れない超絶素敵なデザインなのにさ。もったいないよ!!!

太平洋戦争を乗り越えた古いビルや昭和の名建築、この先もできるだけ残していってほしいです。

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白洲正子さん 和田誠さんの本

こちらも、リトルプレス本と同じ、TOKYO ART BOOK FAIRに出店していたブックバスで、古本を買いました。

まず左。白洲正子さんが語る木のこといろいろ、だなんて気になりすぎる。かなり珍しいテーマだと思いましたが、なるほどさすがの語り口でした。

そして右。和田誠さんの仕事、といえば、星新一さんや村上春樹さんなど、とにかく書籍の装丁を思い出すわたしは、一目見て、読みたい!と。

数々の書影を一緒に眺めながら、ニコニコと和田さんがお話ししているのを聴いているような気持ちになる、本好きには楽しすぎる内容でした。

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作り手のことが知りたくて読んだ インタビュー集

インタビュー集や対談集は、定期的に読み続けているテーマですが、美術作家やデザインを仕事にされている方のものは、特にできる限り読むようにしています。

まず左。わたしの憧れの編集者のお一人、林央子さんの最新刊。

林さんはもともと、資生堂の『花椿』編集部に所属されていて(1988~2001)、後にフリーランスに。
ファッション誌などで執筆活動を続け、2011年に刊行した『拡張するファッション』は展覧会になりました。
またご自身でも雑誌『here and there』を作り続けてらっしゃいます。

アーティストたちともっと対話したい、という想いから、10年をかけて取材されてまとめたのが。この『つくる理由』です。

わたしは中学や高校生の頃、ファッションの世界をアートだ!と思って大好きになっていて、ジャンルレスで好きなものを愛でてきたので、林さんのような活動、つくり手たちの声をジャンルレスに聴き続け、伝えてくれることが、とてもありがたいです。噛み締めるように読みながら、いろいろと考えました。この先も、何度も読みたい大切な一冊です。

そして右。美術の専門出版社・芸術新聞社のWebメディア「アートアクセス」で連載されていたインタビュー集がまとまった本です。
どんな子ども時代を過ごし、いかにして美術作家となっていったのか。
Webでもまとめて読めますが、付箋を貼りながらじっくり読みたくて、紙の本を買いました。

こちらに限らず、さまざまな分野の第一線で活躍する方が、何者でもなかった頃の話を読むの、好きなんですよね。
特に美術やデザイン業界のものは手に取るようにしています。長らく読み返している『無名の頃』って本もお薦めです。

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本当に限られた人しかできない 切手デザイナーというお仕事

もうずいぶん前にテレビで、切手デザイナーのお仕事を紹介するドキュメンタリーのような番組を観たことがあります。

紙幣や貨幣のデザインをするお仕事同様、滅多に就けない職業である、と知っていたので、書店で見かけて思わず手に取りました。

あの切手はこの人が手がけたのか!と楽しくて、あっという間に読んでしまいました。
郵趣家ゆうしゅか( 切手収集が趣味の方)はすでにお読みだと思いますが、そうじゃない方もきっと読んで楽しい、そして手紙を書きたくなる一冊です。

ちなみに切手は、手紙を送る季節や相手に合わせて、その時々でデザインにこだわって選びたい派です。
沼に入りこんでしまいそうなので、自制しているところがありますが・・・あの限られたサイズの中で表現される世界っていうのが、多くの人を魅了してやまないんでしょうね。
手掛けるデザイナーの方々もまた、魅了されてしまう方ばかりでした。

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1960年の世界デザイン会議で配布された、美しすぎる会議資料

  • 『び』 財団法人世界デザイン会議日本運営会事務局

今年10月、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されていた企画展「細谷 巖ほそや いわお 突き抜ける気配 Hosoya Gan-Beyond G」で、復刻販売された一冊です。


展覧会の会場で、当時の原本が全見開き展示されており、あまりのカッコよさに、わたしは倒れそうになりました・・・

「細谷 巖 突き抜ける気配 Hosoya Gan-Beyond G」展示風景

中身を少しだけ。
冒頭がこちら

え、これ会議資料ですか
巻末のスタッフクレジット
1960年当時のスタッフクレジット カッコいい


細谷 巌さんは、戦後日本のグラフィックデザインを牽引されてきた方。
ちなみに、御年87歳です。

終戦から8年後の1953年4月、細谷は神奈川工業高校工芸図案科を卒業して、クリエイティブエージェンシーの株式会社ライトパブリシティに入社し、2022年現在、同社の代表取締役会長を務めています。
振り返れば、なんと69年間もの長い年月、細谷は同じ会社で、しかも第一線でアートディレクター、グラフィックデザイナーとして、また東京アートディレクターズクラブの会長として、日本の広告デザイン界を牽引してきました。

https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000789

細谷さんのグラフィックは、10代から20代にかけ、広告やグラフィックデザインの雑誌で観てきたので、展示は圧巻でした。観に行けて良かったです。

このとき、ggg2Fのライブラリーコーナーでたまたま手に取って、こんな企画展をやってたんだ!と驚いたのが、「20世紀琳派 田中一光」展の図録

俵屋宗達が関わったとされる「平家納経」の鹿がモチーフ

gggの隣にあるギャラリー&ショップ、MMM メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド に1冊だけ在庫があったので、迷わず買ってきました。

2015年に京都dddで行われた企画展だったようです。いいなぁ。

ライゾマティクスは何を展示したのでしょう・・・

田中一光さんは、細谷さんの5歳上のグラフィックデザイナーで、同じ会社に所属していた時代も。
奈良のお生まれで、琳派を彷彿させる日本古来のモダンデザインを取り入れたグラフィックは、世界的にも高く評価されていました。

あのロフトのロゴも、gggのロゴも、無印のロゴタイプも、田中一光さんが手掛けてますし、ギンザ・グラフィック・ギャラリーや、乃木坂にある建築のギャラリー TOTOギャラリー・の企画・運営にも携わっていらっしゃいました。

今見ても全く古びない、洗練されたデザインばかり。大好きです。

裏表紙がこちら ヒロシマ・アピールズの作品より

2012年に21_21で行われた企画展も、はっきりと記憶に残っています。

残念ながら、2002年に急逝されてしまった一光さん。
今も展覧会図録や、自伝本などを繰り返し読んでいます。

で、思い出したのが、こちらの展覧会図録。
『日本の美 美術×デザイン』は、富山県美術館で行われた企画展です。

判型が 偶然にも みんな正方形でした

現地へ行くつもりが、新幹線が台風による浸水で不通・運休して叶わず。
後日、トーハクのミュージアムショップで図録を発見して嬉しかったです。


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とても楽しみにしていた『神坂雪佳』展の図録

細見美術館のコレクションを中心に、神坂雪佳さんの作品群をたっぷり観ることができた企画展の図録です。
琳派の作家ですし、すでに多くの書籍が出ているので、こちらでなくても良かったと言えばそれまでですが(笑)

企画展を観たことも含め、まるっと記憶しておきたかったのと、このわんこが好きなのと、紙や判型などが好みだったので、買いました!
さっそくグラシン紙でカバーして、デスクに飾っています。素敵。
田中一光さんしかり、わたしは琳派が好きなんだなと再認識しました。


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近況をまとめにかえて

おかげさまで、充実の2022年でした。ありがとうございました。

全く持って仕事がおさまる気配はないのですが、好きなアートやデザインのことに関わっていられる時間は、仕事のようで仕事ではなく楽しいので、全く持って問題なし。
2023年も引き続き、良き本とたくさん出会っていけるよう、本屋さんパトロールを続けていきます。

今回は、見事に6000字を超えてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました✨
その他、本にまつわる記事を他にもいろいろと書いてます。ぜひ

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