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2022年終了が惜しい LIXIL出版の書籍たち

本が売れなくなった。そう言われて久しいですね。
でも、紙の本が好きで、本屋さんパトロールが好きで、積ん読も肯定派なわたし個人の感覚では、この10年くらいでしょうか、ますますニッチでピンポイントだったり、所有することが嬉しくなるような装幀だったり、見た目も中身も唯一無二な本に出会うことが増えてきたなぁと思っています。

そんな訳で今回は、まだ出会ってないだけで、絶対に好きな方がきっといらっしゃるはず。そんな方々のきっかけになれば、と思って書きます。
わたしが本当に偶然出会って、ものすごく魅了され、感動した、LIXIL出版の本のことです。


え?LIXILってあのリクシル?

はい、そのLIXILです。本木雅弘さんのCMでおなじみのリクシルです。
キッチンとかお風呂とか、お手洗いとかリビングとかとか、建築材料・住宅設備機器業界最大手の企業・リクシルさんです。

LIXIL出版はその名の通り、LIXILグループ傘下の出版社です。

あるんですよ、出版部門が。
建築のお仕事をされてたり建築にお詳しいという方々なら、ご存知かと思います。でも、たぶん、ほとんどの方がご存知ないでしょう。うんうん。

LIXIL出版は、私たちをとりまく諸問題に新しいヴィジョンを提示するため、都市、建築、デザイン、生活文化をテーマにした書籍を刊行しています。

(公式サイトより)


2020夏 紀伊國屋書店 新宿本店・建築コーナーで出会う


わたしがLIXIL出版を知ったのは、2020年初夏に大阪で行われるはずだった展覧会「奇跡の住宅──旧渡辺甚吉邸と室内装飾」展がきっかけでした。


展覧会のことは、大学の先生に教えてもらったか新聞で読んで知って、近代建築好きのわたしにはもうドストライク。
できれば大阪に行きたいけども、きっと都内のLIXILギャラリーにも巡回するはず、と楽しみにしていました。

が、2020年初夏といえば・・・
まだまだ世の中の美術館・博物館や大規模な展示イベント等は、中止中止の嵐だった頃。残念ながらこちらも開催前に中止が決まり、幻の展覧会となってしまったのでした。

落ち込んでいたところで、図録が出ている!と気づきます。
これは買わねば、と思っていた矢先、たまたま立ち寄った大型書店。
建築コーナーに走ると、見事に発見しました。小躍りしました。

と同時に、その棚にずらっと並んだ既刊書も、面白そうなテーマのものがいくつも出ていると気づきました。

へー、LIXIL出版っていうのがあるんだ。
残念ながらこの日はあまり時間がなく、でも買ったほうがいい気がする、と思って手に取ったのがこちら。
前々から、やたらと気になって追いかけていた泰山タイルも登場する、“近代建築とモザイクタイル”がテーマの本でした。

ちなみにこの表紙のタイル、トーハク本館のとある展示室の一角なんですよ。素敵なので、ぜひ現地で実物を探してみてください✨


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京橋のギャラリーと乃木坂のギャラリー


いつか行こういつか行こうと思っていたら、この1~2年のうちになくなってしまったもの。きっとどなたにもあったかと思います。

わたしにとってそのひとつが、京橋のLIXILギャラリーでした。

度々、前を通るものの、なんとなくタイミングが合わなくて、結局入らずじまい。次の展覧会を楽しみに、なーんて思っていたら、静かに閉廊してしまっていました。
やむを得ないとはいえ、とても淋しかったです・・・。
これまで以上に、行きたいところには行けるときに行こう、と強く思ったのは言うまでもありません。

そういえば、と思い出しました。
乃木坂にもLIXILギャラリーに似てるスペースがあるんだよなぁ、と。

LIXILの競合・TOTOが運営する建築専門のギャラリー TOTOギャラリー・間(ま)です。

LIXILギャラリーと同様、それまでも度々、展示のフライヤーを美術館などで手にしていて、気になる展示テーマも多かったので、いつか、いつか必ず!と思っていました。


で、2021年9月のこと。タイミング良くすぐ近くで所用があったので、せっかくだし見てみよう!とお邪魔してきました。

この日はちょうど、アンサンブル・スタジオ展 Architecture of The Earthの会期中。

わたしはこの展示をみて初めて、アンサンブル・スタジオのことを知りましたが、本当に行って良かったです。

会場で流れていた映像には、ただただ圧倒されるばかり。
なんというか、スケールが違う。より原始的な世界という印象でした。

雄大な自然と時間軸の中で生まれる建築。てか、建築ってそもそも何なんだろう・・・などとぐるぐる考えながら味わった展覧会でした。


で、ギャラリーのある3Fから階段で降りていくと、2FがBOOKSHOP TOTO という書店兼ミュージアムショップだったので、もちろん寄り道しました。


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LIXIL出版の本たちに再会するも・・・!


店内には、建築の専門書や関連書を中心に、洋書や写真集、展覧会の図録もあったり、月光荘画材店のスケッチブックなどセレクトされた文房具が販売されていたり、と、何だか素敵なお店。

ずんずんと奥のほうへ進み、ある書棚の前に行って思わず立ち止まりました。LIXIL出版の既刊書がずらっと並んでいたのです。
わー!!!しかも、前に新宿で観たときよりもずっとたくさんある!!!

久しく大型書店に足を運んでいなかったこともあり、気になったタイトルを端から手に取ってページをめくっていきました。

わたしが特に気になったのが、正方形のA4判変型で統一された「BOOKLET」シリーズ。判型は同じでも、デザインや印刷加工は全て異なり、驚くほどに凝っています。

中ページもしかり。フルカラーページと写真が多く、文章もびっしりです。
どの本でも、途中途中で、突然、判型の異なる和紙が数ページ続いたり、ミシン目入りのポストカードが挟み込まれていたり、観音開きのぺージが現れたり、と、多種多様。

もしや!とスタッフクレジットを見て納得。凝ったブックデザインでおなじみ、コズフィッシュと祖父江慎さんのお名前がありました。


夢中になって立ち読みしていたところで、ふとPOPに気づきました。

新刊発行は2020年で終了となりますが、書籍の販売については2022年秋まで継続予定です。

えー!!!終了!!!
知らなかった・・・ 

とてつもなくショックでした。
こんなにも素敵な本を作っているのに、新刊はもう出ないだなんて。
惜しい。本当に惜しい、と、心の底から思いました。


何より、一冊一冊のテーマがすごいんです。
ピンポイントにも程がある内容ばかりで、本当に丁寧に編集されていることが伝わってきます。

ピンポイントすぎる故、なのでしょうか。それともちょっと早すぎたのか。
もっと広く多くの人に、LIXIL出版の存在と、魅力的すぎる書籍の数々が知られていたのなら、結末は変わっていたのかな・・・なんて、ついつい思ってしまったのでした。

気づけば閉店時間。慌てて数冊を抱え、レジに向かうわたしがいました。

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本は、買わないと、いつの間にか買えなくなる


積ん読肯定派になったきっかけは、大学で履修した「インタビューと取材の方法論」で講師だった、とある新聞社の記者の方の話でした。

「本屋さんの店頭や、新聞の書評などを読んで、お!と思った本、興味を持った本は、可能な範囲でかまいませんから、ぜひなるべく買ってください。積ん読でも、意味があるんです。それに、読めそうなときにすぐ手に取って読めるのが大事ですから。

そして、紙の本は、いつでも売ってるからいつか買おう、と思っていると、ある日ほんとに買おうと思ったときには、すでに絶版、中古が高値になっている・・・という悲劇に見舞われることが、まぁまぁの確率で起こります。

わたしが手に取ることの多いアート系の書籍は、そんな悲劇に遭遇しやすいジャンルのひとつです。
そもそもフルカラー印刷とか、こだわりの装幀とか、判型大きめor変形で、1冊の単価がお高めのことも多いので、いつもお財布と相談しまくりながら購入を検討しています。

でも、いつかと思って二度と手に入らなくなり、高嶺の花よろしく高値の本になってしまった方々は数知れません。

なので、今回のLIXIL出版の本たちの中でも、特に発行日の古いもので、これは!と思ったものは、お店でできるだけ購入してきました。
そして約1か月後、お店へ再訪できたときも、ついつい、お買い物を。

少々突発的な出費でしたが、今となっては読んでいるだけで至福なので、購入して良かったと思っています。

そんな数々の書籍について、ここでご紹介させてください。
そしてもし気になった方は、ぜひぜひお早めにポチってください。
きっともう、増刷はされないでしょう。在庫があるだけで終了です。

奇跡の住宅──旧渡辺甚吉邸と室内装飾


建築金物──細部に宿る住みごこち(品切)

小さな建築金物にはさりげない洗練のデザインや高度な仕組みが隠されている。人間の五感に働きかけ、豊かな時空をつくり出す建築の名脇役、建築金物の世界に注目する。

わたし、ドアノブとか窓枠とか、ふすまの引き手とか、鍵とか、いわゆる建具のデザインが気になってしまうんです。特に近代建築は美しくて好きで。
美は細部に宿る、と思っているからでしょうか。ずっと眺めていられる一冊です。素敵です。


富士屋ホテルの営繕さん──建築の守り人

2018年4月から改修のため2年間休業になった機会をねらい、富士屋ホテルの異色を放つ建築としての見どころを、ホテルの裏側となる営繕の仕事とともに紹介する。彼らが手掛けた日々のメンテナンス、また庭園の橋や水車、檜風呂などの大仕事、さらにはこの時期だからこそ垣間見ることができるバックヤードなど富士屋ホテルの表と裏の姿を図版豊富に展開する。おもてなしの空間を支える人々の技と工夫、心意気を伝える一冊。

富士屋ホテル、素敵ですよね〜✨改修前のレトロの極みな感じも大好きでした。


建築を彩るテキスタイル──川島織物の美と技

川島織物の創業は1843(天保14)年。初代が京都で呉服悉皆(しっかい)業を開業、その後を引き継いだ二代川島甚兵衞(1853-1910)は、その間に先んじて織物による空間づくりに取り組み、今まで主に衣服に用いられてきた染織品を室内装飾に用いたのである。本書では、織物の用途を一気に拡大した二代川島甚兵衞の功績と、現在まで連綿と続くものづくりの現場を図版豊富に紹介しながら、染織品に秘められた美と技を再考する。

着物の帯や古帛紗などでお名前を聞いたことがあった、川島織物さん。
ぺらりと開いて、そのめくるめく織物の美しい世界に魅了されてしまいました。すごいです。まさに眺めているだけで眼福な一冊です。
ちなみに写真は、十文字美信さん。納得です。


武田五一の建築標本──近代を語る材料とデザイン

本邦初公開となる資料を中心に約80点の「建築標本」をカラー図版で紹介。明治の幕開けとともに近代化が始まった日本の建築を象徴する多彩な材料を一望しながら、未来を見据えたコレクター・五一の世界観を垣間見る。彼の好奇心と関心が詰まった建築コレクションを初披露する。

建築金物」と同様、建具好きにはたまらない一冊です。ずっと眺めていられます。こんな方がいらしたんだなぁと、この本を手に取って初めて知りました。


文字の博覧会──旅して集めた"みんぱく"中西コレクション

"みんぱく"こと国立民族学博物館に収められた「中西コレクション」を中心に、世界の文字から約50種類を取り上げ、その魅力を図版豊富に紹介する。古いもので12世紀、さらには竹筒、ヤシの葉、樹皮、布、紙、黒板などに書かれた貴重な手稿を細部まで色鮮やかに披露。文字の系統図や現在使われている文字の世界地図も収録。中西氏の人物像は文字ハンターならではのユニークな旅のアルバムから垣間見る。記された形を愛でながら、さらに奥深い文字の世界へと引き込まれる一冊。

文字のデザインについて気になっていたところだったので、面白そうだと思って購入した一冊。思っていた以上に奥が深すぎて・・・読み終わるのはいつになるか怪しいです。でもとっても面白い一冊です。


海を渡ったニッポンの家具──豪華絢爛仰天手仕事

珠玉の工芸家具を、寄木細工、芝山象嵌、青貝細工、彫刻家具、仙台箪笥の5つに分け、技法や背景、見どころと併せて紹介する。何種類もの幾何学パターンで埋め尽くされた寄木細工の飾棚、蝶貝や象牙で花鳥や人物を細かくレリーフ状に盛り上げられた芝山象嵌の衝立、華やかに青貝細工が施されたエレガントな猫足付きのビューロー......。家具ならではのサイズ感とフォルムの面白さ、そして神業のような装飾など、これら一切を堪能させてくれる写真家・大西成明による図版満載の一冊。人間疎外になりがちな現代に、職人たちの手による豊穣な世界に触れていただきたい。

ぱらぱらっとめくっただけで、もう一瞬で心を射抜かれてしまった一冊。
輸出家具ゆえ、国内にほとんど現存してないため、なかなか他では見ることが難しいものばかりだと思いました。


以上です!
なかなかピンポイントなテーマばかりだったかと思いますが、どれも素晴らしい内容とブックデザインでまとめられているのが伝わりましたら幸いです。

ご紹介した、この「BOOKLET」シリーズだけでも、本当にたくさんの書籍が発売されています。
良い意味で、ちょっとどうかしている内容の一冊が多々ありますので、ぜひぜひお手に取って読んでみてください。

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おまけ:銀座の無印6F・ATELIER MUJI GINZAでBOOKLETシリーズの一部が読めます!!!


つい先日、銀座にある無印良品の6F・ATELIER MUJI GINZAに行ったら、なんと!!!
誰でも読んでOKの選書スペースに、このBOOKLETシリーズが何冊か置いてあったんですよー!!!ものすごくびっくりしました。

残念ながら購入はできないんですが、ベンチに座ってたっぷり読めます。
訪れる機会がありましたら、ぜひぜひ。

この本に限らず、この6Fフロアには面白い本が多数並んでいます。

ギャラリースペースやバーカウンターなどもあって、とても居心地がよくて、わたしは大のお気に入りの場所です。

あんまり知られてないのかなぁ・・・たいてい空いていますよ~。


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次の記事は 11月25日(木)に公開します。



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