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Vol.350 甥っ子の担任と結婚した話

新学期が始まった。

だいぶ学校関係の話題を書く方が増えてきたようだ。そこで私もある小咄をアップしたいと思う。

 【おいっ子の担任の先生と結婚】


ただしこれは50年くらい前の話。
私ではなく母のことだ。
見知らぬ書き手の、しかも母親の出会いになんて興味ないよと思われるかもしれないが、まぁ暇な人だけ読んで欲しい。

〈相関図〉
※年齢は全て当時のもの

父・・・小学校教諭(20代後半)
母・・・家事手伝い(20代半ば)
安江伯母さん・・・母の長姉(30代)
幸夫兄ちゃん・・・安江伯母さんの子供(小4)

母は20代半ばに差し掛かっており当時としては「行き遅れ」に近かった。家で介護を担っていたことから婚期を逃しかけていたらしい。

そして(母から見ると甥に当たる)幸夫兄ちゃんは大の腕白わんぱく。神をも恐れぬ最強の小4男子だった。授業中はじっと座れず立ち歩く、友達と喧嘩して怪我する・怪我させるは日常茶飯事。
今なら診断が付くかもしれない。とにかく問題児で安江伯母は頭を抱えていた。


そんな幸夫兄の担任になったのが父だ。
父は北海道出身、北大で教員免許を取得したものの地元では就職せず静岡まで南下したという変わり種だった。


ある日、幸夫兄が階段から落ちて入院した。

ご多分に洩れず友達とふざけ合っているうち足を踏み外したらしい。学校での事故ということでだいぶ問題になったようだ。
〝またアイツか〟周りが眉を顰める中、父は怒るでもなく淡々と対応した。毎日放課後病室に通い、その日進んだ分の授業を教えたのだ。もちろん時間外労働であり、そこまでする義務はないのだけど、真面目一辺倒の父はシンプルに〝授業について来れなくなったら可哀想だし〟と思ったそうだ。根っからの「教師脳」である。

さてその姿を見てひらめいたのが安江伯母だ。

「あら先生、独身よね? 交際相手は? いない? うちに妹がいるのよぅ。会ってみない? ね、ね、ね?」

…なかなか押しの強い伯母である。

かくして見合いがセッティングされ父と母は結婚した。見合いから半年も経たず結婚したそうなのでウマが合ったのだろう。人と人との縁なんてそんなものである。

しかしこれ、今の時代なら完全アウトだ。
なにせ父は「受け持ってる生徒の叔母さん」と結婚したことになる。
親族が同じ学校にいるのは基本NG(※法的に明文化はされていないが避ける傾向にあるそう)。
今なら平等性がどうだとか他の保護者に騒がれるだろう。でも当時はそんなこと誰も言わなかった。昭和とはそういう時代だったのである。


尚、余談だが幸夫兄はその後バイクで事故って死にかけたり2回離婚したり色々あったものの今はコンビニ3店のオーナーとして立派に暮らしている。
しかし還暦間際になった今も法事などで父を見ると「先生!」子犬のように駆け寄って行く。
そして俺が小学生のとき先生はあーだったこーだったとか何十年も同じ話を繰り返している。

・・・彼にとって父は死ぬまで「叔父さん」ではなく「先生」なのかもしれない。





【猫ムスメより】
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