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パフォーマンスが悪くなったVCはどのような行動を取るか

パフォーマンスが悪くなったVCはどのような行動を取るか

ベンチャーキャピタルファンドを運用するファンドマネージャーは基本的に、LP投資家から、その運用成績にかかわらずコミット額に対する一定料率の管理報酬(マネジメントフィー)を約10年間のファンド存続期間の間もらい続ける。その条件は概ね以下の通りである。

投資期間中(一般的に、ファンド組成から5年間):コミット額に対し2%〜2.5%程度

投資期間終了後(ファンド存続期間終了までの期間):投資残高に対

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ベンチャーキャピタリストから「日本のLP投資家はもっと”LP力”をつけるべきだ」と言われたが、これはどういう意味なのか

ベンチャーキャピタリストから「日本のLP投資家はもっと”LP力”をつけるべきだ」と言われたが、これはどういう意味なのか

つい先日、日本の複数の事業会社や金融機関から資金を募り、米国でベンチャーキャピタルファンドを運用しているファンドマネージャーの方が来日し、面談する機会を得た。

その際、その方から複数の日本のLP投資家の課題をいただいた後、最後に「日本の投資家は米国のようにもっとLP力をつけるべきだ」とのお言葉をいただいた。

私は、「客観的事実は示さずに『日本ダメ、アメリカ正しい。すごい』理論を振りかざしてくる

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スタートアップから評判の良いベンチャーキャピタルの特徴について、起業家から直接きいてみた

スタートアップから評判の良いベンチャーキャピタルの特徴について、起業家から直接きいてみた

ベンチャーキャピタルといえば、スタートアップの株式を数%〜20%程度を保有し、自身を起業家の「伴走者」と呼びながら成長をサポートするリスクマネーの供給者、というのが通常のイメージだが、一点疑問が生じる。

「マイノリティ株主が、なぜ起業家の伴走者たりえるのか?」「マイノリティ株主ができるバリューアップとは何か?」という点である。

本当に運命共同体になるのであれば例えばバイアウトファンドのようにも

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米中デカップリングの実態がわかる記事を発見

米中デカップリングの実態がわかる記事を発見

https://www.saa.or.jp/dc/sale/apps/journal/JournalShowDetail.do?goDownload=&itmNo=40608

証券アナリストジャーナルの「中国経済の行方」(冒頭URLご参照)が大変勉強になったので概要を以下メモしておきたい。

<Small Yard、High Fence>

今のG7の考え方はデカップリングではなくデリスキングだ

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パフォーマンスが低調のまま終わってしまったPE /VCはどうなるか

パフォーマンスが低調のまま終わってしまったPE /VCはどうなるか

もう数年前の話になるのだが、投資のパフォーマンスが低調なまま解散・清算を迎えたPE /VCの最後をLPの立場から見届けた案件が複数あった。

ファンドに対する出資当初は大々的なプレスリリースに始まり豪華なディナー付きLP年次総会等、華々しいイベントばかりであったが、その後10年超が経過し、パフォーマンス低調に終わったファンドの最期は極めて寂しいものであった。

PEやVCは、一度出資したら基本的に

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アンドリーセン・ホロウィッツのAmerican Dynamism Fundが技キャピタリスト育成講座を創設

アンドリーセン・ホロウィッツのAmerican Dynamism Fundが技キャピタリスト育成講座を創設

かつて、というか10年前まで、ベンチャーキャピタル及びテクノロジー系のスタートアップは権力を持つ為政者に対する挑戦者であった。

明確な法律やルールが出来ていない領域で事業を展開し、民意(顧客のニーズ)を味方につけ、その後の法律やルール作りを主導していた。

創業当時のUberは未だライドシェアに関するルール、ドライバーを個人事業主とみなすべきか社員と明確なルールがない中で事業を開始し、その後国に

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AI関連スタートアップの売上高マルチプルはおおよそ25倍である、というレポート

AI関連スタートアップの売上高マルチプルはおおよそ25倍である、というレポート

2022年のOpenAIによるChat GPTのリリース以降、急速にその市場を拡大させつつあるAI関連スタートアップ。

AI関連スタートアップの資金調達の件数・調達額が共に拡大傾向にある現在、ポーランドのワルシャワにあるM&A助言会社であるAventis Advisorsが上述のレポートを公表している。

ChatGPTをはじめとする革新的な生成AIモデルの発表は世界に衝撃を与えた。生成AIの登

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Mistral AIがバリュエーション(pre-money) 60億米ドルで資金調達

Mistral AIがバリュエーション(pre-money) 60億米ドルで資金調達

MetaとGoogleのDeepMindの卒業生によって設立されたフランスの生成AIスタートアップ、Mistral AIが640百万米ドル(デット・エクイティ調達合計額)を企業価値60億米ドルで調達したとのこと。

シリーズBでこの大規模な調達額及び企業価値は業界の中央値と比べても完全に外れ値である。下記のAI関連スタートアップのバリュエーションがまとめられたレポートによれば、同分野におけるスター

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AI関連スタートアップが自動運転スタートアップから社会実装する上で学べること

AI関連スタートアップが自動運転スタートアップから社会実装する上で学べること

Y Combinatorのパートナー、Jared Friedmanの投稿が面白かったので、以下参考和訳を掲載しておきたい。

確かにこの投稿の通り、4、5年前までは自動運転技術が最初に実装されるのは高速道路を走るトラックだ、という論調が多かった。技術的な観点から言えば、高速道路は基本的に単調な道のりが続き(米国の場合は特に)、車線変更や信号による頻繁な停車等も人間の急な飛び出しも想定する必要がない

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農林中金の巨額損失について思うこと:時価評価を行う機関投資家の宿命

農林中金の巨額損失について思うこと:時価評価を行う機関投資家の宿命

農林中金の約5000億円の最終損益見通し(2025年3月期)と、約1兆2000億円の資本増強が私の周辺で話題になっている。

「ここ数年の株式上昇相場の中、株式に投資せず債券・クレジットに偏重した投資ばかり行っていたのは運用能力の欠如だ」などなど、とりあえず農林中金の運用能力について疑問を呈する声が殆どである。

損失の主な原因は、農林中金が投資を行い運用していた米国債等の債券価格が、ここ1、2年

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フィンテックカンファレンス、LendIt 2019に参加した時の記録

フィンテックカンファレンス、LendIt 2019に参加した時の記録

2019年4月、米国・中国・欧州で毎年開催されていたフィンテックカンファレンス、LendItに参加した当時の記録が残っていたので以下に記載したい。当時からすでに5年近く経っているものの、結論そこまで大きくフィンテックをとりまく状況は変わっていないのではないか、と思える。

それもそのはず、当時「フィンテックが既存の金融機関を置き換え、脅かす」と言われていた脅威論は今となってはほぼ消え、「確かにフィ

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Y Combinatorの登壇企業を見ながら、優れたビジネスアイデアとは何かについて考える

Y Combinatorの登壇企業を見ながら、優れたビジネスアイデアとは何かについて考える

https://www.youtube.com/watch?v=_Kmgj9MAEN0&t=84s

元野村證券の営業マンで今はプルデンシャル生命で完全成果報酬型の営業マンである人気YouTuber、宋世羅氏の動画が好きでかれこれ3年近く観続けているが、この度大変共感した動画を見つけたため共有しておきたい。

「起業センスの無い者ほど妄想のビジネスプランを語り、起業センスのある者ほど地に足ついたビ

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ベンチャーキャピタルの仕事は「外れ値」に投資をすること by マーク・アンドリーセン

ベンチャーキャピタルの仕事は「外れ値」に投資をすること by マーク・アンドリーセン

以上はシリコンバレーの大手ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの創業者であるマーク・アンドリーセンがその昔、スタンフォード大学で行った講演の一部抜粋である。

なぜ、「チェックボックスが全て埋まった企業は凡庸な企業」になるのか。おそらく、チェックリスト方式のスクリーニングは「損をしない」企業を探すためには有効だが、「10倍、20倍に成長する」企業を探すためにはあまり役に立たないからだ

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スタートアップアイデアの作り方・テストの仕方 How to get and test startup ideas by Mike Seibel

スタートアップアイデアの作り方・テストの仕方 How to get and test startup ideas by Mike Seibel

https://www.youtube.com/watch?v=vDXkpJw16os&t=235s

YコンビネータのCEOで元Justin TV(後にTwitchに名称変更しAmazonへ企業を売却)の共同創業者、Mike Seibel氏による6分くらいの動画です。スタートアッププロダクトをゼロから作り始める際の留意点・アドバイスが非常にコンパクトにまとまっていてわかりやすかったので以下、メモ

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