マガジンのカバー画像

本・映画・アート

9
読書感想文。映画感想文など。
運営しているクリエイター

記事一覧

生きるって悪くない。フジコヘミング88歳の「ラ・カンパネラ」に涙した夜

生きるって悪くない。フジコヘミング88歳の「ラ・カンパネラ」に涙した夜

先週、フジコヘミングのコンサートへ行った夜のお話。
フジコヘミングといえば、「ラ・カンパネラ」の演奏でその名を知る人も多いだろう。不遇の時代を経て60代で見出され、88歳の今も世界を股にかけて活躍する現役ピアニストだ。

私も名前だけ知っていた。今なぜ急にコンサートに行こうと思ったのか。きっかけは、Youtubeである動画を見たからだ。

要約すると、ピアノに触れたこともない楽譜も読めない52歳の

もっとみる
私と新聞のおいしい関係

私と新聞のおいしい関係

新聞をポストからとる、そんな簡単なことがおっくうな、ここ最近。
2日分の朝刊・夕刊がたまりポストがもっさりしてきたところで、「やれやれ」とようやく中身を取り出す日々がつづいている。

新聞の束を前にして一番ときめくのは、広告を選別する瞬間である。興味のない広告を排除すること、これはある意味、新聞タイムの幕開けを告げる儀式のようなものだ。

そして選りすぐられた広告に目を通す数分感は、くつろぎの時

もっとみる
ショートスリーパーへの道はいかに。「睡眠の常識はウソだらけ」

ショートスリーパーへの道はいかに。「睡眠の常識はウソだらけ」

1日はなんでこんなに短いんだろう。あっという間に朝がきたと思ったら、気づけば日付が変わっている。
1日がもっと長かったらいいのに……そう思って、知人がおすすめしていた本を買った。

前世は猫だったと思うくらいに寝るのが好きな私が、ついに短眠の本に手を出すなんて、よほど切羽詰まっていると言える(笑)。

『睡眠の常識はウソだらけ』

「理想の睡眠時間は7〜8時間」
「ショートスリーパーは短命」

もっとみる
普通の人生ではダメなの?主婦の葛藤に共感 『田舎の紳士服店のモデルの妻 』

普通の人生ではダメなの?主婦の葛藤に共感 『田舎の紳士服店のモデルの妻 』

『羊と鋼の森』が本屋大賞に選ばれて一躍注目を集めた作家の宮下奈都。

「派手な事件は起きないが、市井の人が日常の中で心揺らされる瞬間に丁寧な筆致で寄り添う作家。仕事でも恋愛でも家族でも、悩みを抱える人に小さな希望を与える物語の書き手」。

2016年4月21日の『日系トレンディネット』ではこう評されていた。その通りだと思う。

プロフィールを見ると、専業主婦だった36歳のときに小説を書きはじめたと

もっとみる
モテ女へのヒント満載!バスローブ姿の女優に萌える映画3選

モテ女へのヒント満載!バスローブ姿の女優に萌える映画3選

外国の映画をみてると、バスローブ姿の男女がよく出てきます。

日本人の感覚だと、バスローブはあまり馴染みがないもの。 高級ホテルに備えつけのバスローブを着てワインをくるくる回している……みたいなイメージになりがち。
ですが映画のなかの着こなしは、そんな大げさなものではなく、さらりと自然でカッコいい。

超私的・バスローブ姿の女優さんにきゅんとくる映画3本といえば……

No.3 『イヴォンヌの香り

もっとみる
料理で国を変えたペルーの革命児の話

料理で国を変えたペルーの革命児の話

『料理人ガストン・アクリオ 美食を超えたおいしい革命』という映画を観た。

1度目は、ペルー行きの機内で。
東京に戻ってから、もう一度。

現地の体験と照らし合わせて観ると、2度目もあらたな発見があった。



料理で国を変えた、一人の革命児の話である。

ガストン・アクリオ。
ペルーでその名を知らない人はいないだろう。

映画のなかでは、世界のトップシェフがガストンに賛辞を贈る。

「ガストン

もっとみる
タンゴと結婚したひと、マリア・ニエベス

タンゴと結婚したひと、マリア・ニエベス

尊敬する作家の山口路子先生に「ぜひっ!!見てね!」とおすすめしてもらった『ラスト・タンゴ』をようやく鑑賞@Bunkamura ル・シネマ。

あーん、いいっ!よかった。

リズム感ゼロのわたしですら、思わず身体を揺すってしまう小気味よいリズムとどこか懐かしさを感じるタンゴのしらべに、心臓がどくどくした。

映画は、伝説のタンゴカップル、マリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペスのタンゴ人生を追

もっとみる
『フレンチの王道 シェ・イノの流儀』を読んで

『フレンチの王道 シェ・イノの流儀』を読んで

 今年で92歳になるわたしの義母は、驚くほどの健啖家でフレンチが大好物。並みの若者よりよく食べるのだが、フレンチのなかでもモダンなものや創作系を嫌い、昔ながらの料理を好む。健康志向、食の軽量化が進んだいまの世の中、「ヘルシーで軽い」料理を出すレストランが主流なので、家族で食事するときには意外と店選びに苦労する。

 代官山の『レストラン・パッション』はオープン以来30年の常連。そのほかパッションの

もっとみる
何度目かの再読、山口路子『うっかり人生がすぎてしまいそうなあなたへ』

何度目かの再読、山口路子『うっかり人生がすぎてしまいそうなあなたへ』

さわやかに晴れわたった日曜の朝に読む本では決してないと思うけど、久々に読み返したくなり開いた山口路子先生の『うっかり人生がすぎてしまいそうなあなたへ』。 もう何度も読み返している大切な本。

久しぶりにページをくると、2年前の自分が残した痕跡があった。

本文に引用されている須賀敦子の『ヴェネツィアの宿』の一節に、改めてハッとする。

「そうだった。私は『うっかり人生がすぎてしまう』のが嫌だ

もっとみる