見出し画像

【総集編】日本はデジタル敗戦国なんですか?

あたらしい働き方をつくりだしたい

もちろんきらきら活躍している人がたくさんいるのだけど、ボクを含めてゆきづまりを感じている人がいるのではないかと思ったのです。

ボクはいわゆるホワイト企業とブラック企業の両方で仕事をしたことがあります。ところでこの両者の違いは何から生まれると思いますか? 

ホワイト企業は、はじめに儲かるビジネスモデルを作り出します。それによって業績がいいから従業員にもやさしくできるんです。いえ正確にいえば、儲かるビジネスモデルのうえに、従業員のやる気を引き出す仕組みをつくっているから、業績がさらに良くなるというポジティブスパイラルを回しています。

一方、ブラック企業は必ず業績が不調です。その理由のひとつは利益率がきわめて低いか、利益が出ないビジネスモデルで、かろうじて事業を運営しているからです。だから構造的な赤字企業もあれば、一歩間違えばすぐに赤字に転落する企業もあります。

儲かるビジネスモデルに向かうべきところを、これら業績が悪い企業の上層部は、中間管理職に厳しいコストカット要求を出します。しかし中間管理職が負っているノルマには変わりがないから、中間管理職はノルマとコストカット要求の板挟みになります。

すると何が起きるのかということです。その歪が現場への厳しいプレッシャーに転じます。このプレッシャーは経験した人でないと理解できない熾烈なものです。

心の病いを抱えた人が続出する現場では、従業員に〈やる気がない〉とのさらなる追い打ちがかかります。かくしてやりがいとはほど遠い現場では、業績低下の果てしないネガティブスパイラルがまわり、現場へのプレッシャーはさらに厳しくなるのでした。

この連載記事のテーマは〈従業員をはじめとした関係者がハッピーになるような儲かるビジネスモデルづくり - あたらしい働き方 - 〉について述べることです。そのようなビジネスモデルを作るための新しい方法として〈エフェクチュエーション〉を紹介することがこの連載記事の目的です。

その後、ブラック現場から距離をおこうと思ったボクは、クラウドソーシングで受注するフリーランスのこたつ記事ライターになりました。ブラック現場では、冗談抜きでゆきづまり感を通り越して、心身の危険を感じたからです(苦笑)。

しかしフリーランスにはフリーランスの厳しい現実があることを学びました。たとえばフリーランスにとってのクラウドソーシング市場は、究極のレッドオーシャン(競争が激しい既存市場)です。この市場では、構造的に安定収入を望むべくもありません。構造問題ということは、この市場で稼ぐことを目的にした場合に、どうにかしたいと思っても、どうしようもできないことがあるということです。

しかしその一方で、この連載記事のように、お金にならないにしても、自分で考えたお題で〈作品〉を書くことは自由で愉しいことがわかりました。〈すき〉をポチっとしてもらえたり、フォローしていただけることは無上の喜びなのです。

だからこの記事のテーマをフリーランスのために言い換えると〈フリーランスがハッピーになって、なおかつ安定収入が得られるビジネスモデルづくり - あたらしい働き方 - 〉について述べることです。そのようなビジネスモデルを作るための新しい方法として〈エフェクチュエーション〉を紹介することがこの連載記事の目的です。

この【総集編】のテーマは以下のとおりです。

  • フリーランスが豊かに自立して生きる仕組みの作り方をおさらいすること。

  • 日本がデジタル敗戦国になった本当の意味をおさらいすること。

  • ワークマンがなぜモデル企業であるかを説明すること。

おさらい:フリーランスが豊かに自立して生きる仕組みの作り方

図表19.1 複業協同組合の位置づけ

橘玲は、その著書『無理ゲー社会』で、誰もが知能と努力によって成功できるようになったことで、社会は(知能の高い)上級国民と(知能の低い)下級国民に分断されると喝破しました。[1]

橘は、日本も世界もリベラル化しているといいます。ここでいうリベラルとは〈自分の人生は自分で決める〉、〈すべての人が”自分らしく生きられる”社会を目指すべきだ〉という価値観のことです。このリベラリズム(自由主義)の根拠は、〈わたしが自由に生きるのなら、あなたにも自由に生きる権利がある〉です。

こうしてボクたちは、すべてのひとが自分らしく生きるべきだとするリベラルな社会に暮らすことになりました。これはもちろん素晴らしいことですが、光があれば闇もあるように、この理想にはどこか不吉なところがあると橘はいいます。

つまりリベラルな社会で〈自分らしく生きられない〉ひとはどうすればいいのでしょうか。リベラルな社会で誰もが知能と努力によって成功できるようになったとすれば、下級国民の烙印を押されたボクたちは、どう生きればいいのでしょうか。

ボクたちが〈上級国民〉と〈下級国民〉に分断されるのは、〈リベラルな社会=競争社会〉の宿命です。

だからこの記事では、フリーランスが豊かに自立して生きる仕組みの作り方を提案しました。

おさらい:日本はデジタル敗戦国なんですか?

図表19.2 上級国家 vs. 下級国家
図表19.3 3つのビジネスモデル

連載第1回〉、〈連載第2回〉、〈連載第3回〉で書いたことですが、簡潔に要約します。

一般的に〈デジタル敗戦国問題〉とは、デジタル化の遅れで手作業によるマイナンバーカードの登録が強いられたことによる、現場の混乱のような問題を指していると思われています。でも〈真のデジタル敗戦国問題〉とは、はるかに深刻な問題を意味しているのです。

DXの定義は人の数ほどありますが、本稿におけるDXとは〈ITをうまく使うことで稼ぐ力を高めたビジネスモデルにトランスフォーメーションすること〉です。

〈平成型ビジネスモデル〉とは、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)が象徴する米国企業が起点となって展開している、DXという名前のビジネスモデルを意味します。このビジネスモデルで米国企業は世界の富を独占しています。

一方〈昭和型ビジネスモデル〉とは、1980年代に世界の頂点に立った日本企業のビジネスモデルのことです。問題はなにかというと、それから30年経ったいまでも、日本企業の多くが〈昭和型ビジネスモデル〉を継続していることです。

米国企業は30年にわたって〈平成型ビジネスモデル=米国型DX〉を磨きつづけ、グローバル市場を進化させ、世界の富を独占し続けてきました。それに対して日本企業の昭和型ビジネスモデルの性能は、平成型ビジネスモデルに30年分、劣っているのです。

それが長く苦しい失われた30年を生み出し、日本経済の国際的な凋落を招いた主要な原因のひとつになっています。結果として〈上級国家:米国 vs. 下級国家:日本〉の大きすぎる経済格差を生んだのです。

しかし日本企業がこれから競争市場で米国と競うことは、ふたつの意味で悪手であるとボクは考えています。

ひとつには今さら米国企業に追いつき追い越せは無理ゲーです。もうひとつは〈欲望=短期的願望〉を満たすために〈たくさん稼ぐ〉ことを続ける利己的なビジネスモデルは、〈米国企業=アングロサクソン〉が得意とすることです。しかし日本企業は、もっと文化的価値(=押しの経済)を生み出す方向に舵を切った方が良いと考えているからです。

そこで利他的であり〈押しの経済〉の性格を持つ共生型ビジネスモデルのモデルケースとして〈ワークマン〉を紹介します。

ワークマンのエフェクチュエーション

図表19.4 ワークマンの利他的なビジネスモデル

この【総集編】では、ワークマンのビジネスモデルのエッセンスを紹介します。

参考文献[2]から、ワークマンのビジネスモデルのエッセンスを抜き出してきました。このエッセンスを〈共生型:利他的:理想をめざす〉と〈競争型:利己的:欲望を満たす〉で比較してみると理解がしやすいと思います。

ワークマンは〈利己的で欲望を満たすための活動をしない〉のであり、〈利他的で理想をめざす活動をする〉のです。

特にボクがステキだなと思ったのは、ワークマンの企業理念です。

機能と価格に新基準を実現し生活者の可処分所得を増やす

ワークマンは企業理念からして利他的で贈与経済的だと思います。それを具体化すると〈客が値札をみずに買う高機能と本当の低価格〉になるのです。

ワークマンの目標はただひとつ。〈理想=ブルーオーシャン市場の拡張〉を目指すことですが、ブルーオーシャンを開拓するための方法は、エフェクチュエーションの〈手中の鳥の原則〉です。

ワークマンにとっての〈手中の鳥=手段としてのわたし〉とは、この〈客が値札をみずに買う高機能と本当の低価格〉です。個人向けの作業服の分野で培ったこの〈能力=手段としてのわたし〉を、ワークマンは〈アウトドア市場〉、〈スポーツウェア市場〉、〈レインウェア市場〉、〈......〉へと順番に展開してるのです。

つまり〈手中の鳥=手段としてのわたし〉は本質的に変えずに、さまざまな市場に〈見せ方〉を変えて展開しています。

それも人とお金をかけずに小さく始める方法は、エフェクチュエーションの〈許容可能な損失の原則〉を活用しています。

ボクはワークマンのDXにも注目しています。本稿では紹介できませんので、ワークマンのビジネスモデルの詳細とあわせて別稿を企画しています。

新企画でお会いできれば幸いです

この連載記事をお読みいただいた方々、本当にありがとうございます。『note創作対象2024』をきっかけにはじめてnote記事を書きましたが、こんなに愉しいとは正直、予想していませんでした。

〈すき〉をポチっとしていただいたり、フォローしていただくことの喜びがこんなに大きいとも思いませんでした。いったんこの【総集編】でまとめとしますが、記事を書くことがすっかりやみつきです。

新企画を練って再開を予定しています。またお会いできれば幸いです。

出所

[1]『無理ゲー社会』橘玲著、小学館新書2021
[2]『ワークマン式「しない経営」』土屋哲雄著、ダイヤモンド社刊2020

連載記事一覧

[連載01]日本は『デジタル敗戦国』なんですか?:連載第1回
[連載02]デジタル庁にも注目してほしい:デジタル敗戦問題解決を先取りした千代田区役所の成功事例
[連載03]ボクたちの閉塞感にゆらぎをもたらすエフェクチュエーション
[連載04]押しの経済時代のエフェクチュエーション
[連載05]生成AIは神か悪魔か?芥川賞作家の神回答がツボにはまった件
[連載06]劣等感の真実
[連載07]絶望感を克服して愉しく生きる方法
[連載08]収入の不安定さをコントロールする
[連載09]目的や目標ではなくて手段からはじめた方が幸福になれる理由
[連載10]幸せの青い鳥の原則
[連載11]noteとクラウドソーシング、こたつ記事ライターがめざすべきなのはどっち?
[連載12]noteがブルーオーシャンになる理由
[連載13]新しい記事を書くってなんでこんなに愉しいのだろうか?
[連載14]ライターが「やりがい搾取」を感じるとき
[連載15]エフェクチュエーションの全体地図
[連載16]豊かに自由に自立して生きるということ
[連載17]フリーランスが豊かに自立して生きる世界を作り出すということ
[連載18]フリーランスのための「複業協同組合」の作り方
[連載19]【総集編】日本はデジタル敗戦国なんですか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?