見出し画像

収入の不安定さをコントロールする

フリーランスライターに限らず、フリーランサーの最大の悩みは収入が安定しないことです。特に安定した継続取引が確保できていないフリーランサーにとっては、不安で夜も眠れない問題になりがちです。副業ワーカーの方が独立を躊躇する最大の理由も、収入の不安定さへの懸念でしょう。絶望感を克服して愉しく生きたいボクにとっても、この収入の不安定さへの対処は重要な問題です。

そんなときにもエフェクチュエーションで世界の見方を180度、変えてしまいましょう。この収入の不安定さをコントロールする方法が、エフェクチュエーションの〈許容可能な損失の原則〉です。

許容可能な損失の原則とは?

図表8.1 コーゼーションとエフェクチュエーション

前回、ボクは〈3か月で月5万円・6か月で月30万円の収入目標〉を設定してはじめたにも関わらず、超低空飛行の現実に苦しんだことを書きました。なぜボクはゆきづまる必要があったのでしょうか。

ひとつの方針として世界は関係でできているのだから、コーゼーションの目標設定ありきをやめようと提案しました。クライアントや共通の志向をもった仲間との〈つながり〉に心のやすらぎを求めることができるし、そこから成長の道筋を見出すこともできると提案しました。

ボクはそう思って活動しています。しかしその一方で、収入の不安定さに悩む現実を否定することもできません。それはなぜでしょうか。

それは前提が間違っていたからです。コーゼーションの落とし穴にはまり込んでいたからです。その落とし穴とは、こういうことです。

現実の世界では〇〇か月で月□□万円、収入が得られるかどうかは誰にもわからない。なぜならば未来は不確実で予測不能だから。

ところがボクは、誰かが作った成功シナリオ(=3か月で月5万円)をそのまま自分の夢に置き換えてしまいました。なんの根拠もなしにです。現実の世界では、未来は不確実で予測不能だから、誰にもそのシナリオの成功確率はわからないにも関わらずです。その結果として、ボクは〈まさかの葛藤〉に落ち込むことになったのでした。

エフェクチュエーションは、未来は不確実で予測不能だと考えます。そして世界は偶発性にあふれていると考えるのです。たとえばボクがライターになるきっかけになったYouTube番組や本との出会いは偶然です。

ボクは4か月目に月5万円を超えましたが、かといって月30万円なんて夢のまた夢です。その月5万円にしたって、継続記事の発注をいただいたクライアントとの偶然の出会いによります。その依頼だって、今日、終わるかもしれないのです。

だから本当の問いは、こうあるべきです。

未来は不確実で予測不能であり、偶発性にあふれたこの世界で、収入の不安定さをコントロールするためには、どうしたら良いのだろうか?

それを可能にするのが〈許容可能な損失の原則〉です。収入の最大化に焦点をあてるのではなく、どこまでの損失なら許容できるかを決めておく方法です。

収益管理の公式

図表8.2 収益管理の公式

フリーランサーだって自営業者というくらいで商売人です。ビジネスパーソンです。副業ワーカーだってそうです。このビジネスには大企業からフリーランサーや副業ワーカーにまであてはまる収益管理の公式があります。

図表8.3 モデルケース

たとえば会社勤めで一人暮らしの副業ライターが、フリーランサーとして独立するかどうかを考えているとします。企業であれば元手に相当する資金を出資か融資で調達します。しかしここでは個人なので、元手に相当するのは貯金です。もちろん株式投資の配当などが期待できる人は、それも元手にできます。

さてライターとして独立するにあたって、パソコンとプリンターを調達することにしました。そこで10万円を投資する計画です。生活費は、東京のひとり暮らしの平均13万円に家賃を加えた月あたり20万円とします。

ここでの最大の問題は、収入が予測できないことです。コーゼーションであれば、月5万円なり30万円と目標設定しますが、現実の世界ではだれも未来の収入を予測することはできません。もちろん独立にあたってクライアントとの契約が既にあるなどの個別事情があれば、それを織り込むのはオーケーです。

ではこのモデルケースでは〈許容可能な損失の原則〉をどのように適用すべきでしょうか。それは仮に収入ゼロが続いた場合、貯金を2か月で食いつぶすので、それが許容可能かどうかをあらかじめ決心しておくことです。

2か月間やってみて収入が上向く気配がなければ、最悪、会社員に戻るなど、他の進路をあらかじめ考えておくことになります。

目標収入に焦点をあてるのではなく許容可能な損失に焦点をあてる

しかしいくらなんでも、たった2か月で進退を決めなければならないのは、あまりにも酷ですよね。それに貯金ゼロというケースだって実際にあるわけです。だからここから先は工夫です。コントロール可能なパラメーターはいくつもあります。ただ必要な投資額を削るのは考えものです。とするともっとも大きくてコントロール可能なパラメータは〈生活費〉です。

生活費をコントロールする

生活費をコントロールする方法はいくつもあります。生活費に占める割合は家賃がもっとも大きいので、家賃の検討からはじめるのが定石です。

やはり東京の家賃は高いので、家賃が安い地域への引っ越しが一案です。実はボクは1年間、地方に移住した経験があります。ぼろぼろの古民家に間借りしましたが、家賃はなんと月1万円。物価も安いし、そもそもお金を使う場所もないし、野菜やお米を近所からもらったりで、生活費は家賃を含めて月6万円!

ただねずみとの暮らしに疲れて東京に戻ってきました(笑)。これはあまりにも極端な例なので参考にならないと思いますが、一般的にはミニマリズムの方向に進むのが一案かと思います。実際にYouTubeをみると東京でも生活費月10万円ちょっとという方もいらっしゃるみたいです。

収入をコントロールする

収入をコントロールするのも一案です。フリーランサーの最大の問題は収入が安定しないことなので、時間給が保証されるアルバイトやパートを併走させるのが一案です。それじゃあなんのために会社員をやめたのかわからないということであれば、時間給を保証するパートスタイルの制作会社に、ライターの口をみつけておくなどの方法もありそうです。

どこまで許容可能かどうかを決めておく

以上は考え方の一例にすぎません。以上の施策を考慮した結果、たとえば生活費を月10万円、バイト収入を月5万円確保できたとしたら、許容可能な期間が8か月に伸びるということです。そうであったとしても独立に踏み切るかどうかを決めるのは、それでもやりたいかどうか、自分の決心次第だということになります。

ボクが自分の経験から言いたかったことは、こういうことです。誰にも〇〇か月で月□□万円稼げるようになるかどうかなんてわからないのだから、それをあてにして、ボクのようにクラウドソーシング市場に準備しないで飛び込まない方がよいということです。

許容可能な損失を見極めたうえで、それでも独立に踏み切るかどうか、自分で意思決定をしておくことが大切です。であれば最悪の結果に終わっても想定内のことだから、まさかの葛藤に沈む羽目にはなりません。

ただしその一方で〈世界は関係でできている〉ことも事実です。真摯に活動していればセレンディピティな出会いがあるものです。ボクはそうしませんでしたが、はじめからライターコミュニティに参加しておく方法も良案だと思います。

ライターのためのワーカーズコープがあるといいな

ボクはいま、ライターのためのワーカーズコープ(協同組合)があるとよいなとひっそりと考えています。だれかリーダーがメンバーから会費を徴収するオンラインサロンではなくて、協働労働のために、組合員が少額を出資し、民主的に経営し、責任を分かち合って、社会に役立つライティングに取り組む活動です。

いまだったら〈ライターズDAO(分散型自立組織)〉にするのも一案ですね。ただお互いの顔がみえる小さなコミュニティが良いですね。ボクはコーゼーションの〈成功=稼ぐこと=正義の公式〉が社会のひずみを生み出していると思うのです。エフェクチュエーションの〈存在=関係の濃さの公式〉を、どうにかして社会実装できるといいなと考えているのです。

さて〈こたつ記事ライターのエフェクチュエーション〉、まだまだ続きます。またお会いできれば幸いです。

連載記事一覧

[連載04]押しの経済時代のエフェクチュエーション
[連載05]生成AIは神か悪魔か?芥川賞作家の神回答がツボにはまった件
[連載06]劣等感の真実
[連載07]こたつ記事ライターのエフェクチュエーション① - 絶望感を克服して愉しく生きる方法
[連載08]こたつ記事ライターのエフェクチュエーション?- 収入の不安定さをコントロールする
[連載09]こたつ記事ライターのエフェクチュエーション3:目的や目標ではなくて手段からはじめた方が幸福になれる理由
[連載10]幸せの青い鳥の原則
[連載11]noteとクラウドソーシング、こたつ記事ライターがめざすべきなのはどっち?
[連載12]noteがブルーオーシャンになる理由
[連載13]新しい記事を書くってなんでこんなに愉しいのだろうか?
[連載14]ライターが「やりがい搾取」を感じるとき

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?