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フリー台本(オリジナルSS)

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オリジナルSSまとめ。 フリー台本としてお使い頂けます。 5〜10分ほどで読めます。
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#恋愛

Firewood〜私の恋愛観〜【オリジナルSS】

Firewood〜私の恋愛観〜

みんなどうやって恋愛しているだろう。楽しく幸せな恋愛のさなかで、私はしばしば疑問に思う。

「もしもし?え、声が聴きたかった的な?ちょっと話そうよ。10分だけ!」

今は仕事が忙しい5つ年上の男性と付き合っていて、私が一生懸命に押して押して押してようやく振り向いてくれたのが経緯だ。仕事と息抜きのカメラにしか興味のない彼を押し続けるのはなかなかの苦難だったが、それで

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Balance〜僕の恋愛観〜【オリジナルSS】

Balance〜僕の恋愛観〜

そんなに恋愛に積極的なほうじゃない、むしろ煩わしいものとすら思っている。毎日仕事に追われてはいるが、それでもやりがいはあった。自分の努力がきちんと形になって返ってくるのは仕事のいいところ。だが恋愛はどうだろう。どれだけ愛情を注いでいたとしても、いつか終わるってしまうのなら、恋愛なんてしないほうが時間も無駄にせずに済む。

「…もしもし。うん、起きてた。なんだそれ。…

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祝福されない僕らの海【オリジナルSS】

祝福されない僕らの海

振り返れば僕の人生は「順風満帆」で、人から羨ましがられることも多かった。勉強は好きだったから受験で苦労することなく、友人にも恵まれ、3年前には結婚をし、今は1歳になる息子がいる。2つめの赴任先であるこの高校でも、頭を悩まされることはあれど周囲の先生方のサポートもあってか、大きな問題もなくやってくることができた。僕の30年は誰からも後ろ指を差されることのないもの、そう思ってい

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夢見る紅茶【オリジナルSS】

夢見る紅茶

一体私のなにがいけないっていうのかしら。初恋のレン君も、3年3組のテツヤくんも、中学のショウゴ先輩も、誰も私のことを好きになってはくれなかったわ。私は恋が敗れれば敗れるほど、どんどん恋に、誰かに愛されることに憧れていったの。そしてついに運命の人を見つけたわ。大学のミスターコンで優勝した北山君。背がスラッと高くて、切れ長の瞳が色っぽい彼に、私はもう夢中になったの。でも彼の周りにはいつも

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明日違う世界で【オリジナルSS】

明日違う世界で

「あの、すみません」

夜19時半、ショッピングモールにテナントとして入るこの靴屋は客足も落ち着く時間だ。のんびり靴箱を畳んでいるところに、1人の女性が声を掛けてきた。

「いらっしゃいませ。」

「私、東店の者です!近くまで寄ったので挨拶に来ました。」

女性はマスクをスッと下にずらし、笑顔をみせてそう言った。眩しい笑顔に思わず胸がときめく。

「そうなんですね!俺、山下です!

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ほぞを噛む【オリジナルSS】

ほぞを噛む

あぁ、またこの夢だ。何度も何度も見た夢、このあとの展開は知っている。

「もう俺たち会わないほうがいいな。さよなら。」

そう言って彼は立ち上がり、振り返ることなく私の部屋を出ていく。ドアが閉まる手前で、私は声を振り絞り叫ぶ。

「…待って!行かないで!」

そこで目が覚める。今日もそうだった。目が覚めて気がつくと私は泣いていて、強烈な絶望感と共に1日が始まるのだった。

もうあれか

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W/X/Y【オリジナルSS】

W/X/Y

空腹で目が覚めた。スマホを手に取るけど充電をし忘れて電源がつかない。視線を横に送ると、隣で枕を抱えながら彼女はまだすやすやと眠っている。その姿にちょっとニヤけてしまうのはやめられない。起こさないようにソッとベッドを抜け出し、キッチンに向かう。時計は10時半を回ったところを指していた。

昨日彼女が満面の笑みで「やっと買えた」って喜んでいた食パンがまだあるので、それを使うことにする。卵

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不適切【オリジナルSS】

不適切

「飲むのすごい久しぶりじゃない?」

「お互い環境変わったからなぁ。ま、そんなもんだろ。」

差し出されたグラスにグラスを合わせ、カチンと鳴らす。同期入社の清野(きよの)と2人での飲み会は何年かぶりだった。清野は3年前に、私は去年結婚をし、清野の言う「環境の変化」から、2人でという場面はすっかりなくなっていた。入社1年目の頃でこそ私は清野に強く惹かれていて、お酒の勢いで男女の関係にもなっ

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あいつの隣【オリジナルSS】

あいつの隣

仕事帰り、独り寂しく牛丼チェーンで腹を満たしているところに連絡を寄越したのは、幼馴染の陽介だ。LINEによると、知らない間に彼女が出来たらしい。その彼女を連れて久しぶりに家で飲まないかという誘いが来ていた。陽介はクラスの中心人物、とまではいかないが明るくて人当たりの良い奴で、いつもヘラヘラとその場を誤魔化すクセがある俺にとって眩しい存在だった。社会人になった今でも仲が良いのはこいつく

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No.n【オリジナルSS】

No.n

またしばらく連絡が取れなくなった。何度もしつこく電話することも出来ず、ただ未読のまま放ったらかしにされた自分のメッセージを見返す。最後にあったのは先々週の土曜日、会うときは決まって彼はひどく酔っていて、お酒と煙草と知らない香水を混ぜた匂いを纏わせている。きっと私の部屋は終電後の宿泊先としてちょうどいいんだろう。私のことどう思ってるの?なんて聞けず、ただちょっとでも彼の心の中を占める割合

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Under the moon【オリジナルSS】

Under the moon

私にはどうやら恋愛は向いていないらしい。2年越しの大失恋。好きだった部活の先輩に憧れた勢いのままサッカー部のマネージャーになり、なんとか視界に入ろうと頑張ってきた。大きな大会が終わり、先輩も引退というこのタイミングで想いを告げたが見事玉砕。家に帰る気分にもなれず、誰もいない教室の窓側で席に座り、ぼんやりと暗くなった外を眺める。そういえば今日は満月だったっけ。空には雲

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不適切 sideM【オムニバスSS】

不適切 sideM

「今日夕飯いらないから。」

ネクタイを締めながら夫が言う。目を合わさないこういうときは、大体後ろめたいことがあるときだ。

「飲み会?」

「そう。久しぶりに同僚とね。遅くなるかも知れないから先寝てて。」

結婚して3年。至って順調、なんの問題もない私たちだけど、全ては明かしあっていない。夫には夫の、私には私の秘密がある。「飲んで遅くなる」は、私にとっては朗報。夫がマンショ

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