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ぼくのPoetry gallery

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かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
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#詩みたいなもの

詩157「雨の散歩道」

「雨の散歩道」

雨は人を急き立てることがある
21世紀美術館から鈴木大拙館へのアスファルトの硬い道程も
街の賑わいとは裏腹に創造のイカロスは飛ばず

雨は人を急き立てることがある
傘を濡らして道をも濡らす

金澤詩人 20号掲載
Anywhere Zero Publication© 2023
Hiraya Akizuki© 2023

詩156「夏の山景」

「夏の山景」

碧(みどり)を碧(あお)とも呼べるのは
山並みの万緑が空の青さに溶けて行く
そんな夏の景色の賜物だろうか
熊谷守一が描いた「夏」の思想に
その答えがあったと思う

金澤詩人 20号掲載
Anywhere Zero Publication© 2023
Hiraya Akizuki© 2023

詩155「ひとこと、みこと」

「ひとこと、みこと」

言葉を離すべきじゃなかった
届かなければ伝わらない言葉だというのに
アネモネの花ほどの価値があったというのか
ぼくは負けたくない一心で
放り投げた言葉について話せずにいる

金澤詩人 20号掲載
Anywhere Zero Publication© 2023
Hiraya Akizuki© 2023

詩151「異彩」

「異彩」

異才の奇祭は胡散臭い
委細は一切言い出さないまま
雲散霧消な韜晦術で
まくのは煙かそれとも餌か
倒壊する論理には追い付けないが
それでも偉才と褒め称えられ
叩いて消えることさえない
ただ居るだけでも様になるので
冴えない無様な成りでも神々しい
嘘と誠が混合し インサイドで競り合って
玉虫色の魂の妖しい彩りは雄鶏のアシメントリー
色とりどりの折々のまとまりは始まりで終わり
つまりはあとの

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詩150「白銀の月」

「白銀の月」

帰り道の夜空を見上げると
ぼうっと冷たく光る月が滲む
あの気高く遠い世界なら邪な迷いも凍てついて
すべてはお前の想いひとつだ
そう突き放される気がしたら胸が締まった

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩148「紙で切った」

「紙で切った」

血も出ない指先の傷口は
確かにぱっくり薄く切れていた
景色が変わった違和感のような些細な痛みから
やがて来訪する刺激に覚えが始まる
涙も出ない心の無慈悲さは体との蟠り

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩147「呼吸」

「呼吸」

息を吸う
この部屋には一人
息遣いに耳を澄ませば
その音を吸い込んで
部屋の中は二人分

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩146「浮遊」

「浮遊」

傘を差せば宙に浮くような世界では
誰しも四角い丘に佇んで
冷たい夕日が沈むのを待っている
この世界は白々しい
白夜は琥珀色をまとった白昼夢か

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩145「本を読む」

「本を読む」

人間がこれまで本を読んで来た
その姿の美しさを知った
幻想に迷い込む真剣な眼差し
知性が洗練される渦巻く瞬間を垣間見て
人が龍になるその時だと知る

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩142「殺められた声」

「殺められた声」

言論の封殺によって青磁は艶を失くし
表現の自由によって芸術は悪用される
ひび割れたんか?と等と耐えねばなるまいか
稚拙に暴れるほど下品じゃなかったし
人は命の前にすべてを涸らし
スーパーマーケットの前で小銭を握り
その声をじっと押し殺していた

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩141「猫の踪跡 (吾輩は猫だった)」

詩141「猫の踪跡 (吾輩は猫だった)」

「猫の踪跡 (吾輩は猫だった)」

吾輩は猫であった
前世の記憶などない
多分猫であったと思っている
寝るのは好きだし気まぐれだらけ
ただ尻尾の振り方は思い出せていない

吾輩は猫であったと思う
確証なんてない
犬より猫が好きだ
日向ぼっこがたまらなく好きで
朝は早いし夜になればうずうずする

吾輩は猫になりたい
今は望みでしかない
人間なんて面白くない
しかし猫も大変である
野良となれば長靴を履

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【宣伝】第四 電子詩集『ミステリー』販売中

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6/7に Amazon Kindleで四冊目の電子詩集がリリースされました。
これまで同様、書いてきた詩を選別して組み合わせた詩集です。
タイトルは『ミステリー』、と言っても推理系や怪奇系の類ではありません。
表題詩は今回はありません。
相変わらずの10篇以下、7篇収めた小さな電子詩集です。
「知覚とその断片」「文学ラグナロク 序」という攻め過ぎた詩、表題タイトルをフォローするであろう「恐怖の谷」

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【宣伝】電子詩集リリースのお知らせ

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一月より三ヶ月連続で電子詩集をリリースしました。
一冊あたり十篇も満たない小さな詩集です(世にある既存の三十篇近く入る詩集には食傷気味だったので、電子の利点を生かしてコンパクトなものを目指しました。)
このnoteにも掲載している作品から厳選した詩集となっております。

1月30日リリース『端正なる狂気』
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2月22日リリース『Not』
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