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人と人、利他と人 『ぼけと利他』

最近のわたしの口癖は「他者(人間というもの)は理解できない」なんです。
ちょっと語弊があるな。
「理解しようと思ったって自分じゃなく違う人やねんからたぶん無理(と思うくらいがいいのかも)」
これも語弊があるかも。
「理解したと思って他者を判断したり決めつけたり(さらに区別したり)だなんてめっちゃ傲慢だ。他者は他者だ。だから考え、接し、(例えば悩みながらも)続けなくてはいけないのだ。それって楽しいかも」
これが近いかなあ?
理解できない、とか、無理だから、「マイナス」ってか後ろ向きな気持ちに思われるかもしれません。
でも、ちゃうねん、これ、なんというか「前向き」やねん。
「人間は(相手のことは)(自分のことも)わかんねぇのだ、だから考えなあかんのだ。いや、わたしは考えたいのだ。それって楽しいな、難しいけれど、なんか、ええな」
ますますわかりにくいかもしれませんね。
 
別に何があったとかじゃないし誰かや何かのことでありません。
気にしぃで、考えすぎで、すぐに気持ちうろうろと病む(笑)のに人間に興味が尽きない人間が、さらに人間を考えるようになって、のことかなあです。
近年入り浸っている大好きな舞台と劇場の世界でさまざまな人に会って出会って、です。
その中でも、大好きだ! って思うひとの舞台(ステージ)を観て、考えて、
「簡単に答えが出ない(出せない・出さない)」くらい、美しさや楽しさと共に、深さを感じるのに、
つくり、見せるご本人が
「どう受け取ってもいい(きっと想いはあるのだろうけれど、それを含めての)」と我々客席の者に言って下さる、そのとても〝豊かさ〟のような素敵さ、に、めちゃめちゃとても思います。

って、いつも以上になんだかまどろっこしくなっていますね。
 
そんな中、偶然手にした1冊がおもしろかったのです。

タイトルはずばり『ぼけと利他』。

美学者の伊藤亜紗さんと、
お年寄りの介護や看取りにかかわる団体「宅老よりあい」代表である作家・
村瀬孝生さんの往復書簡です。
書店の棚をぼーっとみていて、
ずっと興味があって読んでみたいなあと思っていた伊藤さんの名前と、
シンプルすぎるのに興味深いタイトルを見て0.01秒で手に取り、買いました。
時間をつくり静かな場所で一気読みをしました。
読みながら思考がぐるぐるしました。
ぐるぐるの中、痺れたり、わくわくしたり、
そう出来ることが、よかったなあ、と、反芻しました。

利他、とは自分がしたことが相手のためになる、ということ。
でも、それってめっちゃむずかしいことじゃない?!
相手を思ってやったと思ったのに、ズレていたり、真逆になったり、で、悩んだり。
またはそこから意図せぬ衝突になったり。えーっ、みたいな。
人と人、人と人との関係性とはまっこと難しい。
でもそもそも「誰かのため」って、一方的な思い込みの強さ(時に無意識)からの混線だったりも、せんやろうか?
誰かをわかったつもり、でもわかっていないことの方が多くて。
なのに、わかったと思い込んでいて、思い込んでしまいがちだったりする。
わからないものを、〝そのわからなさに自分が耐えられなくなって〟(文中の言葉より)「わからないもの・ひと」とすりかえ、決めつけ、結果、
時に遠ざけたり、除者にしたり、ときに排除しようとしたり、する。
ということは少なくないように思う、人間というものは、人間だからこそ。
(かなしくもおろかにも現実問題として)
なんて傲慢なのでしょう。でも傲慢だけれど、切実なのかもしれない。切実だけれど傲慢だけれども。
 
その切実かもしれない傲慢さを否定せずにまあ置いたとしても、
例えば加齢、老い、誰しもにとって避けることはできないじゃないですか。
自身にとっても、家族身内親類縁者にとっても。
そう、身近な家族にまず起こる、順番に起こる。
精神も体もが「変わる」(衰える、とは書かないようにするねしてみるね)それと直面した時に「わからないもの・ひと」とすりかえ、決めつけ、る?
うん、「る」ことがほとんどなのだろう。だから言う。「あのひとは、ボケているから」。
「から」?「からの」? なんで決めつける? 決めつけられる?
決めつけると楽だし、決めつけないと、耐えられないから。誰が? 自分が。
決めつけて勝手に思ってみていること。それはもしかしたら「見えていない」かもしれない。なにも。なんにも。「見えていない」のかもしれない。
さらにそこに「認知症」なーんて「病名」をつけると、
その尤もらしい病名に思い込みべったりになってしまって、
いろんなことを疑うことやめてしまう。
 
村瀬さんはまず言います。
 
ぼけ、は、病気じゃなく自然な現象なんじゃない? って。
 
そこから、みてみる。考えてみる。と、みえてくること。
 
伊藤さんはしょっぱなから言います。書きます。
 
〝自分のしたことが本当の意味で相手のためになる、というのは、
 おそらく私たちが思うよりもずっと不思議で、想定外に満ちた出来事なの 
 でしょう。ほとんど、奇跡だと言ってもいい。
 そして、だからこそ、そこには「自分は違う考え方や感じ方をする他者」  
 との濃密な出会いがあります〟
 
もう、心ぎゅっと掴まれませんか?!
 
エッセイや論文じゃなく、「往復書簡」で展開される1冊。
2人が書き、読み、考え、考え、書き、読み、手紙をやりとりする。
そこから、だから、出てくるワードたちはどれもこれも深く、唸るしかありません。
 
「答えを手放す」「モヤモヤし続ける」「ぼーっとさせておく」
「余白」「うつわ」「する、じゃなく、しないことで「立ち上がってくる」ものをみる」
「待つ」「待つことはつながり続けること」
それらはマジックのようだったり、ダンスのようだったり、という例え方にもわくわくが止まらなかった。
 
最近、親しくなった詩人の方と詩や文章のことをやりとりしていた際に
「豊かさ」という言葉を考える機会があったのですが、
まさに、これやとも思ったりしました。
 
わからない、ということの豊かさ、も、あるかもしれないな、って。
 
答えが出ないこと、簡単に出さないことかな、出ないこと、
誰かやなにかを決めつけないこと。
こだわりというか これぞここが自分の核・芯っていうのは誰しもにある。
わたしもそれはめっちゃあって嫌だな許せないな好きじゃないなぁがたくさんあるありすぎる、好きなものもはっきりありすぎる。
でも自分の中でも自分でそれを決めてしまうのは危険なことかもしれないとも思う。
さらに私的には伝え方もへたくそで、さらに「断定」みたいに聞こえたり捉えさせたりさせてしまう、これもいけないことだな、とも常々思って、常々反省をして、の繰り返しなのですが。
 
いろんなひとが居る、いろんな考え方を知れる、会える、
ソウル(たましい)でいろんなひとに会えるの、
それって楽しい、いや、豊かなことなんだな、と思います。
たくさん混線したり脱線したりもすれども、するからこそ、する中で、
皆で生きるヒントにもなるのかもしれない、とも。

そんなことは先日お披露目されたTabistoryBooks『本と旅する 人生あの本この本』でもちょっとだけ触れもしたのですが。

知る。聞く。知ろうとする。あてはめない(自分で固定したフォーマットに)。

「わからなさとの対話」

〝ずれ〟、すきま、豊かさ、手放して全身で受け止める。

ああ、出会えてよかったな、ですこの1冊に。そしてあなたに、なのです。



【お知らせ】
東京・湯島の本屋「出発点」さんでの私の2箱スペース、本増やしました。
神保町古本屋巡りの際でも、
谷根千や湯島や本郷三丁目散策の際でも是非お越しください。
買ってくれたら喜ぶし、他の棚やお店の出版物やグッズも楽しいです。
わたしの棚の自己紹介替わりのフリーペーパーももろて下さいな。

◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、各種文章やキャッチコピーなども、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

演劇鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)などの鑑賞と、学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)経験などを経て、
某劇団の音楽監督、亡き関西の喜劇作家、大阪を愛するエッセイストなどに師事したり。
からの大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

舞台と本と、やはり劇場と人間と、あ、酒も愛し、人間をひたすら書いてきて、書いています。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。

その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
各種フォローもよろこびます。

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あ、5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋も、やってます。

詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
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関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様では2種類の連載中。

酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在17話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)

旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
こちらのバックナンバーも、さきほどの「出発点」さんに置いてます。

今後ともどうぞよろしくお願いします。あなたとご縁がありますように。

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