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こよひ逢ふ人みなうつくしき マキノノゾミが描く与謝野晶子と若者たちの物語に

考える。
世の中には、いや、人間は、人間だからこそ、
あまりにもあまりな〝決めつけ〟が多いんじゃないか、と。
思い込みによるそれだったり、
自分にとって都合がよくないから
見たくない聞きたくない自分の中に入れたくないことだったり。
そうして自分の気持ち良かったり楽だったり、
自分と自分だけがよかったりすることだけに甘んじたり、
それだけを事実現実として〝そうじゃないもの〟を
例えば考えたり歩み寄ってみようとしてみたり、
考えもせずに「自分とは違う」「自分たちとは違う」として、
悪だとしたり、排除や無視したり。
うん、もしかしたらほんとうに悪だったり、
排除や何か策を練るべきことかもしれないよ。
きっとそうかもしれない、そうだろう。
でも、その、「決めつけ」と「思い込み」、
自問自答や自分を疑おうとせずにのそれからの攻撃や無視が、
危険な程に他者の尊厳をおかすことって、結構、多いのではないか、
誰しも、己も、皆も。人間は。人間だから、おい人間。
てか、なんだよ「自分たち」の「たち」って。なんの集団よ?
でもそれも、それが、人間だから、人間なのかもなあ。人間だよなあ。
 
古いパンクバンドは歌っていた。
もとい叫んでいた。
「アナーキスト、ナショナリスト、フォーマリスト、リベラリスト、
ヒューマニスト、ソーシャリスト、イスト! イスト! イスト! お前は!!」
わたしは世代でもないのに、この歌が(も?)ツボで、
ストレスがたまると酒を飲みながら聴いてげらげら笑ったりする。
笑いながら考える考えさせられる。
 
そんな阿呆のわたしはともかくだ。

明治という時代、
詩や文学の道を志した若者たちは、
その時代(も、か。)の創作と思想は、
もしかしたら今以上に切っても切り離せないものであって、
その思想と創作を取り締まる国や情勢という問題も常にあって、がんじがらめ、
フェミニスト、ソシオロジスト、アナーキスト、
夢と、金と、生活と、自由と、仲間と、恋と、
その仲間、それぞれの考え方、
思想の中で送る創作と生活、
生活と創作の日々はどのようなものだったのだろう。

そのすべては、「作品」に現れ、今も、残る。
 
劇作家・マキノノゾミによる戯曲
『MOTHER 君わらひたまふことなかれ』を読んだ。
大好きな劇作家の大好きな芝居だ。セリフまで覚えてる。
古書店でみつけ、秒で手に取った。
タイトルからおわかりのとおり、
与謝野晶子と鉄幹夫妻を中心とした青春群像劇、
青年座によって上演された作品だ。
白秋、啄木、佐藤春夫、平野萬里、
菅野須賀子(スガ)、平塚明子(らいてう)、大杉栄、
登場する人物たちは皆、若く、まっすぐ、情熱的で、やさしくてつよい。
皆、一人の若者で一人の表現者だ。
自身と、他者と、国と、譲れないもの、悩むこと……
日々悩んだりもがきながら、日々と人と創作をいつくしむ。
 
実はこの戯曲は、わたしが学生時代に所属していた劇団でも上演されたりもした。だからだいたいのシーンや登場人物たちの台詞は覚えていたのだけれど、この度、読み返してみたところ、じぃんとした。
アナーキズムやフェミニズムなど、近年、偶然なのか必然なのかわからないけれど、なんだかいろんな縁や導かれるようにして読んだり知ったテーマからかな。
いや、それもあるけれど、それだけじゃないようにも思った。
(でも大杉栄の名を知ったのはこの芝居だったのだけれどね笑)
 
劇中で人物たちは、それぞれの思想や思想からの創作論を口にする。
中には「私こそが正義」を相手に押し付けようとする人もいる。
また(もうお気づきの人もほとんどだろうけれど)「私こそが正義」に文字通り命をかけた人もいる。

皆、若者で、創作者で、人間だ。
 
これら劇中の人物やその台詞は、
実在の人物ではあるが、実在の人物をもとに、マキノノゾミが創作したキャラクターたちだ、たちでしかない。

でもわたしは、このマキノノゾミが、きっととてもリスペクトを込めて生み出したであろう人物たちが、とても好きだ。

中でも、主人公である、与謝野晶子が、とても好きだ。

晶子と明子、
明子つまりらいてうから『青鞜』に参加してほしいと言われた晶子、
ふたりのやりとりのシーンは印象深い。

食い気味に、思想を押し付け、他を排除するようなことを言う明子に対し、晶子が言う言葉が「うつくしいな」と思う。

否定はしない、でも、疑問を口にし、自問自答もあり、
けれど、はっきりと「自分は」の気持ちをいうシーンはこの芝居のハイライトだ。(と、その後の歴史的事実はご存じの通り)
 
とても長いセリフたちで、全部引用したいのだけれど、しない。
少しだけ、する。

解放、女性の解放。でも、女性だけではなく男も縛られているんじゃないか。どちらかだけでなく、どちらも、人間を解放、いや、 

「この世界が本当はもっと楽しい場所であることを、
 そうでなければならないことを、
 男も女も忘れて暮らしちゃいないかしら?」
 
「私は美しいものが好き。美しいものが好きな私が好き」
 
「私もこの世に戦うべき敵がいないとは思わないわ。敵はいる。
 大きな敵が、巨大な敵が彼方にいるわ。
 その正体が何なのか、私にはわからない。
 けれども、その敵と闘う方法を、
 そのための武器を私たちは間違えて選んじゃいけないのよ」

まだまだ書きたいこと引用したいことはあるけれど。
 
皆、やさしくて、皆、もがいている。
 
そんな本芝居の、やさしく賑やかに終わるラストシーンも、とても好きだ。
 
〝ジュテエム〟からの、皆、皆で、月見の宴。
 
まさに〝こよひ逢ふ人みなうつくしき〟。

うつくしさを、皆で。皆と。

同氏による物理学者・朝永振一郎たちの青春群像劇『東京原子核クラブ』と並んで好きな作品です

◆◆◆
以下は、自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。

構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

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lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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先日、ご縁あって素敵なWebマガジン「Stay Salty」Vol.33の巻頭、
「PEOPLE」にも載せていただきました。

5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋もやっています。

参加した読書エッセイ集もお店と通販で取り扱い中。

旅と思索社様のWebマガジン「tabistory」では2種類の連載をしています。
酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)です。

noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。

旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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こちらのバックナンバーも、さきほどの「出発点」さんに置いています。

あなたとご縁がありますように。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

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