下妻みどり

長崎のむかしと暮らし。著書『ながさき開港450年めぐり〜田川憲の版画と歩く長崎の町と歴…

下妻みどり

長崎のむかしと暮らし。著書『ながさき開港450年めぐり〜田川憲の版画と歩く長崎の町と歴史』『川原慶賀の「日本」画帳』『長崎迷宮旅暦』『長崎おいしい歳時記』。ZINE『プロシッサンの彼方』『「長崎手帖」をよむ』『11月18日を歩く』『長崎サウダーデ食堂』など。

記事一覧

庭の髪を切る

 庭用の手袋は、ワークマンの「棘を通さない性能最強」のやつだ。これだと、大抵の草や枝は手で刈れる。手袋をして庭に出ると、ついつい草をむしってしまい、そこからさら…

下妻みどり
5か月前
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ラザニアとコッコデショ

 長崎の「長い岬」の先端、もとの県庁があった近くに、イタリア料理屋さんがある。前に行ったのはもう何年前だったか忘れたくらいだったが、ある日のお昼「いま行くべきは…

下妻みどり
5か月前
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みんな飛び立って

年末。 今年は、冬にユキヒロさんが死に、春に坂本さんが死に、夏に息子が転校&上京し、秋にはるちゃん(猫。15歳)が死んだ。 元テクノ少女とかあちゃん、過去と現在の自…

下妻みどり
8か月前
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定点観測

 年に一度、珈琲人町さん主催の、沖縄のアダコーヒーを飲む会へ行く。  もう11年目らしいが、たぶん、皆勤賞。もしかしたら一回休みもあったか?くらい。別にコーヒーマ…

下妻みどり
9か月前
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薄皮

 遠い空の下の息子が18になり、クレカを作ったというので、さっそく?だの、気をつけて、だの、つい小言を発出したら、こっちに来てからしっかりやってる、と返された。た…

下妻みどり
10か月前
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倍増と半減

 息子が生まれたあと、突然、洗濯物が増えた。新生児はバスタオルやらなにやらあるから、当然といえば当然なのかもしれないけれど「こんなに小さな人間なのに、ほぼ倍にな…

下妻みどり
10か月前
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全員、息子。

 息子が上京して、ひと月半が過ぎた。息子は洋服にうるさい人で、東京に行ったらたくさんバイトして、好きな服を買うらしい。大量の服を「もう着らん」と置いていった。ダ…

下妻みどり
10か月前
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分知町のドミンゴ

 1614年の禁教令では、宣教師の国外追放が命じられた。しかし1618年、とっくの昔にいないはずの宣教師とそれを匿う宿主に対して「捕まえたら生きたまま焼き殺す」というお…

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「あと4年分」に対面

 長崎に滞在していたスペイン商人アビラ・ヒロンによる『日本王国記』は「大航海時代叢書」の11巻に、ルイス・フロイスの『日欧文化比較』とともに収められている。二十…

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「11月18日を歩いた、その後」

 1619年11月18日に、長崎の西坂で殉教した5人の足取りをたどったZINE『11月18日を歩く』は、「本屋ウニとスカッシュ」「MAKIJAKU製作室」によるZINEイベント「UNI✖️MAKI…

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ボソボソと400年前

 毎日がどんどん過ぎていく。夏休み、お盆、お盆明けの連休など。  お盆はさておき、みんな、自分が休みだからといって、私も自動的に休みだと思うのやめてほしいなー。 …

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いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第10回 ひなまつり、浜遊び

季節感を深呼吸! いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第10回 ひなまつり、浜遊び いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」…

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いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第9回 節分 ~初午、上元、唐館龍踊り~

季節感を深呼吸! いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第9回 節分 ~初午、上元、唐館龍踊り~ いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で…

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いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第8回 お正月

季節感を深呼吸! いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第8回 お正月 ~門松、子供の遊び、芸能民、絵踏み~ いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸…

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「長崎歳時記手帖」 第7回 年迎え

季節感を深呼吸! いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第7回 年迎え いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふた…

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「長崎歳時記手帖」 第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~

季節感を深呼吸! いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~ いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の…

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庭の髪を切る

庭の髪を切る

 庭用の手袋は、ワークマンの「棘を通さない性能最強」のやつだ。これだと、大抵の草や枝は手で刈れる。手袋をして庭に出ると、ついつい草をむしってしまい、そこからさらなる作業に発展し、長い時間が溶けることも多々あるので、庭の空気を吸いたいだけの時には、手袋をしないで出る。
 うちの庭はけっこうワイルドなので、素手ではなにも触らない。暖かい〜暑い時期は、ほんのちょっとの時間でもネット付き帽子やアームカバー

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ラザニアとコッコデショ

ラザニアとコッコデショ

 長崎の「長い岬」の先端、もとの県庁があった近くに、イタリア料理屋さんがある。前に行ったのはもう何年前だったか忘れたくらいだったが、ある日のお昼「いま行くべきはそこしかない!」と入った。ラザニアのランチセットを頼む。濃いめの味の茶色いものを想像していたら、トマトスープみたいなのがやってきた。ふわん、とろん、としていて、優しい味で、ゆで卵の刻んだのも見える。その時は心身ともに疲れていたのだが、一口食

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みんな飛び立って

みんな飛び立って

年末。
今年は、冬にユキヒロさんが死に、春に坂本さんが死に、夏に息子が転校&上京し、秋にはるちゃん(猫。15歳)が死んだ。
元テクノ少女とかあちゃん、過去と現在の自分それぞれと分かちがたく存在していたものが、一気にいなくなった。
さすがにはるちゃんが死んだあとは、どことなく抜け殻感に包まれてしまい、力の入らない日々が続いた。
そして最近、完全に滞っていた数年来の原稿が、少しずつ書けはじめている。

定点観測

定点観測

 年に一度、珈琲人町さん主催の、沖縄のアダコーヒーを飲む会へ行く。
 もう11年目らしいが、たぶん、皆勤賞。もしかしたら一回休みもあったか?くらい。別にコーヒーマニアではないんだけど「目の前の風土から生まれるものを大切にしながらなにかを作り、人に手渡す」ということを、アダファームの徳田夫妻と、人町さんと梨沙さんのその時々のありようを通して、私自身、年に一度定点観測し、点検し、肝に銘じる時間にしてい

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薄皮

薄皮

 遠い空の下の息子が18になり、クレカを作ったというので、さっそく?だの、気をつけて、だの、つい小言を発出したら、こっちに来てからしっかりやってる、と返された。たしかにそうだ。バイトのこととか、とにかく、なにを聞いてもしっかりした答えが返ってきて、しかも有言実行してる。私より、はるかにしっかりしてる。
 家にいたころと、目に見えるところを単純に比較したら、ぜんぜん違う人みたいだけど、それは目に見え

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倍増と半減

倍増と半減

 息子が生まれたあと、突然、洗濯物が増えた。新生児はバスタオルやらなにやらあるから、当然といえば当然なのかもしれないけれど「こんなに小さな人間なのに、ほぼ倍になった!」という驚きは大きかった。
 それから17年と10ヶ月、息子は家を出た。すると、洗濯物が半分になった。半分以下と言ってもいい。娘もいるのに半分以下とはどういうことだと思ったけれど、毎日洗濯するのに洗濯機はスカスカで、いつも無理やり洗う

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全員、息子。

全員、息子。

 息子が上京して、ひと月半が過ぎた。息子は洋服にうるさい人で、東京に行ったらたくさんバイトして、好きな服を買うらしい。大量の服を「もう着らん」と置いていった。ダボッとしたトレーナーとかパーカーとか。
 昨日、ふと見ると、夫婦ふたりと娘、3人ともが息子の服を部屋着にしていた。

分知町のドミンゴ

分知町のドミンゴ

 1614年の禁教令では、宣教師の国外追放が命じられた。しかし1618年、とっくの昔にいないはずの宣教師とそれを匿う宿主に対して「捕まえたら生きたまま焼き殺す」というお達しが出た。つまり彼らは歴然として存在していたのである。アビラ・ヒロンの『日本王国記』の(現存する)最終章「奉行・権六が首都へ出発するまでにこの市〔長崎〕で起こったこと」には、まさに宣教師と宿主が次々と捕まっていく様子が記されている

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「あと4年分」に対面

「あと4年分」に対面

 長崎に滞在していたスペイン商人アビラ・ヒロンによる『日本王国記』は「大航海時代叢書」の11巻に、ルイス・フロイスの『日欧文化比較』とともに収められている。二十六聖人の殉教や禁教時の聖行列などの「現地レポート」が丹念に書かれていて、歴史的なできごとが生々しく迫ってくる。
 しかし、収録されているのは1615年の3月の分までで、本当ならあと4年分が存在する。「11月18日を歩く」を作った段階では、そ

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「11月18日を歩いた、その後」

「11月18日を歩いた、その後」

 1619年11月18日に、長崎の西坂で殉教した5人の足取りをたどったZINE『11月18日を歩く』は、「本屋ウニとスカッシュ」「MAKIJAKU製作室」によるZINEイベント「UNI✖️MAKI✖️ZINE 2022」で、たくさんのかたが手に取ってくださった。『長崎手帖をよむ』に続く完全自家プリント手製本で、しかも『よむ』に使っている11号針ホチキスはまったく歯が立たず、事務クリップによる製本と

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ボソボソと400年前

ボソボソと400年前

 毎日がどんどん過ぎていく。夏休み、お盆、お盆明けの連休など。
 お盆はさておき、みんな、自分が休みだからといって、私も自動的に休みだと思うのやめてほしいなー。
 自宅就労母ちゃんの悲哀である。
 このnoteの「長崎歳時記」もぜんぜん更新できないままで心苦しいが、体がひとつで、しかもその体が五十路をのぼるのに苦労していて、夏の暑さと湿気にも太刀打ちできず、すぐバテる。仕事もあんまりなくて、貯金の

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いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第10回 ひなまつり、浜遊び

いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第10回 ひなまつり、浜遊び

季節感を深呼吸!
いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第10回 ひなまつり、浜遊び いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、ひな祭りとそれにまつわるお話、そして浜遊びなどの風景を見ていきましょう。

 「絵」は、町絵師で出島出入り絵師の川原慶賀が描いた「長崎歳時記」のシリーズで、原則として

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いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第9回 節分 ~初午、上元、唐館龍踊り~

いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第9回 節分 ~初午、上元、唐館龍踊り~

季節感を深呼吸!
いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第9回 節分 ~初午、上元、唐館龍踊り~ いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、節分。いまも盛んに行われていますが、江戸時代はどんなふうだったのでしょう?「初午」は、その年初めての午の日のお祭り。「上元」は、旧暦一月十五日の行事で、現

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いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第8回 お正月

いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第8回 お正月

季節感を深呼吸!
いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第8回 お正月 ~門松、子供の遊び、芸能民、絵踏み~ いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、一年の最初にして最大のお祭りごとである、お正月の様子を見ていきましょう。

 「絵」は、町絵師で出島出入り絵師の川原慶賀が描いた「長崎歳時記」

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「長崎歳時記手帖」

第7回 年迎え

「長崎歳時記手帖」 第7回 年迎え

季節感を深呼吸!
いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第7回 年迎え いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、出島の商館長のメイラン氏「十二月にはただ来るべき新年の準備だけがある」と言った通り、まだまだ終わらない年越し準備の続きと、大晦日の様子を見ていきましょう。

 「絵」は、町絵師で出

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「長崎歳時記手帖」

第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~

「長崎歳時記手帖」 第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~

季節感を深呼吸!
いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~ いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、年越し準備の様子と、鏡餅や幸木(さいわいぎ)などの飾りものを見ていきます。

 「絵」は、町絵師で出島出入り絵師の川原慶賀が描いた「長崎歳時記」のシ

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