ミノルキ

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記事一覧

異国の地に暮らす人への見方の変化

 2022年5月上旬、東京都内にある自宅最寄り駅前で、若い東南アジア系の女性に呼び止められた。女性は名刺大のカードを差し出し、私に対して読むように一瞥した。カー…

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2年前
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ノートパソコンの新調

 大学院留学に備えてノートパソコンを新調した。これまで私用で使っていたタブレット一体型のパソコンだけで1年間の留学生活を乗り切るのは心許なかったからだ。パソコン…

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2年前
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良かったことだけ思い出す(新聞記者からの転職)

 この1年程続けているオンライン英会話サービスでは、仕事に関する話題がしばしば持ち上がる。「あなたの仕事は何ですか?」「なぜ、その仕事を選んだのですか?」。こん…

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3年前
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友人の死とSNS -細い糸を自ら揺らす-

 2021年5月3日、大学時代の友人がまた1人この世を去った。昨年7月末に会社の胃カメラ検診で胃癌が発覚。ステージ4、5年生存率20%との診断で、抗がん剤治療を続…

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3年前

老いへの苛立ちについて

 人間誰しも避けて通れないのが老いである。子どもから大人の身体へと成長し、やがてできないことが増えていく。世の中に溢れる<老いを楽しもう>というキャッチフレーズを…

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3年前
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ポテトチップス九州しょうゆ味と親の愛

 2021年3月某日、東京都内にある近所のスーパーに立ち寄ると、入り口前にポテトチップス九州しょうゆ味が平積みにされていた。長崎出身の僕にとって親しみのある味。…

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3年前
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自殺について考えたこと

 その人の訃報を知ったのは、旅先の空港に降り立った直後だった。2020年9月27日、俳優の竹内結子さんが自ら命を絶った。40歳だった。幼い頃から多くの作品を見てき…

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3年前
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新聞記者から転職した理由

 転職の決め手は、どうしようもない閉塞感だった。大学を卒業して7年近く続けた新聞記者の仕事に僕はやりがいを感じていたし、書くことを通して「生きている」という手応…

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3年前
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異国の地に暮らす人への見方の変化

異国の地に暮らす人への見方の変化

 2022年5月上旬、東京都内にある自宅最寄り駅前で、若い東南アジア系の女性に呼び止められた。女性は名刺大のカードを差し出し、私に対して読むように一瞥した。カードにはこう書かれていた。

 <わたしは留学生です。お金なくてこまっています。おかしを買ってもらえませんか>。両腕からぶら下げた白い紙袋には、パック詰めされたチョコレートが収まっていた。知人との約束の時間が迫っていた私は「急いでいるから」と

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ノートパソコンの新調

ノートパソコンの新調

 大学院留学に備えてノートパソコンを新調した。これまで私用で使っていたタブレット一体型のパソコンだけで1年間の留学生活を乗り切るのは心許なかったからだ。パソコンは男一匹の暮らしの中では高額の部類に入る出費。事前に調べ、店頭で機器を触って購入に至る過程では多くの学びがあるものだ。
 2022年5月、新型コロナウイルス禍が世界を襲ってから3度目となるゴールデンウィーク(GW)では、3回のワクチン接種が

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良かったことだけ思い出す(新聞記者からの転職)

良かったことだけ思い出す(新聞記者からの転職)

 この1年程続けているオンライン英会話サービスでは、仕事に関する話題がしばしば持ち上がる。「あなたの仕事は何ですか?」「なぜ、その仕事を選んだのですか?」。こんな簡単な問いにでさえ、最近の僕は答えに窮するようになっている。
 大学卒業後に7年弱続けた全国紙の記者を辞めたのは2020年9月末。記者の仕事は大好きだったし、会社の居心地も悪くなかった。ただ、自分の内側に広がる閉塞感を打破したくて、関心の

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友人の死とSNS -細い糸を自ら揺らす-

友人の死とSNS -細い糸を自ら揺らす-

 2021年5月3日、大学時代の友人がまた1人この世を去った。昨年7月末に会社の胃カメラ検診で胃癌が発覚。ステージ4、5年生存率20%との診断で、抗がん剤治療を続けていた。享年30。若すぎる死だった。
 彼とは大学時代に語学のクラスが一緒だった。たくさん言葉を交わした訳じゃない。でも、彼は佐賀出身、僕は長崎出身で、同じ九州から大学進学を機に上京したこともあり、互いに不思議な親近感を持っていたように

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老いへの苛立ちについて

 人間誰しも避けて通れないのが老いである。子どもから大人の身体へと成長し、やがてできないことが増えていく。世の中に溢れる<老いを楽しもう>というキャッチフレーズを寛容さを装った仮面で受け入れる素振りを見せる一方、ある種の苛立ちが僕自身の中に渦巻いてしまう。自分のことが嫌になってしまった体験を記しておきたい。
 2021年4月上旬、僕はカフェのテーブル席でブルーマウンテンをすすりながら、カウンター席

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ポテトチップス九州しょうゆ味と親の愛

 2021年3月某日、東京都内にある近所のスーパーに立ち寄ると、入り口前にポテトチップス九州しょうゆ味が平積みにされていた。長崎出身の僕にとって親しみのある味。「東京でも買えるんだ」と思わず手に取ったものの、結局買わなかった。実家からの仕送りにいつも入っているからだ。大学進学を機に故郷を離れて10年。遠く離れた家族について考えることは日に日に増えている。
 段ボールで届く仕送りは日々の生活の楽しみ

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自殺について考えたこと

 その人の訃報を知ったのは、旅先の空港に降り立った直後だった。2020年9月27日、俳優の竹内結子さんが自ら命を絶った。40歳だった。幼い頃から多くの作品を見てきて「好きな芸能人は竹内結子」と即答してきたから、スマートフォンが伝える速報に言葉を失った。空港の駐車場からレンタカーを走らせることがなかなかできなかった。
 「ランチの女王」(02年)や「いま、会いにゆきます」(03年)に、「プライド)

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新聞記者から転職した理由

 転職の決め手は、どうしようもない閉塞感だった。大学を卒業して7年近く続けた新聞記者の仕事に僕はやりがいを感じていたし、書くことを通して「生きている」という手応えを実感することもできた。でも、この世界から一度離れてみたくなった。転職して間もなく半年。今の気持ちを綴っておきたい。
 きっかけは些細な会話だった。「実は公務員試験を受けてみようと思うんだよね」。2020年5月、勤めている全国紙で入社年次

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