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【短編小説】ゆりかご
※第21回女による女のためのR-18文学賞
一次予選通過作品
原稿用紙30枚程度の短編です。
眼下には闇の海が広がっていた。
海の底は見えず、漆黒がどこまで世界を浸しているのか、想像するのも億劫になるほどだった。辺りには物音ひとつない。唯一存在を主張しているのは、頬に触れる夜風だけだった。目には見えずともその冷たさだけが、ここを辛うじて現実らしく象っていた。
思考は、もうずっと前から放
【掌編小説】待ち人来ず
※今から20年ほど前、学生時代に書いた小説です。
拙い作品ではありますが、自分では好きな作品ですので掲載させていただきます。
今日は、千鳥ヶ淵まで桜を見に行きます。
以前からそこの桜がとても綺麗だということは、人づてにに聞き及んでいました。桜は、貴方が一番好きだった花です。その事もあって、いつかは見たいと思っておりましたが、何せ出不精のこの私、ずっと機会を逃して来ました。けれど今年は、折角九