記事一覧
ディズニー新作『ストレンジ・ワールド』が描く”奇妙”なユートピア
ディズニーのオリジナルアニメ最新作『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』。たしかワカンダフォーエバーと同時期の公開で、映画館で「これディズニーの新作か…」と横目に見た記憶がある。
宣伝もほとんどされていない印象だったが、実際に興行収入もふるわなかったようである。
その要因として言及されがちなのは、本作における過度なポリコレ配慮演出だ。主人公の妻が黒人とか、メインチームのメンバーが多国籍とか、
なぜ、君の名前で僕を呼ぶのか-『君の名前で僕を呼んで』感想-
本文章はひたすらこの問いについて考えることに終始する。
「なぜ、君の名前で僕を呼ぶのか」
本作は人それぞれの多様な解釈を許す余地がある。だから、私はここで私なりの腑に落ちた解釈を書き連ねる。
まずはじめに、本作に登場するエリオとオリヴァーというカップルは、同性カップルではあるけれども、彼らの振る舞いや感情表現は、決して同性愛者でなければ共感できないものではない。
そこで描かれるのは普遍的な恋愛
孤独と性欲を抱きしめる-映画『シェイプ・オブ・ウォーター』感想-
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』を観た。
半魚人のような怪獣と声の出ない女性が恋に落ちる、ラブストーリーだ。
途中、無性に好きな人のことが思い出され、作品を観ながらも、どこかでその人との逢瀬が脳内再生されていた。
それはなぜだろう。
おそらく、私も本作の登場人物たちと同じく、寂しいからだ。
冒頭、イライザの仕度風景から映画は始まる。
バスタブに湯を溜め、卵を沸いたお湯に入れる。
茹で上がるま
出会える時代に描かれる出会えない物語―映画『君の名は。』評草稿―
『秒速5センチメートル(以下『秒速』)』(2007)を観た時、こんなに会えない彼らもきっとそのうちFacebookで、友達かもにレコメンドされるんだろうなと思った。
2016年に公開された『君の名は。』は、そのようなSNS時代だからこそ生まれるツッコミを、名前を忘れてしまうという設定によって回避している。
名前がわからなければ検索しようがないし、突拍子もない入れ替わりで出会っているから、レコ
私とあなたと私の欠点の話――映画『ファインディング・ドリー』評――
二〇一六年に公開され話題になった映画の一つに、森達也監督の『FAKE』がある。かつてゴーストライター疑惑で世間を騒がせた佐村河内守氏を追ったドキュメンタリーだが、本当に佐村河内守は作曲ができるのか、耳が聴こえるのか、という多くの人が感心を寄せる部分に対して、本作では答えは明かされない。本作があぶり出すのは、障害かそうでないか白黒はっきり区別したがる、現代社会の不寛容さである。
佐村河内氏は障害