眠れぬ森は真夜中

眠れぬ森はいつも真夜中
朝はこない
この森に住むお姫様は
その暗闇のおかげで
自分の心の暗闇に
気づかずにすみました
選ばれし者が
海に光を集めに出かけます
選ばれし者だけが
光を見つけられるからです
森には月に一度
光の日があります
皆が平等に
光の中生きていきます
お城に飾られる光に
映し出されてしまう心は
お姫様の瞳を凍らせます
次の月には哀しみを知り
次の次の月には
涙を流しました
何不自由なく暮らしてきたお姫様に
それほどまでの苦しみがあるとは
誰もが信じられませんでした
それは記憶の哀しみだったからです
お姫様も思い出せない記憶は
光にしか映らないのです
眠れぬ森に光はいらない
今日も人は夢の花を摘みに
旅に出ます
お城の花瓶に飾る花を探しに
お城に小さな頃ひとりきりで
残されたというお姫様は
残された理由を知りませんでした
気づいた時には既に
ひとりだったのだから
孤独を哀しむこともない程
お姫様の孤独は
あたりまえの暮らしだったのでしょう
あれから毎月
光の日がくるたび
憂鬱なお姫様
お姫様の眠れぬ夜に
妖精が綺麗な色の葉を
並べた絨毯を作りました
お姫様はその絨毯の上で
夢の世界を描きます

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