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記事一覧
#読書感想文 益田ミリ(2023)『ツユクサナツコの一生』
益田ミリの『ツユクサナツコの一生』を読んだ。新潮社から2023年6月に発売された単行本である。
どこかで話題になっていたし、(ネットやSNSを何の気なしに見ていて出会う本は情報源を忘れてしまうことが多い。まずいと思っている)それにわたしは益田ミリさんが以前から好きだったので、軽い気持ちで読め始めた。
すると、一読して号泣。自分が泣いた理由がよくわからなくて、もう一度読んでみたが、また号泣してし
#読書感想文 猿渡由紀(2021)『ウディ・アレン追放』
猿渡由紀さんの『ウディ・アレン追放』を読んだ。2021年6月に文藝春秋より出版された本である。
最近、ウディ・アレンの作品がAmazon Primeで再び見られるようになってきた。2024年1月19日には最新作『サン・セバスチャンへ、ようこそ』が劇場公開される。
ウディ・アレンは、恋人であったミア・ファローの養女であるディランに性的虐待をしたとして、1992年に裁判が起こされ、その当時は無罪に
#読書感想文 岸本聡子(2022)『私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く』
東京都の杉並区長である岸本聡子の『私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く』 を読んだ。
2022年7月に晶文社から出された単行本である。
本書では、岸本聡子が政治家になる前の活動家時代のことを知ることができる。彼女は1974年生まれの、いわゆるロスジェネ。彼女の5人きょうだいはみなロスジェネで、正社員になれたのは弟さん一人だけだと言う(p.72)。何とも過酷だが
#読書感想文 三谷はるよ(2023)『ACEサバイバー 子ども期の逆境に苦しむ人々』
三谷はるよの『ACEサバイバー 子ども期の逆境に苦しむ人々』 (ちくま新書 1728)を読んだ。2023年5月に出版された本である。
ACEとはAdverse Childhood Experienceの略で、子ども期の逆境体験を指す。それが原因で、その後の人生でさまざまな困難に直面していることが、アメリカの研究では明らかになっているのだという。
本書の目次は以下の通り。
正直なところ、読むの
#読書感想文 角田光代(2008)『おやすみ、こわい夢を見ないように』
角田光代の『おやすみ、こわい夢を見ないように』 (新潮文庫)を読んだ。
角田光代の文章は、あまりに読みやすくて、毎回恐ろしい。一度もひっかからず、ページをどんどん繰ることができる。誰もが知っている平易な言葉を使って、誰も知らない描写に仕上げて見せることができる傑物なのだが、それをひけらかしたりはせずに、こっそりやってのけている。彼女の小説を読むたびに、その手練手管と技巧にわたしはおののく。
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