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2024

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ついさっきまで喫茶店で一緒にお茶をしていた友達が吸っていたタバコの匂いが染み付いている。

タバコの匂いは嫌いだった。
タバコを吸う人もまた、嫌いだった。

なんとなく、嫌悪があった。

でも、今日のタバコの香りは案外嫌いじゃなかった。
例外だった。
店内の風に乗って泳ぐ煙も、
風向きが変わって自分に向かってくる煙も、
今日は、嫌いになれなかった。
むしろ、少しだけ心地いい気がした。

私には、

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もう思い出せない

もう思い出せない

あの頃の感覚や感情をもう思い出せずにいる。

それだけ時が流れてしまった、ということなのだろうか。
それとも、それだけ自分も変化した、ということなのだろうか。

”あの時” と呼ばれるモノは、いつも過去のことである。

確実に残っているのは、その時の「記憶と記録」である。
形として唯一残る方法なのかもしれないね。

”記録” として残っている写真を遡っても、
思い出せるのはその時の記憶だけだった。

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人の視界に写りたくない

人の視界に写りたくない

人の視界に映りたくないから下を向く。
ひたすら下を向いた。
そうして自分の視界を遮った。
少し足早で、急ぐ
別に急ぎの予定なんてないのに。

人混みがより一層辛い時が、私にはあった。
そういう時はいつもより下を向いた。
人の視界に写りたくなかった。
帽子があるなら深く被りたかった。
メガネがあるならメガネをつけたかった。
サングラスでも良かった。
マスクがあるならマスクをつけたかった。
できるだけ

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アーティストであるための宿命

アーティストであるための宿命

無論、”アーティスト”であり続けるためには、作品を作り続けなければならない。
そして、それが宿命である。

世の中には、”アーティスト”という括りに属している人は、何人存在しているのだろうか。

また、それを生業としている人は、何人いるのだろうか。

私は、写真を撮る人間である。
しかし、一生涯写真を撮り続けるつもりはないのだ。
とはいうものの、写真から身を引くタイミングを伺っているのかもしれない

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