まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染…

まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』ほか。

記事一覧

911に島根原発のテロ対策が合格。飛行機が突っ込んでも1F事故の100分の1の放射線物質放出で済むのか?

9月11日の原子力規制委員会で議題となった中国電力の島根原発の特定重大事故対処施設(つまりテロ対策施設)について、18日の記者会見で山中委員長に質問した(こちらの写…

無力感に打ちのめされている場合ではない。 #流域治水

岩波書店の「世界」2024年8月号で書いたことを話をして欲しいと「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」に頼まれた。大幅に内容を加えて作ったPPTの画像を貼り…

2号機燃料デブリ試験的取り出し リスク抽出不足では? #福島第一原発

【タイトル画像に「累積4万9000グレイ/h」は「累積4万9000グレイ」の間違えです。訂正してお詫びします。文中、文末に添付したファイルでは訂正済み】 2024年9月26日、福…

1F 燃料デブリの試験的取り出し、失敗か?成功したとしてその意味は?

福島第一原発2号機の燃料デブリの試験的取り出しの2度目の中断はいまだ続いている。苦労して押し込みパイプの順番を入れ替えて、押し込んだものの、いざ!となったらカメ…

2度目の中断:2号機燃料デブリの試験的取り出し。優先する必要があるのか

2024年8月22日に始まった福島第一原発(1F)2号機の燃料デブリの試験的取り出しは、暗礁に乗り上げている。 これまでのあらすじ 1度目の暗礁は、始まった当日(8月22…

福島第一原発事故による汚染土の最終処分は「素掘り」。「再生利用」は呼び名を変えるかも?

福島県内外にある「汚染土」の 「最終処分」と「再生利用」の 基準案について環境省が 専門家の意見を聞く会合が2024年9月17日に開催された。 福島県「内」「外」にある…

集中管理中の放射能汚染土の行方(後半)

こちらからの続き。話した内容に多少、補足しながら記録しておく。 汚染土の再生利用が安全基準に合致? 2025度以降、全国での汚染土(8,000Bq/kg以下)の再生利用を本格…

集中管理中の放射能汚染土の行方

2024年9月13日の集会で中間貯蔵施設(福島県双葉町・大熊町)に運び入れられた東京ドーム11杯分の除去土壌を、今、環境省がどうしようとしているのかについて話をした。こ…

安らかに眠りたまえ #敦賀原発2号機 #パブコメ 

基準不適合となった「敦賀原発2号機」に関するパブコメ  福島第一原発事故を踏まえて設立された原子力規制委員会が、敦賀原発2号機は新規制基準に「適合しているとは…

実は事故原発だけではない「廃炉」の不明瞭さ

今日、一番伝えたいことは、タイトルの通り。忙しい方は目次から、「事故原発だけではない「廃止措置」の不明瞭さ」に飛んでください。 燃料デブリ試験的取り出し再開、着…

除去土壌:IAEA報告(環境省訳)と問題点

「あれからどうなった??放射能汚染土―反対運動の成果と経過報告」(主催:新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)という集会で「放射能汚染土、環境省の動きは?…

鬼怒川水害の2022年地裁判決について

今日は、2015年に起きた鬼怒川水害(国による正式名称は「平成27年9月関東・東北豪雨」)を巡る国家賠償訴訟の控訴審、第1回が東京高裁で行われる。 水戸地方裁判所の判…

臨時会見 #福島第一原発2号機燃料デブリ

2024年9月5日11時から、「2号機燃料デブリ試験的取り出し作業中断に関する 原因と対策」(2024年9月5日)の臨時会見があった。3時間。 夕方の定例会見で不明点を確認後、…

500kgのパイプを人手で回転させる設計  #福島第一原発2号機燃料デブリ

福島第一原発2号機の3gデブリ取り出し失敗に関する疑問。8月22日(既報)に得られなかった答えを(26日と29日の東電会見に出席できず)、9月2日会見で得ようと出向いた(…

日本原電の東海第二と敦賀原発は今週が山場

「私の夏ボケ質問は冒頭でもう一つあったのだが、これは次回以降にまた書かせていただく」(既報)と書いた件。 そのボケ質問とは、2024年8月21日の原子力規制委員会後の…

福島第一原発30〜40年「終了」の意味と根拠

Level 7でジャーナリストの木野龍逸さんがお話をされるとのことで、参加した。聞いていて、抜けていた情報や頭の整理ができた。 ロードマップは政治的目標 「東京電力の…

911に島根原発のテロ対策が合格。飛行機が突っ込んでも1F事故の100分の1の放射線物質放出で済むのか?

911に島根原発のテロ対策が合格。飛行機が突っ込んでも1F事故の100分の1の放射線物質放出で済むのか?

9月11日の原子力規制委員会で議題となった中国電力の島根原発の特定重大事故対処施設(つまりテロ対策施設)について、18日の記者会見で山中委員長に質問した(こちらの写真キャプションに書いたように11日に質問しそびれたので)。

審査結果には、原発に大型飛行機が突っ込んでも、放射性物質の放出は100TBqを下回ると書かれている。100TBqとは福島第一原発事故の時に放出された量の100分の1だ。なぜ、

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無力感に打ちのめされている場合ではない。 #流域治水

無力感に打ちのめされている場合ではない。 #流域治水

岩波書店の「世界」2024年8月号で書いたことを話をして欲しいと「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」に頼まれた。大幅に内容を加えて作ったPPTの画像を貼り付ける(文末にファイルも)。河川政策に関心が薄い人にも、起きていることの片鱗だけでも伝わると嬉しい。

1 国交省の流域治水

2 国交省の流域治水で何が起きているか

3 まとめ

直後に能登半島豪雨

9月19日にこの話をした後

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2号機燃料デブリ試験的取り出し リスク抽出不足では? #福島第一原発

2号機燃料デブリ試験的取り出し リスク抽出不足では? #福島第一原発

【タイトル画像に「累積4万9000グレイ/h」は「累積4万9000グレイ」の間違えです。訂正してお詫びします。文中、文末に添付したファイルでは訂正済み】

2024年9月26日、福島第一原発事故処理の中長期ロードマップ会見(動画)で、2号機燃料デブリ試験的取り出し(以後、取り出し)のその後と今後(資料)についても説明があった。

26日、カメラが映らなくなった東電による推定原因

3gの燃料デブリ

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1F 燃料デブリの試験的取り出し、失敗か?成功したとしてその意味は?

1F 燃料デブリの試験的取り出し、失敗か?成功したとしてその意味は?

福島第一原発2号機の燃料デブリの試験的取り出しの2度目の中断はいまだ続いている。苦労して押し込みパイプの順番を入れ替えて、押し込んだものの、いざ!となったらカメラが映らず、取り出し作業ができなくなった。9月23日にテレスコ装置の引き戻しを始め、早ければ25日(か26日)に、格納容器内の高い線量から離れた場所(エンクロージャー)まで引き戻しを行って、エンクロージャー内のカメラで、映らなくなったカメラ

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2度目の中断:2号機燃料デブリの試験的取り出し。優先する必要があるのか

2度目の中断:2号機燃料デブリの試験的取り出し。優先する必要があるのか

2024年8月22日に始まった福島第一原発(1F)2号機の燃料デブリの試験的取り出しは、暗礁に乗り上げている。

これまでのあらすじ

1度目の暗礁は、始まった当日(8月22日)。デブリをつかむグリッパと遠隔操作に必要なカメラが先端に付いた釣竿状アームを押し込むパイプの組み立て順が間違っていた。(既報「一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗」)。

間違っ

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福島第一原発事故による汚染土の最終処分は「素掘り」。「再生利用」は呼び名を変えるかも?

福島第一原発事故による汚染土の最終処分は「素掘り」。「再生利用」は呼び名を変えるかも?

福島県内外にある「汚染土」の 「最終処分」と「再生利用」の 基準案について環境省が 専門家の意見を聞く会合が2024年9月17日に開催された。

福島県「内」「外」にある「汚染土」

ここで言う汚染土とは、福島第一原発事故で放射性物質が放出され、土壌に沈着、その表土を除去したもので、環境省は「除去土壌」と呼んでいる。

現在、それは福島県内の中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)などに1300万m2、福島

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集中管理中の放射能汚染土の行方(後半)

集中管理中の放射能汚染土の行方(後半)

こちらからの続き。話した内容に多少、補足しながら記録しておく。

汚染土の再生利用が安全基準に合致?

2025度以降、全国での汚染土(8,000Bq/kg以下)の再生利用を本格化したいと考えている環境省は、9月10日、国際原子力機関(IAEA)の報告書を受け取った。

3回の会合(視察先は前半で紹介した飯舘村長泥地区)を踏まえての報告書だ。

環境省が仮訳したプレスリリースには、同報告書には、1

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集中管理中の放射能汚染土の行方

集中管理中の放射能汚染土の行方

2024年9月13日の集会で中間貯蔵施設(福島県双葉町・大熊町)に運び入れられた東京ドーム11杯分の除去土壌を、今、環境省がどうしようとしているのかについて話をした。こちらでも共有しておきたい。長いのでまず前半。

原発事故→避難させずに除染

2011年3月11日の東日本大震災により、福島第一原発(1F)1〜3号機がメルトダウン、メルトスルー、そして、12日 1号機が爆発、14日 3号機が爆発、

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安らかに眠りたまえ #敦賀原発2号機 #パブコメ 

安らかに眠りたまえ #敦賀原発2号機 #パブコメ 


基準不適合となった「敦賀原発2号機」に関するパブコメ 

福島第一原発事故を踏まえて設立された原子力規制委員会が、敦賀原発2号機は新規制基準に「適合しているとは認められない」とした審査書(案)について、パブリックコメントを募集している。

日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(案)に対する科学的・技術的意見の募集について 締

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実は事故原発だけではない「廃炉」の不明瞭さ

実は事故原発だけではない「廃炉」の不明瞭さ

今日、一番伝えたいことは、タイトルの通り。忙しい方は目次から、「事故原発だけではない「廃止措置」の不明瞭さ」に飛んでください。

燃料デブリ試験的取り出し再開、着手

東京電力は9月9日(月)、中断した福島第一原発2号機の燃料デブリ試験的取り出しについて「明日(10日)再開する」と発表した。土日(7〜8日)に間違っていた「押し込みパイプ」の順番を入れ替えたという。

9月10日、「テレスコ式装置の

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除去土壌:IAEA報告(環境省訳)と問題点

除去土壌:IAEA報告(環境省訳)と問題点

「あれからどうなった??放射能汚染土―反対運動の成果と経過報告」(主催:新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)という集会で「放射能汚染土、環境省の動きは?」ということについて30分でコメントして欲しいと頼まれた。2024年9月13(金)夕方、新宿で開催される。

先日、準備してPPTを既に送っておいたところ、そこに「予測」として書き込んだ国際原子力機関(IAEA)の報告書が昨日(9月10日

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鬼怒川水害の2022年地裁判決について

鬼怒川水害の2022年地裁判決について

今日は、2015年に起きた鬼怒川水害(国による正式名称は「平成27年9月関東・東北豪雨」)を巡る国家賠償訴訟の控訴審、第1回が東京高裁で行われる。

水戸地方裁判所の判決は2022年。この判決に、原告と被告の双方が控訴した。丸2年ぶりに第1回がようやく開かれることになった。

その年、「現代の理論 2022秋号」*(NPO現代の理論・社会フォーラム 編)に依頼され、「画期的な鬼怒川大水害訴訟判決

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臨時会見 #福島第一原発2号機燃料デブリ

臨時会見 #福島第一原発2号機燃料デブリ

2024年9月5日11時から、「2号機燃料デブリ試験的取り出し作業中断に関する 原因と対策」(2024年9月5日)の臨時会見があった。3時間。

夕方の定例会見で不明点を確認後、2度以上加筆(9月5日18時56分)。東電資料から図なども加えた(9月6日9時半頃)。

0. 会見開始後3時間目に明らかになった三菱重工の虚偽・隠蔽

小野明・福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントが退席後、共同通信記

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500kgのパイプを人手で回転させる設計  #福島第一原発2号機燃料デブリ

500kgのパイプを人手で回転させる設計  #福島第一原発2号機燃料デブリ

福島第一原発2号機の3gデブリ取り出し失敗に関する疑問。8月22日(既報)に得られなかった答えを(26日と29日の東電会見に出席できず)、9月2日会見で得ようと出向いた(動画いずれリンク切れする)。

タイトルの内容についてだけ知りたい方は、目次から「500kgの押し込みパイプを人手で回転?」に飛んでください。

大臣への説明「延期」の理由を言わない東電

2日午前、東電社長が経産大臣に調査結果を

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日本原電の東海第二と敦賀原発は今週が山場

日本原電の東海第二と敦賀原発は今週が山場

「私の夏ボケ質問は冒頭でもう一つあったのだが、これは次回以降にまた書かせていただく」(既報)と書いた件。

そのボケ質問とは、2024年8月21日の原子力規制委員会後の定例会見で、日本原電で同時進行している東海第二原発の防潮堤(既報)と、敦賀原発の問題(既報)の2つを混同ししてしまったものだ。

訂正 その前に

ここでお詫び・訂正させていただくが、その前に2事案の現状は以下の通り。

日本原電「

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福島第一原発30〜40年「終了」の意味と根拠

福島第一原発30〜40年「終了」の意味と根拠

Level 7でジャーナリストの木野龍逸さんがお話をされるとのことで、参加した。聞いていて、抜けていた情報や頭の整理ができた。

ロードマップは政治的目標

「東京電力の中長期ロードマップ」と言ってしまうが、正式名称は「東京電力ホールディングス(株) 福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以後、「ロードマップ」)であり、作り手は政府の「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」(裏方

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