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福島第一原発30〜40年「終了」の意味と根拠

Level 7でジャーナリストの木野龍逸さんがお話をされるとのことで、参加した。聞いていて、抜けていた情報や頭の整理ができた。

ロードマップは政治的目標

東京電力の中長期ロードマップ」と言ってしまうが、正式名称は「東京電力ホールディングス(株) 福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以後、「ロードマップ」)であり、作り手は政府の「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」(裏方は経産省)だ。

そこに書かれた「廃止措置終了まで」「30〜40年後」ロードマップp12)は、あくまで「社会的政治的な目標」に過ぎないのではないかと木野さんは言う。

私自身、経産省の汚染水担当者に「30〜40年で廃炉ができると思っているのか?」と、海洋放出の話が持ち上がった頃に聞いた際、彼は「30〜40年は計画ではなく目標」だと述べた。当時、ギョッとしたが、だんだんと、最初から達成できないと見越してのあくまで目標なのだということを実感するようになった。

ロードマップ p13

いずれ、この「ロードマップ」は改訂されるから、ここに2019年度版を置いておくことにする。

ロードマップの源

そして、これが「なるほどそうか!」と思った点だが、木野さんは、ロードマップの原型は、原子力委員会の「東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置検討専門部会」で議論されたことではなかったか、と指摘する。

同部会は、2011年7月に設置され、同年8月の第1回の会合で、米国で1979年に過酷事故を起こしたスリーマイル島(TMI)原発事故(メルトスルーはしていない)についても(資料(3))、参考にならないはずが、参考にした。そして、早くも2011年12月に「東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置に関する検討結果について」を発表した。

どんぶり勘定だった

確かに検討結果を見ると「30年以上」という数字が現れる。文脈からは、通常の廃炉工程を、単に倍以上と、どんぶり勘定したに過ぎないことが分かる。

また、燃料デブリを取り出したところが、廃止措置(廃炉)の始まりだと考えたことが分かる。

「このロードマッ プでは使用済燃料プールから燃料体取出し開始までの期間は3年以内、燃料デブリ取出し開始までの期間は 10 年以内を目標とした。
 なお、目標通り燃料デブリ取出しが開始されたとしても、1 号機から3 号機まで号機毎に燃料デブリを取り出し、取出し完了後に廃止措置を開始するとした場合、通常の廃止措置に要する期間は標準工程で 15 年とされていることを考慮すれば、廃止措置がすべて終了するまでは 30 年以上の期間を要するものと推定される。」

2011年12月原子力委員会 東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置検討専門部会
東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置に関する検討結果について」p17

いずれにせよ、木野さんは、福島第一原発の「廃炉」とは何かを定義すべきだと指摘する。

日本原子力学会の廃棄物検討分科会が2020年7月にまとめた報告書「国際標準から見た廃棄物管理」でも、「エンドステート」(最終的な状態)をあらかじめ設定することが国際的にも重要」だとし、福島第一原発で、それが明らかにされていないことを問題視している。

見落としてきたこれらの情報を時間のある時にもう一度、読み直したいと思った。

なお、現在、通販生活のオンラインメディアに「「福島第一原発の海洋放出」を考える」木野さんのインタビューはが掲載されている。
第一弾 海洋放出を30年以上も続けて本当に大丈夫なのだろうか。
第二弾 大量に流される「トリチウム水」に危険性はないのだろうか

それにしても、原子力学会が2020年時点で想定した「フェーズ0:残存燃料及び燃料デブリ取り出しが終了する」に到達するまでに、どれほどの時間がかかるだろうか。

2020 年日本原子力学会福島第一原子力発電所廃炉検討委員会
報告書「国際標準から見た廃棄物管理」 p22 より抜粋

事故処理の終わりの定義

少なくとも、上記の「フェーズ4:サイト利用に必要な準備が終了するまで(廃棄物の管理などを含む)」までが「事故処理」または「廃止措置のエンドステート」であることを法律で「定義」する必要と責任が、現世代にはある。しかし、定義したとしても、今、生きている世代がそれを見届けることはできないのではないか、という気がしている。

【タイトル画像】

Level 7サイトサイト より


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