まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染…

まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』ほか。

最近の記事

原発ゴミの行方

お尻を押さえてトイレを探す原発事業者 捨て場のない原発の使用済み核燃料をなんとかしなければ、もはや原発を稼働させることができない。 そんな段階になって、今、原発事業者はお尻を押さえながら、トイレを探しているような姿を見せている。 知らされずに原発回帰 美味しいものをより多く食べた消費者が暮らす都会ではなく、人里離れた場所へと。そのことは、消費者には大々的に知らされることもなく。それなのに、岸田政権はトイレのない原発回帰策を打ち出している。 東京電力のトイレ 東京

    • 公益通報者の保護:国会が政府と議論すべき

      2024年6月21日、鹿児島地検が、鹿児島県の前生活安全部長を守秘義務(国家公務員法第100条)違反で起訴した。県警の霧島署員が犯したストーカー事件、そして枕崎署員が犯した盗撮事件に関する情報が、結果的に報道機関に漏れたからだ。(参考:読売新聞記事) 2024年7月9日、兵庫県知事によるパワハラなどを公益通報した元西播磨県民局長が懲戒処分されたのち自死された。(参考:朝日新聞記事) どちらも公益通報者に対してあってはならない仕打ちだと思う。3つの点から。 守るべき秘密な

      • 東海第二 防潮堤は「やり直し」

        東海第二原発の防潮堤の不良工事、その後について。 4月に長文を書いたが、6月18日から7月3日にかけて動きがあった。 3月26日、「調査の不足」指摘 先日書いたように、3月26日の審査では原子力規制庁が「調査の不足」を次々と指摘した(以下動画頭出し)。 6月18日、宿題をせずにきた小学生みたいな日本原電 6月18日の審査会合では、その規制庁に指摘に対する回答を事業者「日本原子力発電(以後、日本原電)」が行った。しかし、その回答では「信頼性が十分にできない」と規制庁は再

        • うかうかしているとジャーナリストになっちまう喜び

          リアル社会から一歩引いた形で生きながら、とりあえず「ジャーナリスト」という肩書きで、できる範囲でコツコツ「地味な取材ノート」でアイドリングをし続けてほぼ丸2年。それが長いか短いかはわからないが、人様のメディアでのアウトプットをする機会を与えられるようになった。 前にもリアル社会から一歩引いて、これからどうしようかなと思っているうちに、書く仕事を与えられて「ジャーナリスト」になった。今回は「地味な取材ノート」を続けてきたからだと思うが、この間、読者の皆様から、多くのサポートや

          能登半島地震から学ぶ原発と自治と避難計画

          前回、能登半島へと足を運んだことを書いた。先週は志賀原発の話をして欲しいという話をいただき、「能登半島地震から学ぶ原発と自治と避難計画」と題して、PPTにまとめた。前回とダブるところもあるが、こちらで共有しておこうと思う。 以下が表紙です。「自治がカギ」とは言ってもどうすればいいんだ?という問いが出ました。 【タイトル写真】 珠洲市高屋地区の狼煙漁港。陸側は沈下、海は隆起で漁船が岸壁のクッション(タイヤ)に届かない状態になっていた (「能登半島原発バスツアー629」にて2

          能登半島地震から学ぶ原発と自治と避難計画

          能登半島:奇跡の3運動で原発事故を阻止

          「珠州(すず)原発がなくて良かった」―そこにかつて原発建設計画があったことを知る人は皆、思った。2024年元旦の能登半島地震で道路崩壊、家屋倒壊、集落孤立、海岸隆起、通信断絶、断水、停電、そして、外から救援・救護に向かうことも困難なありさまを見て。 しかし、実は、志賀原発(志賀町)の反対運動があったからこそ、珠洲原発(珠洲市)は阻止できた一面があったと知った。3つの運動とは何か、この旅で見てきたことを簡単に記録しておく。 旅とは「能登半島原発バスツアー629」 「『さよ

          能登半島:奇跡の3運動で原発事故を阻止

          福島第一原発で続く、6900ボルトによる高圧線の火災など

          2024年6月18日、東京電力福島第一原発で、高圧線が損傷する2度目の事件が起きた。 高圧線で火傷事件 4月24日 所内の電源A系が停電。原因は、所内A系の高圧線を引き直すために、コンクリートを剥がす作業を行なっていた作業員が、高圧線(ケーブル)の管路まで貫いてしまったこと。作業員は右頬右腕に「2度熱傷」を受けたが、東電は「感電ではない」と言い張り続けている。A系を電源とする免震重要棟やALPSで処理した汚染水を希釈・放出する設備が停止した(5月3日と5月13日に既報)。

          福島第一原発で続く、6900ボルトによる高圧線の火災など

          原発規制における金属の「累積疲労」

          原発の新規制基準の適合性審査や老朽原発の審査では、基準地震動より小さい地震なら何度揺れても「疲労」は蓄積しないという考え方を取るということが、昨日の取材でわかった(長文注意)。 熱疲労と地震等の振動は足し算?→YES 取材の滑り出しはとても良かった。 確かめたかったのは「新規制基準の適合審査では、累積疲労係数は熱疲労と地震を含む機械的な振動の合計で、1を下回らなければならない」ということだ。 原子力規制庁の原子炉審査部門に聞いたのだが、答えは明解な「YES」だった。

          原発規制における金属の「累積疲労」

          2023年度に海洋放出された1F処理水に含まれた29核種の総量発表

          2024年5月30日、東京電力福島第一原発の事故処理に向けた中長期ロードマップ会見で、海洋放出された「ALSP処理水」に含まれていたトリチウム以外の29核種の総量(2023年度分)が発表された。 実施計画で測定必須の29核種 多核種除去設備(ALPS)は、全核種を完全に取り去ることはできない。そこで、東京電力は、ALPSが処理した水を海に捨てるにあたって、原子力規制委員会が認可した実施計画に従って、29核種が告示濃度比総和1未満となることを確認しなければならない(実施計画

          2023年度に海洋放出された1F処理水に含まれた29核種の総量発表

          そのGX投資はドブに捨てることにならないか? #グリーンウォッシュ

          岸田文雄内閣総理大臣の一存でできたGX実行会議において、国民の参加がないまま、今後10年間で150兆円超の投資が左右される事態が進行しつつある。 GX実行会議が「実行」してきたこと 岸田文雄内閣総理大臣の一存で設置されたGX実行会議が5月13日に開催された。会議は非公開、議事録は後日公開、国民が参加できる機会は用意されていない(GX実行会議運営要領)。構成は以下の通り。 2022年内閣総理大臣決裁から2023年GX推進法成立まで 2022年7月、第1回GX実行会議が開

          そのGX投資はドブに捨てることにならないか? #グリーンウォッシュ

          原発:経年化と地震による「金属疲労」について

          前々回の地味な取材ノートで、「温度差であれ振動であれ、『くり返し応力がかかる』ことで起きるのが金属疲労であるとするならば、地震が起きて繰り返し揺さぶられている原発では、年月が経っていなくても、金属疲労は起きると考えるべきではないか。志賀原発の変圧器は、そのことを教えてくれたのではないか」と書いた。 その点について、2024年6月5日会見で、山中伸介原子力規制委員長に聞いてみた。以下はその要点だ(重要なので全体*を文末につける)。 6月5日 会見速記録(関係部分の要点のみ/

          原発:経年化と地震による「金属疲労」について

          高浜3、4号機の運転期間延長が意味するところ

          高浜原発3、4号機(関西電力)の延命を2024年5月29日、原子力規制委員会は認めた。 1つのサイトに4基の老朽原発 これで、福島第一原発事故後に「原則40年」と規制した運転期間を超える原発が、高浜原発では、1号 49歳、2号 48歳、3号 39歳、4号 38歳と、1つのサイトに4基の老朽原発が集中立地することになる。 全国の原発で運転期間延長が認可された原発はこれで8基。延長申請に対する認可率は「100%」(5月29日会見録)だ。 2025年6月以降は「延長認可」は

          高浜3、4号機の運転期間延長が意味するところ

          金属の「疲労破壊」と「延性破壊」が志賀原発で起きていた/能登半島地震

          2024年5月31日、北陸電力が能登半島地震で志賀原発の変圧器が故障した原因と対策について発表した。オンライン会見の時間に間に合わなかったので、「せめて前日までに知らせてください」と要望する一方、リリースを読んで電話取材した。 令和6年能登半島地震以降の志賀原子力発電所の現況について 2024年5月31日、北陸電力株式会社 北陸電力送配電株式会社 共振による「延性破壊」と「疲労破壊」 1月1日に起きた能登半島地震では、1号機で3600リットル、2号機で2万4600リット

          金属の「疲労破壊」と「延性破壊」が志賀原発で起きていた/能登半島地震

          「新規制基準が奏功するという安全神話」検討チーム

          2024年5月20日、第2回原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームが開催された。 何が決まったか 第2回で何が決まったかというと、第1回(4月22日)の「検討チームの論点及びスケジュール」で「例えば」という言い方で示した3ケースのうち、次回以降は、ケース2、ケース3の屋内退避について考えるための「線量計算」をしてみようということ。 計算に使うのは、原子力研究開発機構が開発した被ばく線量評価コード「OSCAAR」(オスカー)だということ。 仮想的なモデルで仮の線

          「新規制基準が奏功するという安全神話」検討チーム

          エネルギー政策で問題だと感じること(雑感)

          前回のノート「エネルギー基本計画を「国全体の議論の俎上に!」合同会見」に対して、「経産省の審議会」と「市民団体側」の顔ぶれが固定化している旨のコメントがあった。しかし、経産省の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」(以後、経産省審議会)のメンバーの固定化と市民団体の顔ぶれの固定化を同列で語ることは意味がないと思うので、そのことと同時に、エネルギー政策を語る上で最も問題だと感じていることを、この際、共有しておきたい。 経産省審議会は政策決定過程そのもの 経産省審議会は、

          エネルギー政策で問題だと感じること(雑感)

          エネルギー基本計画を「国全体の議論の俎上に!」合同会見

          「エネルギー基本計画」改定の年を迎えて、経産省内外での議論が始まった。  2024年5月9日には、再生可能エネルギーや気候変動問題に取り組む市民が「『第7次エネルギー基本計画』の議論開始に向けて議論の枠組みとプロセスを問う」合同記者会見を行った。そこで問われたことのうちごく一部を除いては、彼らが指摘した通りのことが、5月15日に経済産業省の審議会で起きた。 合同会見の発言合同会見での発言をかいつまんでいく。 FoEジャパンの吉田明子さんは 「ここ数年、エネルギー・気候

          エネルギー基本計画を「国全体の議論の俎上に!」合同会見