まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染…

まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』ほか。

最近の記事

2度目の中断:2号機燃料デブリの試験的取り出し。優先する必要があるのか

2024年8月22日に始まった福島第一原発(1F)2号機の燃料デブリの試験的取り出しは、暗礁に乗り上げている。 これまでのあらすじ 1度目の暗礁は、始まった当日(8月22日)。デブリをつかむグリッパと遠隔操作に必要なカメラが先端に付いた釣竿状アームを押し込むパイプの組み立て順が間違っていた。(既報「一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗」)。 間違った原因を東電は2日に経産大臣に説明するはずが直前で延期(既報)。説明したのは9月

    • 福島第一原発事故による汚染土の最終処分は「素掘り」。「再生利用」は呼び名を変えるかも?

      福島県内外にある「汚染土」の 「最終処分」と「再生利用」の 基準案について環境省が 専門家の意見を聞く会合が2024年9月17日に開催された。 福島県「内」「外」にある「汚染土」 ここで言う汚染土とは、福島第一原発事故で放射性物質が放出され、土壌に沈着、その表土を除去したもので、環境省は「除去土壌」と呼んでいる。 現在、それは福島県内の中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)などに1300万m2、福島県外に33万m2あり、放射能濃度は以下の通りだ(県内が右上、県外は右下)。 こ

      • 集中管理中の放射能汚染土の行方(後半)

        こちらからの続き。話した内容に多少、補足しながら記録しておく。 汚染土の再生利用が安全基準に合致? 2025度以降、全国での汚染土(8,000Bq/kg以下)の再生利用を本格化したいと考えている環境省は、9月10日、国際原子力機関(IAEA)の報告書を受け取った。 3回の会合(視察先は前半で紹介した飯舘村長泥地区)を踏まえての報告書だ。 環境省が仮訳したプレスリリースには、同報告書には、1F事故後の除染で発生した土壌や放射性廃棄物の再生利用・最終処分について「現在計画

        • 集中管理中の放射能汚染土の行方

          2024年9月13日の集会で中間貯蔵施設(福島県双葉町・大熊町)に運び入れられた東京ドーム11杯分の除去土壌を、今、環境省がどうしようとしているのかについて話をした。こちらでも共有しておきたい。長いのでまず前半。 原発事故→避難させずに除染 2011年3月11日の東日本大震災により、福島第一原発(1F)1〜3号機がメルトダウン、メルトスルー、そして、12日 1号機が爆発、14日 3号機が爆発、15日4号機が爆発。東日本の土壌は広範囲にわたり、汚染された。 同年、汚染地域

        2度目の中断:2号機燃料デブリの試験的取り出し。優先する必要があるのか

          安らかに眠りたまえ #敦賀原発2号機 #パブコメ 

          基準不適合となった「敦賀原発2号機」に関するパブコメ  福島第一原発事故を踏まえて設立された原子力規制委員会が、敦賀原発2号機は新規制基準に「適合しているとは認められない」とした審査書(案)について、パブリックコメントを募集している。 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(案)に対する科学的・技術的意見の募集について 締め切りは2024年9月28日0時0分 (9月27日(金)夜24時)だ。 原電社

          安らかに眠りたまえ #敦賀原発2号機 #パブコメ 

          実は事故原発だけではない「廃炉」の不明瞭さ

          今日、一番伝えたいことは、タイトルの通り。忙しい方は目次から、「事故原発だけではない「廃止措置」の不明瞭さ」に飛んでください。 燃料デブリ試験的取り出し再開、着手 東京電力は9月9日(月)、中断した福島第一原発2号機の燃料デブリ試験的取り出しについて「明日(10日)再開する」と発表した。土日(7〜8日)に間違っていた「押し込みパイプ」の順番を入れ替えたという。 9月10日、「テレスコ式装置の先端治具が隔離弁を通過」した「廃炉の貫徹に向け、安全を最優先に緊張感を持って取り

          実は事故原発だけではない「廃炉」の不明瞭さ

          除去土壌:IAEA報告(環境省訳)と問題点

          「あれからどうなった??放射能汚染土―反対運動の成果と経過報告」(主催:新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)という集会で「放射能汚染土、環境省の動きは?」ということについて30分でコメントして欲しいと頼まれた。2024年9月13(金)夕方、新宿で開催される。 先日、準備してPPTを既に送っておいたところ、そこに「予測」として書き込んだ国際原子力機関(IAEA)の報告書が昨日(9月10日)になり、出た。 除去土壌の再生利用等に関するIAEA・環境省専門家会合最終報

          除去土壌:IAEA報告(環境省訳)と問題点

          鬼怒川水害の2022年地裁判決について

          今日は、2015年に起きた鬼怒川水害(国による正式名称は「平成27年9月関東・東北豪雨」)を巡る国家賠償訴訟の控訴審、第1回が東京高裁で行われる。 水戸地方裁判所の判決は2022年。この判決に、原告と被告の双方が控訴した。丸2年ぶりに第1回がようやく開かれることになった。 その年、「現代の理論 2022秋号」*(NPO現代の理論・社会フォーラム 編)に依頼され、「画期的な鬼怒川大水害訴訟判決 : 国の河川管理の瑕疵認定 :気候危機時代の治水行政の転機」を書いた。今日は残念

          鬼怒川水害の2022年地裁判決について

          臨時会見 #福島第一原発2号機燃料デブリ

          2024年9月5日11時から、「2号機燃料デブリ試験的取り出し作業中断に関する 原因と対策」(2024年9月5日)の臨時会見があった。3時間。 夕方の定例会見で不明点を確認後、2度以上加筆(9月5日18時56分)。東電資料から図なども加えた(9月6日9時半頃)。 0. 会見開始後3時間目に明らかになった三菱重工の虚偽・隠蔽 小野明・福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントが退席後、共同通信記者とおしどりマコ記者が最後に食い下がって質問したことで分かったことがある。元請企

          臨時会見 #福島第一原発2号機燃料デブリ

          500kgのパイプを人手で回転させる設計  #福島第一原発2号機燃料デブリ

          福島第一原発2号機の3gデブリ取り出し失敗に関する疑問。8月22日(既報)に得られなかった答えを(26日と29日の東電会見に出席できず)、9月2日会見で得ようと出向いた(動画いずれリンク切れする)。 タイトルの内容についてだけ知りたい方は、目次から「500kgの押し込みパイプを人手で回転?」に飛んでください。 大臣への説明「延期」の理由を言わない東電 2日午前、東電社長が経産大臣に調査結果を午後に報告するとの報道(NHK)が流れていた。会見のメインはそれだと思ったら、説

          500kgのパイプを人手で回転させる設計  #福島第一原発2号機燃料デブリ

          日本原電の東海第二と敦賀原発は今週が山場

          「私の夏ボケ質問は冒頭でもう一つあったのだが、これは次回以降にまた書かせていただく」(既報)と書いた件。 そのボケ質問とは、2024年8月21日の原子力規制委員会後の定例会見で、日本原電で同時進行している東海第二原発の防潮堤(既報)と、敦賀原発の問題(既報)の2つを混同ししてしまったものだ。 訂正 その前に ここでお詫び・訂正させていただくが、その前に2事案の現状は以下の通り。 日本原電「東海第二原発」の防潮堤問題 ・防潮堤の不良施工に関する次の審査会合は8月29日

          日本原電の東海第二と敦賀原発は今週が山場

          福島第一原発30〜40年「終了」の意味と根拠

          Level 7でジャーナリストの木野龍逸さんがお話をされるとのことで、参加した。聞いていて、抜けていた情報や頭の整理ができた。 ロードマップは政治的目標 「東京電力の中長期ロードマップ」と言ってしまうが、正式名称は「東京電力ホールディングス(株) 福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以後、「ロードマップ」)であり、作り手は政府の「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」(裏方は経産省)だ。 そこに書かれた「廃止措置終了まで」「30〜40年後」(ロードマ

          福島第一原発30〜40年「終了」の意味と根拠

          一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗

          2024年8月22日 東京電力の木曜の定例会見は、通常通り夕方5時から始まった。福島第一原発(1F)の新事務所本館から一連の説明があった後、1F会場→福島会場→東電本社の順に記者が質問。1時間45分の長い会見となった(動画はいずれリンク切れする)。記者質問が集中したのは、22日朝から始まった2号機の燃料デブリ試験的取り出しの失敗について。 一夜明けて、写真説明で不明な点があり、確認のために広報に電話を入れたら、「確認します」となり、折り返し、昨日の写真説明が間違っているとい

          一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗

          形骸化している原子力政策評価と私の夏ボケ

          8月21日の原子力規制委員会。議題1は、2023年度に原子力規制委員会が実施した政策を対象に、部外者(政策評価懇談会)が評価を行ったことの報告だった。 政策評価法は機能しているか?政策評価法は、行政が実施する政策を客観的かつ厳正に評価して、その結果を政策に反映し、情報を公表して、国民に説明する責務を全うすることだ。 では客観的に厳正に評価され、情報が公表され、国民への説明責務は果たされているのか? 結論から言えば、行政の自己評価にとどまり、あまり報道されることもなく、国民

          形骸化している原子力政策評価と私の夏ボケ

          事故でダメージを受けた福島第一原発が劣化

          お盆休み明け。2024年8月19日、東京電力は福島第一原発に関する3つの発表を行った。3つを順不同で記録する中で、原発事故でダメージを受けた多号機の原発が同時進行で劣化していくとは、こういうことなのだと感じた。 2号機 燃料デブリ3g取り出し予定8月22日1つは2号機の燃料デブリの試験的取り出しの着手について。必要な治具の使用前検査が8月16日に終了したとして、8月22日、朝6時から始めるという。 ただし、デブリから20cm離れたところで線量を測定、24mSv以下なら取り

          事故でダメージを受けた福島第一原発が劣化

          敦賀原発はゾンビだ(感想)

          敦賀原発2号機は事実上、死んだ。再稼働はできない。 ところが、息を吹き返すこと(設置許可の変更の再申請)が可能であるという考え方を、事業者である日本原電発電(以後、原電)も原子力規制委員会も取るのだ。 敦賀原発はゾンビだ。 今日の「地味な取材ノート」は、昨日(2024年8月2日)の原子力規制委員会臨時会と、直後に行われた原電の村松衛社長会見と、その後の原子力規制庁への質問後に、電車の中で「X(旧ツイッター)」で呟いた感想を補足したものだ。 新規制基準に適合していると認

          敦賀原発はゾンビだ(感想)