2度目の中断:2号機燃料デブリの試験的取り出し。優先する必要があるのか
2024年8月22日に始まった福島第一原発(1F)2号機の燃料デブリの試験的取り出しは、暗礁に乗り上げている。
これまでのあらすじ
1度目の暗礁は、始まった当日(8月22日)。デブリをつかむグリッパと遠隔操作に必要なカメラが先端に付いた釣竿状アームを押し込むパイプの組み立て順が間違っていた。(既報「一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗」)。
間違った原因を東電は2日に経産大臣に説明するはずが直前で延期(既報)。説明したのは9月5日(既報「臨時会見 #福島第一原発2号機燃料デブリ 」。しかし、元請企業(三菱重工)の複数いる責任者の責任の所在を明確にしない説明に終始した。孫請・曾孫請の多重下請け体制も口頭で尋ねてさえ明らかにしなかった(以後も作業に従事する孫請・曾孫請は合計数しか言わない)。
組み立て順を直して再開したのは9月10日(火)(NHKなどが報道)。線量の高い格納容器内部に通じる隔離弁を先端(デブリをつかむグリッパと遠隔操作に必要なカメラ)が通過した。この9月10日から、カメラは2号機格納容器
原子炉内の放射能性物質を浴び続けている。
この時点でカメラに映っているものが何かは、再開したと発表したときのリリースに載っている。水色の輪が「隔離弁の境界」であり、テレスコの先端がそれを超えて、線量が高い場所へ入ったことを示している。
12日の東電会見で、翌13日からの見通しが説明されていたので、その結果を聞きに、3連休明けの17日(火)の会見へ出向いた。そこで2度目の中断となったことが、口頭でサラリと説明された(動画はそのうちリンク切れする)。
燃料デブリ試験的取り出し2度目の中断
あまりに説明が大雑把で、経緯を説明する資料もない。複数の記者が根掘り葉掘り、五月雨式に聞き、経緯がぼんやりと見えた。最後の方に質問した者として、それらを再確認して、次のような経緯であることが分かった。
原因はカメラかケーブルか
カメラ①②の映像が適切に送られていない原因を調査中だというが、カメラかケーブルのどちらか以外は考えにくいのではないか。17日の会見で東洋経済新報社の岡田記者がカメラの耐放射線量を尋ね、4万9000Gy/hだということも判明。累積だという。
原因調査している間にカメラの耐放射線量はもつのか
そこで、原因調査中に累積で4万9000Gy/hに達してしまう懸念はないのかを聞くと、「その可能性はあるが、まだ10日だから余裕はある」、「耐放射線量に達したらすぐダメになるわけではない」(東電広報)との回答があった。
2号機の格納容器内部調査は2012年から徐々に行われ(調査実績)、線量については、2017年〜2019年までに原子炉内外の温度ともに示されていた。
原子炉外のCRDレール(事故前は核燃料を交換するために使うレール)上は210Sv/h。原子炉内は最大で8Gy/h以内だ。
原子力規制委員長はどう見ているか
翌日、9月18日の原子力規制委員会後の会見で、デブリの試験的取り出しの優先度について(他に問題が山積する中)、東電と議論すべきではないか、原子力規制委員長の見解を問うた。以下、やりとりをコピペさせていただく。
リスク低減について聞いたわけではなく、事故処理の優先順序はこれでいいと思っているのかを聞きたかったのだが、また同様のことを問わなければならない日が、良くも悪くも、また来るだろう。
さて、19日(木)の会見でも(私は行けなかったが)、今後の見通しはまったく明らかにされなかった。①②のカメラはまだカラーコードしか映らず、「映像変換器および光ファイバーケーブルの健全性」は確認できたとリリースしている。
記者の質問を聞いていると(動画はじきにリンク切れする)、このままではテレスコを引き戻し、最初からやり直しになるのではないかと予感した質問が多い。私もそう予感する。
トラブルが解消できないまま事故処理が
8月9日に判明した2号機使用済燃料の冷却プールのスキマサージタンクの水位がゼロになって、こちらも原因調査ができない状態のままで1ヶ月以上が経過した。あちこちでトラブルが解消できないままで事故処理が進む。このような状態が加速していかないことを、願うしかできない。
【タイトル図】
福島第一原子力発電所 2号機燃料デブリ試験的取り出し作業の状況について 2024年9月19日東京電力 より