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形骸化している原子力政策評価と私の夏ボケ

8月21日の原子力規制委員会。議題1は、2023年度に原子力規制委員会が実施した政策を対象に、部外者(政策評価懇談会)が評価を行ったことの報告だった。


政策評価法は機能しているか?

政策評価法は、行政が実施する政策を客観的かつ厳正に評価して、その結果を政策に反映し、情報を公表して、国民に説明する責務を全うすることだ。

では客観的に厳正に評価され、情報が公表され、国民への説明責務は果たされているのか? 結論から言えば、行政の自己評価にとどまり、あまり報道されることもなく、国民からも注目され難い状態にある。だから記録しておきたい。

政策評価懇談会 町委員の指摘

2023年度に原子力規制委員会が実施した政策に対する、政策評価懇談会による評価報告を、議題1として規制庁の新田晃・政策立案参事官が、原子力規制委員たちに説明したが、資料は166ページにわたり、報告はそのごく一部にとどまった。聴きながら読んでいて目に止まったのは、「町委員」の指摘だ。

六ヶ所の再処理施設の事業者「日本原燃」の適格性

原子力規制委員会(規制庁)の審査に関する政策評価として、「町委員」は「六ヶ所の再処理施設について工事延期が多く事業者の適格性を含めしっかり見てほしい」と指摘。これに、規制庁は「日本原燃の再処理施設は、実用炉とは大きく異なるもので、審査に時間がかかっており、事業者も苦労しているが、安全性の確保については、引き続き、厳正に審査を行っていく」とズレた応答をしていた。

2024年8月21 日原子力規制庁令和5年度実施施策等に係る事後評価及び今後の政策評価の在り方 P5

核燃料サイクル政策の要である日本原燃の六ヶ所村再処理施設は、1997年に完成予定だったが、工期を26回延長し、いわばヤルヤル詐欺状態。その他の理由からも、核燃料サイクル政策を中止すべき理由は山積みで、国会が立法でカタをつけるか、内閣が政治決断をしなければならないことだと思うが、「原子力規制委員会」への注文の付け方として、日本原燃の事業者としての適格性を問うのは至極もっともなことだ。「事業者も苦労している」とはなんという言い草だ!と思った。

(ちなみに「2024年度上期のできるだけ早い時期」に完成させると6月に社長が語ったばかりだが(2024年6月26日NHK「日本原燃社長再処理工場の完成時期“目標の見直し行わず”」)、その2ヶ月後に、27回目の延長が報道された(2024年8月17日NHK「“青森 再処理工場建設 2年半ほど延期の方向で検討”日本原燃」。)

複合災害に対応する原子力災害対策指針

さらに見ていくと、同じ「町委員」が「原子力災害対策指針の屋内退避ができない場合も含めた見直しを今後してほしい」と指摘している。これもよくぞ言ってくれたという指摘だが、規制庁側は「能登半島地震を受けて原子力災害対策指針を見直すことは考えていない」とゼロ回答だった。

2024年8月21 日原子力規制庁令和5年度実施施策等に係る事後評価及び今後の政策評価の在り方 P6

なんと良い指摘してくれるか委員がいたものだ!と思い、政策評価懇談会の議事録に遡った。

書きながら夏ボケに気づく

そして、今、自分のミスに気づいたが、私は、最新の2024年7月19日の政策評価懇談会ではなく、2023年度の7月21日の議事録を読んでしまっていた。

原発の停止期間分の上乗せ政策(昨年の指摘)

いずれにせよ、ここでも「町委員」こと町亞聖(フリージャーナリスト)氏は、的確な指摘をしていた。原発の運転期間が原子炉等規制法から削除され、経産省所管に移した際の政策決定の在り方を、次のように厳しく批判していたのだ。

「原則という言葉がこんなにむなしいというか、裏返せば原則は40年、最長20年延長ということが原子炉等規制法から削除され、別の所管に移ったということで」「そこをちゃんと、福島の方も含めて、示してからの法改正が順序じゃないか」「日本国民全員がそう思ったというふうに思います」「(停止期間を)除外するのは誰が決める、どこが決めるんですか」。これに片山長官が「原子力政策を担っている経済産業省になる」と答えたことに「納得しかねる」と言い返してくれていた。(2023年7月21日議事録

夏ボケ質問(赤面)に委員長答えてくれた(汗)

8月21日の原子力規制委員会後の委員長会見では、自分のミス(議事録への遡り間違い)に気づかず、この運転期間を巡るやり取りが委員会できちんと共有されなかったのは問題ではないかと山中委員長に尋ねて、答えさせてしまった。(申し訳ありません!と広報を通じて、この部分を、しかるべき部署に届けていただくようお願いするつもり)

ちなみに山中委員長は私の1年ズレた質問に「運転期間の延長に関しての我々の姿勢ということについては、基準をきっちりと満たす、それを事業者に求めていく。10年ごとに長期施設管理計画を提出していただいて、次の10年間、運転の基準を満たしていれば認可をするという制度で、その点については外部有識者の先生方に説明はしているはずだ」と回答。

夏ボケ以外の質問への回答

また、「六ヶ所の再処理施設」の適格性を委員長自身はどう考えるかとの問いには、委員長は「適格性を議論しないといけないような事態には陥っているとは考えていない」、「設工認の第2回の審査の分量は大量だが、きちんと厳正に審査を続けていきたい」と回答した。

委員の指摘は正面からとらえられるべき

質問が長くなり過ぎるので、尋ねなかったが、先述した「原子力災害対策指針の屋内退避ができない場合も含めた見直しを今後してほしい」へのゼロ回答を見ると、評価を政策に反映するための「政策評価」は形骸化していると言わざるを得ない。

指摘されたことを報告し、資料は公表されているが、報道されることは稀で、国民も注目していない。自分を棚に上げて恐縮だが、去年の政策評価については資料すら見なかった。どうせシャンシャン(法律で決められているからやるしかない形式的な仕事)なんでしょ、と形骸化させている張本人でもあると自覚する。166ページもの資料を作れば、規制庁職員の振り返りにはつながり、効果はゼロではないと思う。

しかし、対費用を考えた場合、評価委員の指摘は軽んじることなく、正面から受け止めて、反映されるべきではないかと考えている。特に、こと原子力災害対策指針の見直しについては、多くの要望が寄せられてきていたのだから。

なお、昨日の原子力規制委員長会見では、私の夏ボケ質問は冒頭でもう一つあったのだが、これは次回以降にまた書かせていただく。

【タイトル画像】
2024年8月21 日原子力規制庁令和5年度実施施策等に係る事後評価及び今後の政策評価の在り方 P6


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