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一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗

2024年8月22日 東京電力の木曜の定例会見は、通常通り夕方5時から始まった。福島第一原発(1F)の新事務所本館から一連の説明があった後、1F会場→福島会場→東電本社の順に記者が質問。1時間45分の長い会見となった(動画はいずれリンク切れする)。記者質問が集中したのは、22日朝から始まった2号機の燃料デブリ試験的取り出しの失敗について。

2024年8月22日東電本社会見室(筆者撮影)

一夜明けて、写真説明で不明な点があり、確認のために広報に電話を入れたら、「確認します」となり、折り返し、昨日の写真説明が間違っているという回答が返ってきた。ビックリしたが、説明がコロコロ変わるのは、いつものことだ。

何がどう間違っていたかを説明するためには、昨日の東電会見での説明を順不同で簡単にまとめておこうと思ったら、長くなった。目次から関心のあるところへ飛んでいただければ幸い。


2号機燃料デブリ3g試験的取り出し作業体制

作業は7時24分に開始(広報岩本氏)。
現場は被ばく線量を考慮して、6人X8班の48人。
遠隔操作や待機で後方に12人、計60人
で作業が行われた。

計画線量は1人2.5mSv、被ばく実績は全員で7.87人mSv。
個人の実最大被ばくは0.77mSvで、ラックの取り付け、ガイドパイプの押し込みを行った作業員だ(広報岩本氏)。交代時間は以下の通り。
 1班目 7時40分〜7時50分
 2班目 7時50分〜8時15分
 3班目 8時15分〜9時00分

組み立ての順番に気づいたのは3班目

「組み立ての順番に気づいたのは3班目だった」(広報高原氏説明)。
「3班目が最終チェックのタイミングだった」(広報岩本氏補足)。

「事前準備の中で内側にケーブルを引き込んでおり、引き込む順番が初めから違っていた。その準備の中で最初の1本目を入れて考えた時に、1本目がそもそも作業員さんが考えていたものではなかったことが確認された」(広報高原氏)

「公表資料の1スライド目、左側の写真、右上がガイドパイプなどを入れる穴になっているが、ここに1本目が入っている。テレスコの後ろにケーブルが伸びていて、押し込み用のパイプは数珠つなぎになっている。ケーブルを覆う形でつながっているが、それが順番に①②③④⑤と並んでいなければいけないところ、②③④①⑤のように並びが変わっていた」(広報岩本氏)

入れたのか準備か、説明資料と説明にズレ

資料説明の時間とのズレは誤差だとして、高原氏の言った「最初の1本目を入れて考えた時」という説明と、資料説明の「押し込みパイプの1本目(全5本中の1本目)の接続準備をしていたところ」には食い違いがある。

一致しているのは「現場の最終チェックにおいて、押し込みパイプ1本目が、計画していた順番のものと異なることを確認した」ところだ。

福島第一原子力発電所 2号機PCV内部調査・試験的取り出し作業状況について P1から抜粋
東京電力 2024年8月22日

間違った人、気づいた人の東電説明が福島と東京で真逆

これに関して、広報高原氏は組み立てたのは協力会社の作業員で、間違いに気づいたのは三菱重工だと説明したが、福島県が東京電力に行った申し入れを取材した記者は、「組み立てたのは三菱重工で、間違いに気づいたのは協力会社の作業員だと、東電は答えていたが」と食い下がった。福島と東京でのこうした説明の食い違いは初めてのことではない。

パイプを数珠つなぎにしたのは7月28日

続いて、「数珠つなぎにしたのはいつか」という質問に、「7月28日に実施」と東電は回答。記者は「神戸の工場で組み立て、分解して運んで。7月28日なんで、原発内、2号機内で組み立てたということ?」と念押し。高原氏が「2号機の原子炉建屋内で組み立てた」と答えた。ほぼ1ヶ月前だ。(もはや、誰が組み立ての順番を間違えたか、という問題ですらないのかもしれない。なぜ1ヶ月も経ち、当日の3班目になってやっと気づいたのかという、より奇怪な話だ。)

ケーブルを中に通して数珠つなぎなので、すぐに組み直せない。だから作業は中断した。

東電、元請、下請、孫請の体制は?

気になったので、60人の「社員、元請、下請け、孫請の体制は何人づつか」を尋ねると、回答の範囲が伸び縮みして、一部、訂正も行われた。

広報高原氏:あくまで作業体制ですので、当社社員は入っておりませんけれども、実際に一次請、いや元請である三菱重工より下のところ、下請さんがおりますけど、正確な人数はちょっと確認したい
広報岩本氏:いずれにしても日々、人が入れ替わる形になる。冒頭申し上げたが、現場体制としては8班6名の48名、後方支援の12名というのは、こういった形なので、毎回、内訳というのは難しかろうと思う。
まさの:ただし、人員の配置が(初歩的ミスの)原因である場合もあると思うので、明らかにしていただきたいと思うが、そうすると8班の1班ずつは同じ社の人の構成であるという理解でよろしいか。そうじゃないと指示系統がゴチャゴチャしていることになる。
広報岩本氏:8班のうち1班6名が同じ会社に所属しているかどうか、か?
まさの:はい。
広報岩本氏:はい。同じ会社に所属しております。
まさの:では、それほど複雑ではないと思うので、なおさら明確に48名と12名について教えていただきたい。12名の中にも東電社員はいないのか。
広報岩本氏:あくまで、元請三菱重工傘下で作業をしている方々の人数内訳になります。

そして、しばらくすると、「先ほど、8班6名は同じ会社に所属と回答したのは間違いでした」と、訂正が入った。やはり1班に複数会社の所属者が参加していたのだ。

なお、東電社員が立ち会っていたかどうかは私よりも先に質問した記者質問があって「確認する」となっている。

多重下請け構造 今回も

つまり、今回も多重下請構造の中で作業が行われ、東電が発注、三菱重工が受注、下請けが作業するという中で、初歩的ミスが起きた。

今回もというのは、昨年、ALPS内で炭酸塩硝酸で溶かす作業中に、仮設ポンプが外れて汚染水(43億7600万Bq/L)を被って作業員が被ばくした事件も、多重下請体制で起きたからだ。

地味な取材ノート「ピンハネか?東芝エネルギーシステムズから回答が来た」より

指示命令系統が混在する偽装請負(既報)状態が常態化しており、少なくとも、今回のような初歩的なミスを誘発した一因だと考えるべきではないか。

写真説明の間違いについて

さて写真説明の間違いについて。上記で書いたことを再掲するが、広報岩本氏は「公表資料の1スライド目、左側の写真、右上がガイドパイプなどを入れる穴になっているが、ここに1本目が入っている。テレスコの後ろにケーブルが伸びていて、押し込み用のパイプは数珠つなぎになっている。ケーブルを覆う形でつながっているが、それが順番に①②③④⑤と並んでいなければいけないところ、②③④①⑤のように並びが変わっていた」と説明した。

福島第一原子力発電所 2号機PCV内部調査・試験的取り出し作業状況について P1
東京電力 2024年8月22日

それを資料写真を見ながら理解しようとした。

しかし、「左側の写真、右上がガイドパイプなどを入れる穴になっている」(岩本氏)が理解できない。会見中にUSBでもらった文字のない画像を拡大しても「」とはどれなのか、1本目(②)の姿もよく見えない。それに(上記)5本目と1本目はつながっているように見える。どういうことなんだ?

写真提供:東京電力ホールディングス株式会社 X6ペネの前で撮影したそうだ。
これには説明文字がない。

そこで、今朝、東電広報(担当の佐藤さん)に再確認すると、折り返しの電話があった。間違っていたという。電話の向こうとこちらで同じ写真(以下)を見ながらの説明によればこうだ。
・文字「1本目(②)」の下に写っているのは5本目だった。
・文字「1本目(②)」の上にニョキッと出ている、これが1本目(②)だった。以下【間違っていた写真説明】と【東電広報の訂正説明をもとに私が作成したもの】を並べておく。

【間違っていた写真説明】

福島第一原子力発電所 2号機PCV内部調査・試験的取り出し作業状況について東京電力 P1を拡大

【東電広報の訂正説明をもとに私が作成したもの】

東京電力ホールディングス株式会社写真提供を使って、筆者作成

まさの:(右上の)四角い金網みたいなのがラックですね。
東電広報:そうそう。
まさの:ここに入っていると。
東電広報:「入っている」というより「セットされている」。入っているという言い方をすると、いかにも穴があってそこに挿入されているようだが、セットされている。
まさの:P2のラックですね。
東電広報:「ラックにセットされている」というのが正しいのか、「ラックと共にセットされている」のが正しいのか。
まさの:はぁ。

というわけで、岩本氏の「ガイドパイプなどを入れる穴」はどこかへ消えて、代わりに「ラック」が登場した。

福島第一原子力発電所 2号機PCV内部調査・試験的取り出し作業状況について P2より
東京電力 2024年8月22日

機器の位置関係

会見の話に戻る。位置関係が聞いていてもわからなかった。聞くは一時の恥なので、聞いた。

まさの:資料2ページで説明していただきたい。ガイドパイプ内筒ガイドパイプ外筒とあるが、今日出ているガイドパイプの話は、内筒なのか外筒なのか、ケーブルの先には何がついているのか、テレスコ部と先端治具は今、どこにあるのか。
広報高原氏:今回、ガイドパイプ外筒を押し込みパイプで押し込もうとしている。ケーブルの先端には、テレスコ装置がついている。テレスコ装置はガイドパイプの方に入っている
広報岩本氏:補足する。今日の作業では2mほど進む予定だった。今どれぐらい進んでいるかというと、1.5mの地点まで進んでいる。なので、1.5mの先に、テレスコ式装置の先端がある状況。そこから隔離弁までの距離は40cm程度

まさの:押し込みパイプで外筒を押しているという状況?
広報高原氏:正確にいうと内筒を押す形になる。
広報岩本氏:イメージとしては伸縮式の物干し竿があって、伸び縮みする押し出しの外側があり、内側の方を押し込みパイプで押そうとしていた。

サイズなど

押し込みパイプ:直径16cm、重さ95kg、長さ1.5m X5本
 この5本には5cmX5cmぐらいの大きさで、組立順の番号①②③④⑤が書かれていたという。
ガイドパイプ内筒:直径16センチ、長さ7m
ガイドパイプ外筒:直径16センチ、長さ7m

今後のこと

多くの記者が聞いたのは、工場のある神戸で訓練までやっていたのに、なぜこんな初歩的ミスが起きたのかということと、今後の予定だ。

東電の答えをまとめると、ケーブルを外して並べかえる作業は2、3時間しかかからないが、なぜこんなことが起きたか要因を洗い出すまでは、今後については未定だ、ということ。

東電社長がいたのは柏崎刈羽原発の足元

東電は燃料デブリの取り出しは、最難関だと繰り返してきた。
社長は遠隔操作をする場で腕組みして見守っているのだろうと勝手な想像をしていたが、22日朝、新潟日報の発信で、小早川智明社長は、柏崎刈羽原発の再稼働に向けて柏崎市長に会いに行くと知り、びっくりした。

作業員が、個人線量計がピーピー鳴るような高線量に汚染された原子炉前で、交代で作業を行うのに?と信じられないと思いで、あえて「社長はもしや柏崎市に?」と、否定されることを半ば期待しながら、会見でも確認すると「お知らせした通り」と平然とした答えだった。

社長は、柏崎刈羽原発を再稼働する条件として「福島第一原子力発電所の廃炉を進めるにあたっては,地元をはじめ関係者に対して理解を得ながら,廃炉を最後までやり遂げていく」「社長回答書(7項目)」の実施計画への反映について)という約束を原子力規制委員会にした本人だ。失敗も十分にありえる重要な局面を見守ることもなく、柏崎市へ出向いていた。今の東電の姿勢を象徴する事件だと思った。

最後まで目を通してくださった方に感謝。誤字脱字があったらごめんなさい。

【タイトル画像】

東電広報の訂正説明をもとに私が作成したもの

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