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ビジネスモデルまとめ


▼ビジネスモデル各説


▽「VC」(バリューチェーン)

~価値提供と利益創出の構造をテーブル形式にまとめる~

出典:「競争の戦略」マイケル・E・ポ−タ−ダイヤモンド社(1995/3/16)

VCとは、Value Chainの頭文字をとった略で、顧客への価値提供の流れを、原材料や部品の調達・製品の加工と組み立て・出荷配送・マーケティング活動・顧客(消費者)への販売・アフターサービスといった「主活動」と、主活動を支える管理や人事、資材調達、技術開発などの「支援活動」で体系化したものです。

▽「戦略マップ」(バランスト・スコアカード)


~イノベーション・顧客管理・業務管理の経営要素の組み合わせを体系化~

出典:「戦略マップ」東洋経済新報社 (2014/1/31)

戦略マップ(バランスト・スコアカード)とは、企業の業績を、定量的な財務業績のみでなく、多面的に定義し、イノベーション・顧客管理・業務管理の各分野で、バランスよくマネジメントしようとする経営管理手法です。財務・顧客・内部プロセス・人事組織の4つの視点で、経営要素を抽出し、それぞれが会社の業績や将来性などにどのように働いているかを把握するフレームワークです

「戦略マップ」や次に紹介する「ビジネスモデルキャンバス」は、経営の仕組みを一瞥で把握でき、成功企業や競合企業のビジネスモデルを比較分析するのに大変有益なフレームワークです。
もっとも、経営戦略体系論や企業の方向性を示す役割の重要性から、経営者の思い(Mission・Vision)又はステークホルダーの思い(パーパス・ドリーム)を戦略マップの頂点に位置付けられることが必要と考えます。
つまり、戦略マップは過去や現在のビジネスモデルを把握するには優れていますが、将来のビジネスモデルを考える場合には、方向性を見失うリスクがあるのです。
そのため、戦略マップ活用前にMVVを明白にしておくことが必要です。MVVで組織の方向性や目標、役割が定まった後の経営戦術段階で、「戦略に基づいて経営要素を組み合わせる」ことに戦略マップの役割があります。


▽「ビジネスモデルキャンバス」


~フロントオフィスとバックオフィスの役割と関わり合いを商流・物流・金流で明確化~

出典:「ビジネスモデル・ジェネレーション」‎ 翔泳社 (2012/2/9)

「ビジネスモデルキャンバス」とは、組織が生計を立てるための仕組みを9つの要素に分類し、それぞれがどの様に関わり合っているかを教えてくれる経営ノウハウです。フロントオフィスとバックオフィスを左右に配置することで、経営を見える化し、その役割の関連性を明白にするのに有益です。

もっとも、この考えも戦略マップと同様に、変化の激しいビジネス環境で企業のアイデンティティを失わず、その将来像を示すうえで重要な経営者の思い(Mission・Vision)又はステークホルダーの思い(パーパス・ドリーム)が抜けています。
そのため、現在のビジネスモデルを理解するには有用であっても、キャンバスを使って企業の将来像を見出すには方向性を見失うリスクがあります。戦略マップやこのビジネスモデルキャンバスも、「戦略に基づいて経営要素を組み合わせる」ことに活用すべきでしょう。
さらに、戦略マップと異なり、組織イノベーションの視点が欠けている点も問題です。環境変化や新しい技術導入にあたり、収益化するには組織イノベーションがまず必要であることが、総務省の情報通信白書で取り上げられています[1]。


[1] 出典:「人口減少時代のICTによる持続的成長」平成30年版情報通信白書総務省




▼経営者の思い(Mission・Vision)又はステークホルダーの思い(パーパス・ドリーム)の重要性

▽経営者の思い(Mission・Vision)又はステークホルダーの思い(パーパス・ドリーム)の役割


実際の企業活動における経営者の思い(Mission・Vision)又はステークホルダーの思い(パーパス・ドリーム)の役割を示したものがこの図です。

顧客創造のためにその企業がどんな価値を提供するのかを示すMission又はパーパスは、start up時の試作品のコンセプトから、事業再生時の選択と集中の方向性を決めるなど、企業の誕生からその終結に至るまでの重要施策を左右します。こうしたMissionの役目は、一見すると環境変化時の選択肢を狭めるマイナス効果をもたらすとも思えますが、実際は経営判断を早め、これまでの経営資源やノウハウを生かせる正しい方向に導くことの方が多いのです。

Mission又はパーパス価値を通じて顧客を創造するための「組織の未来像や目標」を定めるVision又はドリームは、企業や事業、製品のPositioningを明確にし、これらの収益性を決定づけます。

こうしたMission又はパーパスの方向性やコンセプト、Vision又はドリームのPositioningに基づいて、マーケティグやオペレーション等実際の企業活動が行われるので、企業経営には、経営者の思い(Mission・Vision)又はステークホルダーの思い(パーパス・ドリーム)が必要不可欠なのです。

世界的なテック企業、アメリカの GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの総称)や、中国の BATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huaweiの総称)も全て経営者の思いを明確にしています。

・ミッションが競争優位として機能している企業は強い
・ミッションが事業を定義しイノベーションを起こす

出典:「2025年を制覇する破壊的企業」山本康正SB新書2020/11/07


例えば、以下の図表は、AmazonとスターバックスのMVV(Mission・Vision・Value(行動指針))をまとめた表です。

▽AmazonとStarbucksの経営者の思いの違い

出典:「about Amazon
出典:「Our Mission and Values」Starbucks

経営者の思いが機能的(客観的)価値を重視するのか、感性的(主観的)価値を重視するのかで、ビジネスモデルが全く異なります。

▽Missionとパーパスの違い

出典:『「パーパス経営」とは。』一橋ビジネススクール客員教授 名和高司 HITACHI inspiretheNext2021/08/17

近時、経営者だけでなく、従業員や取引関係者、顧客などの共感も呼ぶ企業理念としてパーパスが注目されています。StarbucksのMVVはステークホルダーの共感を呼ぶ、実質的にはパーパス・ドリーム・ビリーフとしての役割を果たしています。



▼ビジネスモデルまとめ

▽ビジネスモデル各説の融合


VCや戦略マップ、ビジネスモデルキャンバスで、経営要素のつながりをみてきましたが、こられをまとめて体系化すると上記図のようになります。VCの主活動と支援活動はそれぞれ、ビジネスモデルキャンバスのフロントオフィスとバックオフィスに対応し、主活動は戦略マップの「内部プロセスの視点」に、支援活動は「人事組織の視点」に対応していることがわかります。

▽経営者又はステークホルダーの思いとビジネスモデル各説の融合


VCは利益創出と価値提供の流れ、戦略マップはノベーション・顧客管理・業務管理の構造を体系化、ビジネスモデルキャンバスはフロントオフィスとバックオフィスの役割と関わり合いを明確化しています。

これらの内容と、その課題であるMissionやVisionとの関連性を解決するため、経営者又はステークホルダーの思いを組みあわせたものが、上記赤文字の部分です。製造業の商品開発や小売・サービス業の商品企画はMission(思い)の商品化であり、製造・仕入はその物質化、販売は思いを伝達することで成り立ちます。購買後の体験が再購買を醸成し、ブランディングに貢献し、高価格販売を可能にします。


▽ビジネスモデルまとめ

VCや戦略マップ、ビジネスモデルキャンバスで欠けていたMission(又はパーパス)の視点を組み込んだ「主活動の経営要素とその組み合わせ」に支援活動を組み合わせることで、ビジネスモデルが完成します。
経営者のMission策定(又はステークホルダーとのパーパス作成)である「思いの明確化」から始まり、「思いの商品化」「思いの物質化」「思いの伝達」「思いの体験化」という流れで、VCとMission(又はパーパス)が融合できました。
さらに支援活動との組合せで、バックオフィスとMission(又はパーパス)の関係も明確となり、この図表を用いることで、経営戦略を実現するビジネスモデルが体系的に選択できるようになります。




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▼書籍の紹介

Mission・Visionをはじめ、VCや戦略マップ、ビジネスモデルキャンパスなどの意義や使い方を書籍にまとめました。


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