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経営戦略のまとめ



▼経営戦略各説の体系


▽「経営戦略全史」の経営戦略各説の体系

出典:「経営戦略全史」三谷宏冶ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013/4/27)

ベストセラー「経営戦略全史」では、経営戦略は、長らく、内部環境重視と外部環境重視に分かれ、主導権を争っていたとのこと。
しかし、現在はアダプティブ派が優勢としています。
アダプティブ派が優先になったのは、外部環境が激しく・早く変化する、いわゆる「VUCA」時代となったからです。MBA取得者でもこの変化を予想することは困難となり、ポジショニング派の根拠が崩れました。一方、内部環境だけでは、次々現れる進化に既存の経営資源での対応が困難となり、ケイパビリティ派も限界を迎えているのです。

▽「戦略サファリ」の経営戦略各説の体系

参考:「戦略サファリ 第2版」東洋経済新報社; 第2版 (2012/12/21)

戦略サファリは、国ごとに経営戦略の特徴があることを捉えたことです
・日本=主観的・内部環境重視(青色戦略)
・アメリカ=客観的・外部環境重視(黄色戦略)
・ドイツ=経営環境適応(緑色戦略)

参考:「戦略サファリ 第2版」東洋経済新報社; 第2版 (2012/12/21)

▽「経営戦略全史」と「戦略サファリ」の相関図

戦略サファリは、経営戦略全史以上に各説を分けますが、
記述的スクール=内部環境重視
規範的スクール=外部環境重視

の対応関係が明白に認められます。

VUCA時代となり優勢となったアダプティブ派と環境変化対応戦略(緑色戦略)が対応しているのがわかります。
もっとも、
アダプティブ派=ポジショニング派寄り
ドイツのエンバイロンメント=ケイパビリティ派寄り


アダプティブ派は、オープンイノベーション等開放的な戦略でポジショニング派寄り
ドイツの緑色戦略派は、環境変化への受動的対応でケイパビリティ派寄り
といった違いがみられ厳密な対応関係はありません。



▼そもそも経営戦略は、主観とケイパビリティが中心


▽経営戦略体系論~ケイパビリティ(経営資源)の最適化

・経営理念(主観)
・現実現場(ケイパビリティ)
をつなぐことが経営戦略の役目

▽思い(主観的ありのまま)の重要性

経営者やステークホルダーの思いが、さまざまな重要施策のコンセプトと方向性が示すため、経営者やステークホルダーの思いが無いと、企業経営はコントロール不能に陥りやすい
➨純粋なポジショニング派(デザイン・プランニング・ポジショニング・スクール)はリスクが伴う


経営者やステークホルダーの思いはビジネスモデルの軸となっている
➨純粋なポジショニング派(デザイン・プランニング・ポジショニング・スクール)はリスクが伴う
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▼しかし、成果を分けるのは外部環境対応力


▽日米独の経営スタイルと全史・サファリの対応関係

出典:「ドイツ経済を支える強い中小企業『ミッテルシュタンド』」独立行政法人経済産業研究所 出典:「国際的に注目を浴びる中堅企業」通商白書2013
出典:「2025年を制覇する破壊的企業」山本康正SB新書2020/11/07
出典:「日本企業にDXを普及させる最大のカギは、下請け構造からの脱却」独立行政法人経済産業研究所
出典:「令和元年版電子商取引調査」経済産業省

・日本企業は、5/6が国内取引だけで、しかもそのほとんどが何ならかの系列に属する極めて内向きな経営スタイルを採用しています。そのため、オペレーションが重視される等、ケイパビリティ派の経営戦略といえます。

・ドイツ企業の経営スタイルは、海外で高利益顧客を開拓するため、海外の環境条件に適応してきた、エンバイロンメント・スクールです。

・GAFAの経営スタイルは、リアルとサイバーの垣根を越えた新しい市場を開拓するプラットフォーマーとして、小さな失敗と学習を高速で回す、アダプティブ派の経営戦略です。

いずれの経営スタイルが最強かは、下記の労働生産性と平均年収の比較を見てもらえば一目瞭然です。

出典:「労働生産性の国際比較2022」公益財団法人日本生産性本部
出典:「平均年収」OECD

1位:米企業(GAFA)=アダプティブ派
2位:独企業=エンバイロメント・スクール
最下位:日本企業=ケイパビリティ派

▼現代は、MBAでも未来は予想できない外部環境(VUCA)であるため、アダプティブ対応が必須

▽製品ライフサイクルと全史・サファリの対応関係

出典「ティール組織」フレデリック・ラルー (著)英治出版 (2018/1/24)
  • 導入期&成長期:アダプティブ派

  • 成熟期70年代前:ポジショニング派

  • 成熟期70年代:ケイパビリティ派

  • 成熟期90年代以降:アダプティブ派

  • 衰退期:アダプティブ

・導入期&成長期は、失敗を許容し、学びを重視する点で、アダプティブ派が最適です。

・成熟期のうち70年代前は、経営環境変化が少なく、正確な環境分析を行えたため、好位置にポジショニングすることで、経営資源が平均社員でも経営拡大できたという点で、ポジショニング派が勝利。

・成熟期のうち70年代になると、市場でのポジショニングが落ち着くとともに、ITオートメーションが普及して効率性が飛躍的に伸びたため、ケイパビリティ派の考えが市場での勝者を決めました。日本企業が、イノベーションのジレンマに陥っていた英米企業に追いついた時期です。

・成熟期も90年代に入り、グローバル化と情報革命で、経営環境変化が加速しました。appleを除いたGAFAはこの時期にスタートアップし、アダプティブ派の考えに沿って急成長したのです。

・衰退期においては、新しい収益の柱を育てる必要性から、導入期や成長期と同様、プロセス組織とは異なる、学びを重視し、失敗を許容するアダプティブ派の経営戦略が最適となります。

製品ライフサイクルに一番対応できるのは、アダプティブ派

戦略サファリの分類は、ライフサイクルの進化の過程で、生まれやすい経営戦略スクールを配置したもので、各サイクルの最適な経営戦略のタイプを配置しているわけではありません。つまりい、サイクルが成熟するにつれ、組織が大きくなり、その組織文化(カルチャー)や組織内力関係(パワー)が経営戦略策定に関わりが強くなることを示しています。


▼もっとも、日本国内だけを考えるなら「ケイパビリティ派」が最強?


▽国内市場とケイパビリティ派の相性


国内市場は衰退中で、成長市場やスタートアップの機会が少ない
つまり、ポジショニング派やアダプティブ派の活躍の場が少ない。

・むしろ、市場の縮小に合わせた、事業の選択と集中が必要
とすれば、「自社の強みを生かせる所で、戦うべき」とするケイパビリティ派の経営戦略が、選択と集中戦略と相性が良い。

▽国内市場でのケイパビリティ派の経営戦略の成功事例



組織の選択と集中戦略は、製品・サービスに競合他社に比し明白な強みがあるか否かで、「製品」集中型と「地域・顧客」集中型の2通りに分かれます。
多くの中小企業は「地域・顧客」集中型組織を選択することになりますが、これは、いわゆる「弱者の戦略」と呼ばれる「ランチェスター戦略」のことです。

▽「製品」集中型の経営戦略の例

出典:「2018年中小企業白書事例2-6-2」中小企業庁


ミツフジ株式会社は、従来の10倍の値段でも取引を継続してくれる顧客がいたことで、「製品」集中型戦略に踏み切れました。
専門性を高めることで、ネットワークを拡げ、世界的な成長分野での顧客も獲得し、成功しています。

▽「地域・顧客」集中型の経営戦略の例

出典:『家電「高売り」のヤマグチ、コロナ下でも粗利率44%超』日経ビジネス2023年2月3日号


ライフテクト「ヤマグチ」も、家電の定価販売に納得してくれる既存顧客がいたことで、「地域・顧客」集中型戦略に踏み切れました。
家電量販店では不可能な、頻繁な顧客訪問で、電球1個の配達やエアコンチェックなど様々な無料サービスでスイッチングコストを高め、定価販売を実現しています。



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