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組織のまとめ



▼組織の課題


▽開廃率の推移から見る「製造業」の組織課題

出典:「中小企業白書2022年度版」経済産業省

▽開廃業率逆転時期

個人企業(経営者単位): 81~86年
個人企業+会社企業:86~91年
会社企業(法人単位):96~99年

86年以降の円高環境で、ピラミッドの頂点である大企業が海外進出して、ピラミッドの下位層がうまく回らくなりました。
91年までのバブルは、物価上昇率3%程度で土地と株以外は好景気と言えなかったにもかかわらず、金利を引き締めてしまい、バブル後しばらくは、その負債で企業活動が低迷。
さらに、97年以降は緊縮財政で、「会社企業」でさえ開廃率が逆転してしまい、「全体(個人企業+会社企業)」の廃業率が急速に悪化しているのがデータで分かります。
つまり、日本の製造業組織は、大企業を頂点とするピラミッド構造に依存しているのです。


▽「非製造業」の組織課題

中小企業庁の「倒産の状況」調べによると、近年の原因別の倒産状況は以下のようになっています。

・販売不振: 65.7%
・既往のシワ寄せ(赤字累積): 17.1%
・他社倒産の余波: 5.7%
・設備投資過大: 5.7%

経営判断の誤りというより、デフレと少子高齢化による市場縮小等、ビジネス環境悪化が原因です。
つまり、日本の非製造業組織は、環境変化に対応できていないのです。



▼日本企業の最弱点は「環境変化対応力」


出典:「世界競争力ランキング」IMD

「会社企業」の開廃率が逆転した96年以降、日本の世界競争力は急低下しました。

出典:「世界競争力ランキング」IMD

97年の急低下は、政府の緊縮財政及び消費税増税の影響だとしても、
19年以降、30位台になっている原因は、ビジネス効率性、つまり、「民間企業の国際競争力」低下にあることが上記データからわかります。

▽ビジネス効率性の内訳(順位は63か国中)

参考:『IMD「世界競争力年鑑2022」からみる日本の競争力 第2回:分析編』三菱総合研究所

ビジネル効率性悪化の要因を、下記のように体系化すると、日本企業の生産性と環境変化対応力に課題があることがわかります。特に「環境変化対応力」の項目は全て最下位です。

[1] 出典:「世界貿易の拡大と構造変化」平成元年年次世界経済報告経済企画庁
[2] 出典:「労働生産性の国際比較2022」公益財団法人日本生産性本部


日本企業は、情報革命以降、デジタル化・グローバル化・ダイバーシティに遅れた結果、国際競争力を低下させているのです。

VUCAとは、Volatility(激動)、Uncertainty(不可実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(不透明性)の頭文字と取ったビジネス用語です。
・Volatility(激動):スマホ普及、グローバル化後の中国アジアとの競合
・Uncertainty(不確実性)」:自然災害、コロナ
・Complexity(複雑性)」:ASEAN所属国の国内事情
・Ambiguity(不透明性)」:情報革命による価値の多様化

▽環境変化に対応するには「アジリティ(俊敏性)」が必要


OODAループとは、Observe(観察)、Orient(状況理解)、Decide(決定)、Act(行動)の頭文字をとった意思決定と行動に関する理論です。VUCAと同じように軍事用語として生まれVUCAと共にビジネス分野でつかれるようになりました。

▽伝統的な組織とアジリティ(俊敏)な組織の違い

昨今話題の「両利き経営」は、経営資源の少ない中小企業への導入は難しく、管理者のいない「ティール組織」は、メンバーのタスクが限定される介護組織やSAなどを除き、多くの業種業態にとっては現実的な組織形態ではないでしょう。

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▽中小企業が実装できるアジリティな組織

参考:「[新版]ブルー・オーシャン戦略―競争のない世界を創造する」 W・チャン・キム、レネ・モボルニュ (著) ダイヤモンド社2015/9/4
参考:「OODA LOOP(ウーダループ)」神戸大学大学院経営学研究科・経営学部

OODAループに関する日本の権威、神戸大学原田勉教授が提案する「現場のOODAと経営管理のPDCA」という組織形態を中心に実装化ノウハウをまとめると上記のようになります。
経営陣は戦略的方向性を示すだけで、計画と実行は現場に委ね、実践後に成果のチェックと予実管理します。



▼ライフサイクルで求められる組織は違う


参考:「アントレプレナーの教科書」‎ 翔泳社 (2009/5/1)

・市場を開拓し顧客を創出していく導入期と成長期には、未だ不確定要素が多いため、即応的な組織が必要で、少数精鋭の開発部隊と、プロセス組織との中間規模のMission組織が最適です。

・製品・サービスが潜在顧客層全般に浸透した成熟期以降は、平均社員でも運営できるプロセス組織でPDCAを回し、組織を巨大化させてきました。
しかし、経営環境変化が激しい近時は、現場への判断移譲を含めたプロセス組織のアジリティが求められています。

・衰退期には、効率性を求める「深化」と、新しい収益の柱を求める「探索」を両立させる「両利き経営」が組織形態の1つの解として人気です。
しかし、経営資源の少ない中小企業では、両利き経営は現実的でなく、組織の「選択と集中」が必要です。


▼市場縮小に合わせた、組織の選択と集中


参考:「IGPI流 ローカル企業復活のリアル・ノウハウ」PHP研究所 (2016/2/18)

組織の選択と集中戦略は、製品・サービスに競合他社に比し明白な強みがあるか否かで、「製品」集中型と「地域・顧客」集中型の2通りに分かれます。
多くの中小企業は「地域・顧客」集中型組織を選択することになりますが、これは、いわゆる「弱者の戦略」と呼ばれる「ランチェスター戦略」のことです。

▽「製品」集中型組織の例

出典:「2018年中小企業白書事例2-6-2」中小企業庁

ミツフジ株式会社は、従来の10倍の値段でも取引を継続してくれる顧客がいたことで、「製品」集中型組織に踏み切れました。
専門性を高めることで、ネットワークを拡げ、世界的な成長分野での顧客も獲得し、成功しています。

▽「地域・顧客」集中型組織の例

出典:『家電「高売り」のヤマグチ、コロナ下でも粗利率44%超』日経ビジネス2023年2月3日号

ライフテクト「ヤマグチ」も、家電の定価販売に納得してくれる既存顧客がいたことで、「地域・顧客」集中型組織に踏み切れました。
家電量販店では不可能な、頻繁な顧客訪問で、電球1個の配達やエアコンチェックなど様々な無料サービスでスイッチングコストを高め、定価販売を実現しています。



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