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潜在成長率からみる日本の未来

▼潜在成長率とは
実質GDPの伸びを、3つの寄与度で分解する手法で、景気変動等の短期的な要因による影響を除けば、将来的にGDPはその数値に収斂されていくとされています。
・労働寄与度とは、就業者数に就業時間を乗じたもの
・資本寄与度とは、企業や政府が保有する設備(資本ストック)の量
・TFP寄与度とは、労働や資本がGDPを生み出す生産効率で、技術革新(イノベーション)

▼日米独の潜在成長率比較
    1986-1990 1991-1995 1996-2000 2001-2005 2006-2012
日本:    4.1    2.7     1.2    0.6    0.4
米国:    2.7    2.8     3.7    2.9    1.9
独逸: データ無     2.9     2.2    1.4    1.1
出典:「世界的な潜在成長率の低下」通商白書2016年経済産業省

▼日本の「労働寄与度」影響事項
▽就業者数
・90年までは労働力増加率が人口増加率より高い「人口ボーナス期」[1]
・95年生産年齢人口ピークアウト[2]
・04年小泉政権下の派遣労働法改正[3]
・08年総人口ピークアウト[4]
▽就業時間
・92年官公庁週休2日制導入(民間は80年ごろから)で労働時間減少[5]
・高齢者雇用・非正規雇用増加による所得と労働時間低下[6]

[1] 出典:「人口推計」政府統計
[2] 出典:「人口推計」政府統計
[3] 出典:「労働者派遣事業関係業務取扱要領」厚生労働省
[4] 出典:「人口推計」政府統計
[5] 出典:「職員の勤務時間、週休2日制、休暇及び育児休業」平成3年度年次報告書人事院
[6] 出典:「高齢者雇用に関する調査2020」日本労働組合総連合会

▼日本の「資本寄与度」影響事項
▽外部環境要因
・80年代貿易摩擦回避目的で日本企業の欧州生産開始[1]
・円高による海外生産増加[2]
・第2アンバンドリングで通信費が急減し海外生産が容易に[3]
▽国内環境要因
・少子高齢化によるキャピタルフライト(資本逃避)[4]
・介護など労働集約的な産業が拡大し設備投資需要低下[5]
・民間建設投資は90年に56兆円でピークアウト、公共投資も96年の45兆円でピークアウト
▽政策的要因
・直接投資先として魅力低下させる法規制[6]
・長期的な金融緩和政策により、さらなる金融緩和による資本蓄積への刺激余地が減少[7]
▽企業判断要因
・95年以降、減量経営で経常利益と設備投資が非相関[8]
・中小企業経営者の重い投資リスク負担[9]
・ITエンジニアの7割がベンダ―所属で企業デジタル化の柔軟性欠如[10]

[1] 出典:「日本経済とグローバル化」平成16年度年次経済財政報告内閣府
[2] 出典:「円高を背景とした企業の海外進出」経済社会総合研究所内閣府
[3] 出典:「グローバリゼーションの過去・現在・未来」通商白書2020経済産業省
[4] 出典:「人口減少時代における対外経済構造の変化と課題」日本経済2019-2020内閣府
[5] 出典:「超長期で見た日本の経済成長の源泉:1885〜2015年」一橋大学
[6] 出典:「サプライ・サイドから見た日本経済停滞の原因と必要な政策」独立行政法人経済産業研究所
[7] 出典:「超長期で見た日本の経済成長の源泉:1885〜2015年」一橋大学
[8] 出典:「景気循環の特徴とその変化」日本経済2004内閣府
[9] 出典:「第4次産業革命を生き抜くための日本企業の生産性向上」独立行政法人経済産業研究所
[10] 出典:「DXレポート」経済産業省

▼日本の「TFP寄与度」影響事項
▽労働の質
・労働の質向上は戦前で終了[1]
・91年教育訓練投資ピーク[2]
・低ダイバーシティ [3]
▽生産性
・長期雇用の弊害:勤続年数13.6年で生産性ピークアウト[4]
・バブル後の追い貸しで生産性低い企業存続[5]
▽新陳代謝
取引代謝低下
・63年までに大企業の系列化が定着[6]
・3/4が系列[7]・8割が企業間取引[8]・5/6が 国内取引だけ[9]
社員代謝低下
・79年整理解雇要件:東洋酸素整理解雇東京高裁[10]
・長期雇用の弊害:勤続年数13.6年で生産性ピークアウト[11]
企業代謝低下
・86年円高環境で開業より廃業増加[12]
・バブル後の追い貸しでゾンビ企業[13]誕生[14]
世代間代謝低下
・少子化でアイデアもつ若者と融合困難化[15]
・91年教育訓練投資(OJT除く)ピーク[16]
・低ダイバーシティ(外国人&女性) [17]


[1] 出典:「超長期で見た日本の経済成長の源泉:1885〜2015年」一橋大学[2] 出典:「生産性白書」公益財団法人日本生産性本部
[3] 出典:『世界競争ランキングから見た「日本低迷」の理由』IMD
[4] 出典:「雇用保護は生産性を下げるのか」独立行政法人経済産業研究所[5] 出典:「生産性と賃金の企業規模間格差」日本労働研究雑誌
[6] 出典:「中小企業政策の変遷について」中小企業庁
[7] 出典:「日本企業にDXを普及させる最大のカギは、下請け構造からの脱却」独立行政法人経済産業研究所
[8] 出典:「令和元年版電子商取引調査」経済産業省
[9] 出典:「中小企業のグローバル化の進展:その要因と成果」独立行政法人経済産業研究所
[10] 出典:「労働事件 裁判例集」裁判所
[11] 出典:「雇用保護は生産性を下げるのか」独立行政法人経済産業研究所[12] 出典:「開業率・廃業率の推移」2022年版中小企業白書
[13] ゾンビ企業の定義:国際決済銀行ゾンビ企業定義「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満」かつ「設立10年以上の企業」[14] 出典:「いわゆる『ゾンビ企業』はいかにして健全化したのか?」独立行政法人経済産業研究所
[15] 出典:「人口急減・超高齢化は経済成長にどのように影響しますか」内閣府経済財政諮問会議
[16] 出典:「生産性白書」公益財団法人日本生産性本部
[17] 出典:『世界競争ランキングから見た「日本低迷」の理由』IMD

▼こうした視点を含めて本を書きました。

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