narumi

詩などをかいています。

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記事一覧

詩「亀」

春風が通りぬける赤い太鼓橋のもとに 柔らかく平らかに盛り上がる土のうえに 雨上がりにきらめく水草のそばに 無数の黒い甲羅が重なっている その生きた彫刻は 天の奥行き…

narumi
3週間前
5

詩「暗闇」

電気消して 写真立てを伏せる時 キミの声のような 体温のようなものが におい立つのが

narumi
1か月前
9

甘い風が吹き荒らす ももいろの銀世界は ひとつ雲の上の理想郷(ユートピア)は 目をそらすと まだひとすじ痛いわたしに ざわめく酸素を強いて たよりない木肌とステン…

narumi
1か月前
5

新書『女のからだ フェミニズム以後』を読んで

自分の身体は自分のもの。これはしごく当たり前のことのように思えるが、実はほとんどの人が達成できていない、特別なことなのだと思った。 女の体は男や国家に搾取されて…

narumi
5か月前
4

ピンクリボンと千円カット

三歳のときに壊したアナログ時計と一緒に箱に詰めた。 何気ないことを一番大切に思っていたあの頃。 いつもいつも空気が淀んでいてわたしらしかった世界。 くまさんの匂…

narumi
11か月前
2

社会の歪み

川上未映子『三月の毛糸』 東日本大震災後の、日本列島をおそう漠然とした不安がテーマになっている。妊娠しお腹が大きい妻と暮らす主人公は、妻が妊娠したくらいの頃から…

narumi
11か月前
4
詩「亀」

詩「亀」

春風が通りぬける赤い太鼓橋のもとに
柔らかく平らかに盛り上がる土のうえに
雨上がりにきらめく水草のそばに
無数の黒い甲羅が重なっている
その生きた彫刻は
天の奥行きのなかに
光を
かたい鼻先をあつめて
まっすぐに顔を向けている

だが夜になると
そそくさと踵を返し
いくつかのすがた
ぬるりと晦ます

詩「暗闇」

詩「暗闇」

電気消して

写真立てを伏せる時

キミの声のような

体温のようなものが

におい立つのが

桜

甘い風が吹き荒らす

ももいろの銀世界は

ひとつ雲の上の理想郷(ユートピア)は

目をそらすと まだひとすじ痛いわたしに

ざわめく酸素を強いて

たよりない木肌とステンレスのへこみ

かたくつめたいあの頃の記おくを

鼻のおくで腐敗した絵具の色を

決してぬりかえてくれない

たけだけしく呻る心臓に 鱗のようにへばりついて

かえらせてくれない

だからこの

いま、枝をはなれ宙を舞う

この

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新書『女のからだ フェミニズム以後』を読んで

自分の身体は自分のもの。これはしごく当たり前のことのように思えるが、実はほとんどの人が達成できていない、特別なことなのだと思った。
女の体は男や国家に搾取されていると言えると思う。
一方「男は仕事」というように残業を強いられてきたという意味では、男の体も国家や企業のものだと言えるのではないかと思った。女の体は男のもの、男の体は企業のもの。
では、自ら企業を操っている社長ポジションの男の体は完全に自

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ピンクリボンと千円カット

ピンクリボンと千円カット

三歳のときに壊したアナログ時計と一緒に箱に詰めた。

何気ないことを一番大切に思っていたあの頃。

いつもいつも空気が淀んでいてわたしらしかった世界。

くまさんの匂い。

ありがとうこれから、アルゼンチンのカフェに行くのだから、

何も用意しなくて良いよというけれど、

悲しい、悲しい風が吹いていたの。

こっちが困るの、三渓園は緑すぎるの。

君も少し、青すぎるの。

それってよく考えたら宗教

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社会の歪み

社会の歪み

川上未映子『三月の毛糸』

東日本大震災後の、日本列島をおそう漠然とした不安がテーマになっている。妊娠しお腹が大きい妻と暮らす主人公は、妻が妊娠したくらいの頃から、途端にわけのわからない眠気に襲われ始める。

東日本大震災後あたりに訪れた、緩やかで長期的な不景気が個人にもたらす

不安感が、非常に巧みに、感覚的に描かれている。

赤ちゃんを包む女性の大きなお腹は、これまでは希望の象徴として描かれる

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