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つれづれなる日々のこと

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#思い出

思い出のなかにある景色

思い出のなかにある景色

家族みんなで旅行に出かけたのは、小学生のころ、たった一度きりだ。
その旅行すらも、目的地は覚えているけれど、どこで何をしたとか、お土産に何を買ったかの記憶はおぼろげにしかない。

ただ、はっきりと覚えているのは、ホテルの部屋から見えた景色。
視界のすべてが海と、空と、あちこちに散らばる島々だった。

窓を開けていないのに、波の音がうっすら響いてきて
きれいやなあと思いながらも、どこか少し怖かった。

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幼いころ、どうしようもなく怖くなった夜のこと。

幼いころ、どうしようもなく怖くなった夜のこと。

少しまえに書かれた、仲高宏さんのnoteを読んで「わたしにも思い当たる節があるな」と感じたことがあった。

子どものころ、夜になって、もう眠いから布団に入ったのに。どうしても眠れなくなってしまうことがあった。

はっきりとした年齢は覚えていないのだけれど。幼稚園くらいから、たぶん小学校を卒業するくらいまでは続いたとおもう。仲さんの息子さんは3歳ということなので、すこし年上だし、感覚的にはちがってい

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憧れの甲子園

憧れの甲子園

「おっ。もう地方大会の日程、載ってるなあ」
父はそう言いながら、おもむろにハサミを取りにいく。

父は野球が好きで、高校野球は地方大会が始まるあたりからそわそわし始める。もっとも、球場に足を運ぶことはなくて、結果を見るだけだ。

「ふぅん。まあ、順当なところが残ってるなあ」と新聞を切り抜いて壁に貼りつけたトーナメント表とにらめっこさはめ勝った高校は赤いペンで塗り進めていた。

父が地方大会から見て

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忘れられないことと、雨上がりの傘について。

忘れられないことと、雨上がりの傘について。

なぜひとは、忘れ物をするのだろう。
「あの夏に忘れた、たからものを探しにいこう」みたいな話じゃない。もっと生活感のある、傘やら、カバンやらのことである。

最近、勤め先のカフェでひんぱんに忘れ物がある。お客さまが会計を済ませ、店を出た直後。テーブルを片付けようとすると、荷物を入れておくように設置したかごの中には、折りたたみの日傘が入っている。

慌ててその日傘をつかみ、「忘れ物したお客さまを追いか

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思い込みの底なし沼から脱出したい。

思い込みの底なし沼から脱出したい。

ずっと勘違いしていたことや、思い込んでいたことを「あ! あれは違っていたんだ」と思えるきっかけは、人によって違うだろう。

そもそも、思い込みというやつは厄介だ。自分で決めつけた考えを正しいものだと理解している。そのため、ほかの意見を受け入れるスキがない。もしかすると、勘違いのほうが、まだ少し猶予があるかもしれない。

わたし自身、これまでにも思い込みやら勘違いやらいろいろやらかしてきた。覚え

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散髪と盆栽

散髪と盆栽

日曜に、夫の髪を散髪した。
初めて夫の髪を切ったのは、はっきりとは思い出せないけれど、もう四年近く前のことだろうか。

はじめのころは「散髪代を節約して、そのお金で釣り道具を買いたい」という理由だったと思う。けれども今では、私がカットする髪型が気に入っているのだと言ってくれる。

散髪と言ってもバリカンでばりばりと、伸びた髪を一掃するだけ。ただまったくの坊主頭は嫌だというのでトップのあたりの髪だけ

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電話に対する特別な緊張感について

電話に対する特別な緊張感について

音声入力が留守番電話へのメッセージ入力に似ているようで、とても苦手だという記事を書いたのですが。

そもそも、電話に対して苦手意識が強すぎる。
その理由はかなり明確で、やはり幼いころや家族と暮らしていたときの電話への接し方にあるなと思い至った。

わたしの実家では、未だにダイヤル式の黒電話を使い続けている。サムネイル画像の電話が、まさにそれだ。ちょっとホコリをかぶっているのが、我が家での電話に対す

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私にとってナマコだった、グレープフルーツの話

私にとってナマコだった、グレープフルーツの話

「はじめて食べた人って、勇気あるよねー。なまこ とかさ」こんな会話したこと、ありませんか? 私はあります。何度か。

知らない食べ物を口にするのって、ちょっとした勇気が必要だよね……と、考えることがあり、ふと思い出した記憶がありました。

小学生のころのことです。
母が親戚の家のおみやげとしてグレープフルーツを、いくつかもらってきました。

姉も私もグレープフルーツは大好きで、夕食後のデザートとし

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小さな恋未満、のものがたり。

小さな恋未満、のものがたり。

2月14日。バレンタインデーです。
義理チョコをくばる、くばらない、くばるのをやめませんか? など色々な話題が出ていますね。

私がこれまでに勤めてきた職場では、バレンタインに義理チョコを渡す習慣がありませんでした。ですので「義理チョコくばる習慣がある会社は大変そうだなぁ」と、たくさん買い込んでいる人たちを横目で眺めていました。

ただ、一度だけたくさんの人に義理チョコを配り歩いた記憶があります。

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NO ウィンタースポーツ YES マイライフ(スキー編)

NO ウィンタースポーツ YES マイライフ(スキー編)

「雪国見学」という名のスキー体験学習があった。小学五年生のころだ。

私が暮らしていた場所から日帰りで行ける「雪国」は滋賀県だった。琵琶湖で有名な滋賀県は、場所によっては雪がたくさん積もっているのだ。豪雪地帯、とまではいえないかもしれないが立派な雪国である。

私はこの「雪国見学」のことが憂鬱で仕方なかった。これまでにスキーを体験したことが一度もなかった。それに、三歳年上の姉が「雪国見学」に行った

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NO ウィンタースポーツ、YES マイライフ。(スケート編)

NO ウィンタースポーツ、YES マイライフ。(スケート編)

「ウィンタースポーツを行わない生活こそ、我が人生」だと言い切れるほどに、運動神経の悪い私にとって、スキーやスケートといったウィンタースポーツは縁遠い存在だ。幼い頃からずっと。

実家の近くに「ひらかたパーク」という遊園地がある。その遊園地は冬のアトラクションとしてスケートリンクが開設されていた。

私も、私の姉も、そして両親とも、誰もスケートは好きじゃなかった。うまく滑れないし、そもそも氷の上を滑

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カールと名付けた、犬の思い出。

カールと名付けた、犬の思い出。

昨夜、何の気なしにテレビをつけると、「サザエさん」が放送されていた。翌日が成人の日で仕事が休みだと、「サザエさん症候群」と呼ばれる、月曜日を思って憂鬱な気持ちにはならないんだな、などとぼんやり思いながらテレビを見ていた。

獅子舞、凧揚げ、羽根つきなどお正月特有の行事を盛り込みながらアニメは進んでいったが「戌年物語」と題された、磯野家に迷い犬が来る、というお話をみたとき、幼少期の思い出がぶわっと頭

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