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【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて⑨


~翌朝~



二人はラブホを出た後、近くの喫茶店に入った。


カランコロン。


「いらっしゃいませ~。お煙草吸われますか~?」


「あ、は、はい」

「喫煙席へどうぞ~」


席へ着く二人。
モーニングセットを注文する。


「ははっ。入口で“はい”って答えたの初めてだ。緊張したー」

「何にでも感動すンのなオメーは」


初めて喫煙席に座って興奮している新開。


「こっちが喫煙席かぁ。なんかドキドキするなぁ」

「禁煙席と間取りは変わンねっつーの」


「おっさんが多いな」

「アア。ガキや女が居ない分、居心地イイぜ」



モーニングセットが運ばれてくる。


コーヒーをすすりながら、感慨深げに新開が言った。


「これが……夜明けのコーヒーってやつか」
「ブーーーーッ!!」

盛大にコーヒーを吹き出す荒北。


「真っ赤になっちゃって。可愛いな靖友。好きだよ」
「テテテテメェ!ふざけんナこんなトコで!」
「お客様大丈夫ですか~?」

店員がおしぼりを持って飛んで来た。






新開は目の前でずっと幸せそうにニコニコしている。


「……」


自分達は、ゆうべ、恋人関係となった。

なんだか、信じられない。


高校時代の仲間。
気のおけない親友。


もう、今までの関係では、ないのだ。



(オレに恋人が出来るなんて……。しかも相手は……新開)


荒北は、不思議な気分だった。





「……ンで?」

「ん?」


荒北は食事を終え、一服しながら尋ねた。


「オメーは今、住所不定・無職ってワケ?」


「!」


新開はばつが悪そうに頭を掻いて、下を向く。


「一応、T区のアパートに住んでるけど……そう。無職だ」


「……」


荒北はフーッと煙を吐いた。



「チャリ辞めて初めて気付いたんだけどさ……。オレ、チャリ以外なんにもやりたい事、無かったんだな、って……。こんな状態で実家帰るわけにもいかねぇし……」


「……」


「おめさんに会いたい、って……。それしか、頭に無くて……」


「……」


「ははっ。せっかく再会出来たのに、こんなんじゃおめさんにすぐフられちまうよな。なんとか頑張って仕事探すよ。だからもうちょっと待っ……」

「一緒にやるゥ?」


「え?」


新開は顔を上げた。


「一緒にって……何を?」



「スロプロ」

「!」


目をまん丸に見開く新開。


「え……いや、でも、オレ、何も知らねぇし」

「初心者でも勝てる台はいくらでもあるし、オレが教える」


「オレにも……出来そうかい?」

「必要なのは1日13時間打ち続ける気力と体力だ」


「それは自信あるけど」

「じゃア決まりだナ」


荒北は煙草を口にくわえたまま、テーブルの紙ナフキンを取ってペンで何やら書き出した。


「軍資金はオレが二人分出す。オメーはオレが選んだ台を打て。二人の一日の収支を合算し、勝った額を6:4で分配。負けた日は0」

紙ナフキンに報酬条件を箇条書きしていく。


「つまり、オメーは1円も損しねェ」

「いや、でもそれじゃ、おめさんの負担額が……」


「安心しろ。大数の法則っつってナ。試行回数の分母が増える程確率は収束する。二人の方が勝ち易いンだ。これを“ノリ打ち”と言う。一日単位で見りゃア負ける日もある。だが、月単位では絶対プラス収支になるんだ」


「オレは……おめさんと一緒にいられるんなら、そんな嬉しいことはねぇけど……」


想定外の展開に戸惑いを隠せない新開。



「それとヨ……」

「?」


荒北は頬を赤らめて、目を逸らしながら言った。

仕事の話より、こっちの方が本命のようだ。




「一緒に……住まね?」



「……靖友……!!」




新開の表情が、パアッと明るくなった。







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