【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて⑧
ピッ。
ガシャッ。
新開は裸のまま、部屋の中に設置してある小さな自販機でベプシを2本購入した。
プシュ。
プシュ。
プルタブを2本とも開け、自分の分をグビグビと飲む。
「ウゥ……」
ベッドへ戻ると、荒北はうつ伏せでKOされていた。
あれから新開に何ラウンドも好き勝手にされ、もう体力はゼロだった。
「ははっ。シーツぐっちゃぐちゃ」
笑いながら新開は床にずり落ちてしまった布団を拾い上げる。
ピトッ。
「ウ!」
冷たいベプシを荒北の頬につける。
荒北はゆっくりゴソゴソと半身を起こし、ベプシを受け取った。
新開はベッドに上がると隣に座り、ベッドサイドの灰皿に入っていたホテルのマッチで煙草に火をつけた。
……ふーー。
一口吸った後、その煙草を荒北の口に持っていく。
「ン」
口だけを動かして、荒北はその煙草をくわえた。
「ふふ……。マジ、映画みてぇ」
「またかヨ」
「情事の後にさ。ベッドで煙草に火をつけて。1本を二人で交互に吸うんだ」
「何の映画だか」
「ああ……なんかやっとわかったよ。こうして汗かいた後、食事の後、酒呑む時……ホッと一息つく時に、煙草がピッタリ合うんだな」
「金魚がよく言うゼ」
「金魚でもかなり疑似体験出来てるよ。オレ……やっと大人になれたんだな。煙草覚えて、DT捨てて……」
「大袈裟……ナニ!?」
荒北は驚いて危うく煙草をベッドに落としそうになった。
新開の顔をまじまじと見る。
新開は照れ臭そうにして言った。
「DTだったんだよオレ。初キスも、おめさんだ」
「マジかよ!」
衝撃を受ける荒北。
「マジさ。だってずっと、おめさんしか目に入ってなかったから」
「……オレと再会出来なかったらどうしてたンだ」
「そん時は一生DTでも構わないさ。好きでもない相手となんて気持ち悪いし」
「……」
「おめさんは……男相手はさすがにオレが初めてだったろ?」
「!」
荒北は自分に振られて真っ赤になった。
「オ、オレぁ……男も女も……今日が初めてだボケナス」
「え?」
驚く新開。
思わず身を乗り出す。
「じゃあ、おめさんも?キスは?」
「キキキキスだって今日が初めてだヨ!もうお婿に行けねーよ!責任取りやがれ!」
「靖友……!」
ガバッ!
「うわッ!」
新開は荒北を抱き締めた。
荒北は両手を上げて、ベプシと煙草を保護する。
「嬉しい!好きだよ靖友!大好きだ!責任取るよオレ!もう離さない!」
「責任云々は言葉のあやだバァカ」
「なんでもいいよ!好き!好き!」
「へいへい」
そういえば今思い返してみると、自分も箱学時代に新開の美しい顔や逞しい身体にドキッとすることが何度もあった。
あれは、知らず知らずのうちに意識していた、ということだったのかもしれない……。
自分は今まで初恋を経験していない。
恋というものがどんな感じなのか知らない。
しかし、新開に対しては確かにドギマギする場面がよくあった。
それは再会した今でもだ。
(……そうだったのか。オレも箱学の頃から、コイツのことを……)
荒北は今やっと、自分の気持ちに気が付いたのだった。
2023-11-13
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