【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて⑤
「1本もらうよ」
新開はパールメントライトの箱から1本取り出した。
「……無理すんなヨ」
心配そうにする荒北。
「チャリやってた頃はたくさんの制限があった。……やっと、全てから解放されたんだ。もう何だって出来る。失うものも無い」
「煙草ごときで大袈裟だバァカ」
「ははっ」
ピン。
荒北はジップの蓋を開け、新開に火を差し出す。
「悪い遊びを覚えたいお年頃なんだねェ、新開チャンは」
「色々……教えてくれよ、靖友」
新開は慣れない手付きで煙草を口にくわえ、火に近付ける。
「線香じゃねェから火に接触させるだけじゃダメだ。ほんのちょっと、ストローみてェに口先だけで軽く吸う。そしたら簡単に火がつくから」
詳しくレクチャーする荒北。
ジ……。
無事、煙草に火がついた。
「ゆっくり、ちょっとだけ、喉奥まで吸い込んでみろ。一気に吸うな。ちょっとだけだ」
慎重に説明する。
「……」
「……」
スゥ……。
「げほ!げほげほげほっ!」
途端に咳き込む新開。
「アアもうやめとけやめとけ。オメーにャ無理だ」
背中をさすってやりながら、新開の手から煙草を取り上げる。
「嫌だ。オレも吸えるようになりたい」
涙目になりながら、駄々っ子のように新開は荒北から煙草を奪い返した。
「わかったヨ。じゃアこうしよう」
荒北は呆れながら提案する。
「肺まで吸い込まずに、口の中だけで吸って吐くンだ。それなら咳込まねェし、煙草の味も楽しめる。見た目にも違いはわからねェから」
「……」
新開は荒北に言われた通り、口の中だけで煙を吸い込み、吐き出してみた。
「うん。これなら平気だ」
「だろ?その吸い方は“金魚”ってンだ。カッコはつけたいがどうしても吸い込めねェ奴はそうする」
「へ~」
何度も練習してみる新開。
その後、煙草の持ち方、煙の吐き方、灰の落とし方、火の消し方等、一通り習得した。
ふーー。
他人にかからないよう、風向きを考えて煙を吐く新開。
「だいぶサマになってきたじゃナァイ」
「ははっ。覚えると楽しいもんだな煙草って」
練習で何本も吸ったため、箱が空になってしまった。
「オレ、ちょっと外行って買ってくるよ」
新開が財布を出しながら席を立とうとするので、荒北は慌てて止めた。
「いや、外まで買いに行かなくても喫煙OKな店には大抵用意してあるんだ。オニーサン!」
荒北は軽く人差し指を立てて、バーテンを呼んだ。
バーテンは無言で頷き、荒北の目の前にパールメントライトを1箱置いた。
「あンがとネ」
バーテンに礼を言う。
それを見て感心する新開。
「すげぇ。何も言ってないのに銘柄までわかるんだ」
「ちゃんとしたバーテンは、客の吸ってる銘柄や残り本数をさり気なくチェックしてて、こうやってすぐに出せるようにしてンのさ」
「マジかよ……カッコいい。煙草の世界って、ホントカッコいい」
「感動し過ぎだ」
「いや、だってホント、イカスよ。なんかオレ、映画の中に入ったみてぇ」
新開は興奮している。
「だいぶ酔ってるみてェだなオメー」
「うん、酔ってる。でも、すげぇ気分いい。今日は、すげぇ楽しい」
「そりャ何よりだ」
新開は目がトロンとしてきた。
荒北のジップを手の平で転がす。
「このライターも、すげぇイカス」
「アア。ジップは芸術品だ。デザインも豊富で世界中に収集マニアが居る」
「この、ピン!って音、最高」
「だろ?このイイ音が出るよう緻密に設計されてンだぜ」
「この、オイルの香り、たまんねぇ」
「オレもだ。ジップはどんな強風の中でも火がつくように出来てンだ」
「すげぇ。オレ、もう……メロメロ」
うっとりとした表情でヘナヘナと全身が脱力しだす新開。
「オイ、新開、大丈夫か?」
「ふふふ……」
ニコニコ笑っている。
「全く……そろそろ帰ろうぜ」
荒北は新開の腕を掴み、背中を押しながらbarを出た。
外は少し肌寒い風が吹いている。
「オメー、今どこ住んでんの?タクシー呼んでやっから」
荒北は大通りに向かって歩き出した。
その時。
新開は背後から荒北の両肩を掴み、グッと引き寄せた。
「!」
ダン!
そのまま荒北の背中を路地裏のビルの壁に乱暴に押し付ける。
「新……?」
新開は、荒北の頬を両手で包み……。
唇を奪った。
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