【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて④
「……ンじゃ失礼して」
乾杯のあと荒北は上着のポケットから煙草を出し、カウンターの上に置いた。
パールメントライトを箱から1本抜き、口にくわえる。
「……」
その仕草を新開は興味深げにじっと眺めている。
ピン。
親指で弾くようにジップの蓋を開け、
シュボッ。
火を擦り起こす。
一瞬、オイルの香りが漂う。
ジジ……。
息を軽く吸い込みながら、煙草に火をつける。
カチャッ。
手首のスナップを利かせ、ジップの蓋を閉める。
「……」
フーーッ。
人差し指と中指で煙草を挟み、口から離して煙を吐く。
「……ヒュウ」
その一連の流れを見て、新開は感激した。
「……イカス。イカスよ靖友。カッコいい!」
「ハァ?」
「似合うよすごく。昔の映画みたいだ。煙草吸うとこ、こんな近くで生で見たの初めてだ。感動した」
「……まァ、今はあんまり見掛けねェ光景だからな」
「だってさ。現在の煙草って喫煙所でショボくれたオッサン達が寄り添ってスパスパしてるイメージじゃん」
「どう見てもカッコ悪りィよな」
「でもさ。昔のハードボイルド映画ってみんなカッコ良く煙草吸ってたよな」
「まァな」
「オレ、別に煙草の匂いって嫌いじゃないんだ。むしろ、好きかも。今日だってずっとパチンコ屋の中にいたけど、全く気にならなかったし」
「昔は会社でも喫茶店でもみんな吸ってンのが当たり前だったからナ」
「体に悪いとか肺ガンになるとか言われてるけど、ホントかなって」
「個人差あると思うぜ。だってそれじゃ昔の人はみんな肺ガンかって言うと全然そんなことねェしヨ。ヘビースモーカーでも肺ガンにならず長生きしてる爺ちゃんいくらでも居るしナ」
「もちろん、妊婦や子供には悪いってのは理解出来るけどさ、ちょっと匂いがした程度で殺す気か!って烈火の如く怒るのはどうかと思うよ」
「それな。少しでも煙吸い込んだら死ぬと勘違いしてンのな」
「ニコチン中毒になるぐらい依存症だと問題なんだろうけど」
「オレはまだ中毒ってほど吸ってねェから、いつでも止めれるぜ」
「靖友……いつ煙草覚えたんだい?」
「……ヤンキー時代に吸ってた。チャリ乗るようになってから止めた」
「箱学ん時?」
「中学で野球辞めてから、箱学でチャリ始めるまでの間だ」
「中学生で吸ってたのかよ」
「ヤンキーなんてみんなそうだゼ。ガキが煙草吸うと成長止まるとか言われてっけど嘘っぱちだ」
荒北は煙草を指に挟んだままグラスを上から掴み、器用にカクテルを呑んだ。
「……ふふっ」
新開はカウンターに頬杖をつき、荒北を見つめて微笑む。
「……ンだよ」
「おめさん……。やっぱり魅力的だ。昔も……今も……」
「なッ!」
おもむろにそんなこと言われ、真っ赤になる荒北。
「なんだヨ!よ、酔ってンのか?」
あたふたしてグラスを倒しそうになる。
「靖友……」
新開は荒北の方へ手を伸ばした。
ドキッ!
心臓が跳ねる荒北。
新開はそのまま荒北の目の前に置いてある煙草の箱を掴んだ。
「オレも……吸ってみたい」
「エ?」
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