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実家通信

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週に一度、都内の実家に泊まりで通っています。 こちらのnoteマガジンには、認知症で要介護認定を受けた母と過ごす時間の記録、ぼやきを含めたつぶやきなどをまとめています。 実家から…
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#介護

母の面会へ。ちょうどリハビリ中でベッドの上で必死に身体を動かしていた。必死とはこのこと。ほんの数週間前までウロウロ徘徊していた母が夢のよう。母をみながら自分の身体が思いどおり動くこと、物を噛んで飲み込めること、声を自由に出せること、肉体という宇宙の神秘に気づく。すごいことなんだ。

卒業の日

卒業の日

怒涛のひと月が過ぎた。
綱渡りのような、決して落とせないバトンリレーのような。

人間はこんなにももろく
そして、たくましいのかを感じたひと月だった。

悲しくて辛くてイライラして腹が立って切なくて
眠いけど眠れなくて。

でも同時にそんな中

家族、きょうだいみんなの優しさや陽気さや
瞬発力やあれこれを工夫する創造性やら。

緊張感の続く、大変な状況でしか生まれない底力が、この時期を支えてくれた

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2本の足で立つ

2本の足で立つ

この数週間で母の介護のフェーズが変わった。

認知機能が衰えても、身体はしっかりとしていたのだが、風邪をきっかけにみるみると衰えてしまった。それはもう坂を転げ落ちるようなかんじで。

数日前にできたことが、今日はできない。
日に日にできないことが増えていく。
これまで杖も使わずに歩いていたのに、2本の足で立つことが、だんだん大変になっていく。

それでも生きている限り、食べなければならないし、食べ

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母がデイサービスでカーネーションをいただいてきた。まだ数回しか訪れていないのに、スタッフの方々が寄せ書きしてくれた感謝状も添えられていた。「いつもありがとうございます」「お会いするのが楽しみです」「優しい笑顔とお声が大好きです」「これからも一緒に楽しみましょう☺︎」有り難くて泣く。

夕食後、実家に一つだけある苺スプーンで苺をつぶしイチゴミルクを作っていたら母が自分もそうしたいと言う。スプーンを渡したら「こりゃ便利」と嬉しそうにつぶしている。練乳と牛乳をかけてあげたら「こりゃ美味しいわ!」とまるで初めて食べたかのように無邪気に喜んでいる。’忘れる’ことも佳き。

紆余曲折ありつつもついに母が初めてデイサービスに(半日だけだけど)1人で参加してきた!途中で帰ってこなかったのは初めて!お昼ごはんもいただいてきた。有り難くてサクラサク気持ち。帰宅した母に「今日は何したの?どうだった?」と聞いたら「まったく人付き合いも大変だよ」だって。ウケるー。

食べてもらうしあわせ

食べてもらうしあわせ

最後に母が作ったものを食べたのはいつだったのだろう。
料理好きだった母が、料理をしなくなり半年近くが過ぎた。正確にはできなくなって、だが。

今でも私たちが「お母さん、このキャベツ切ってくれる?」「これ菜箸で炒めてくれる?」とお願いする形で作業をしてもらうことはある。
すると、迷いなく手は動く。何十年やってきたことだ。体が覚えている。

料理をするということは、思っている以上に様々な段取りや手順が

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こんなことしてていいよ

こんなことしてていいよ

母の抑うつ状態が続いている。

「認知症になったら、人が変わったようにずっとニコニコしているの」
いつだったかそんなお友達の親御さんの話を聞いたこともあり、たとえ何もわからなくなっても、穏やかに微笑んでいてくれればいいなぁと思っていたが、現実はそうではなかった。もちろんこれからそうなることもあるのかもしれないが。

最近の母は
「お母さん、こんなことしてていいの?」
「お母さん、ここにいていいの?

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きのう初めて母を

きのう初めて母を

きのう初めて母をお風呂に入れた。
すっかり足腰が弱くなり、認知機能も衰え、実家の古いお風呂に1人で入るのが難しくなってきたから。

着替えを手伝うことはしていたけれど、お風呂の介助は初めて。
私は服を着たままで。
腕まくり足まくりをしたら気合いが入った。

まだ寒いので、重ね着しているから服を脱がせるのも一苦労。一枚、一枚…脱ぐのにも時間がかかる。やっとのことでスッポンポンになった母は、痩せてしま

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87歳の母、ついに要介護認定が出た。いろんな支援を受けられるというのに、何も受けたくない、訪問もイヤだと頑なに拒む。身体を動かさないと歩けなくなっちゃうよ、というと「いつでもできる」とラジオ体操ブーブーを出してきて急に体操をし始める。なんなんだよ、もう!とブーブー言ってるわたし。

今週の母と散歩録。風が冷たくて寒かった。お散歩中の会話はたいていお天気のことや、歩く道すがらに出会う木や花、鳥のこと等。昨日は道端の小さなキンセンカを見つけて「みてみて」と足を止めた。「かわいいね」と母。いつも同じ道を歩いているが、短い距離でも季節の移り変わりを感じる。うれしい。