かつて猫に憧れた犬

田舎育ち都会暮らし。海と温泉を愛するアラフォー。現在は地方に住み、時々本の虫。

かつて猫に憧れた犬

田舎育ち都会暮らし。海と温泉を愛するアラフォー。現在は地方に住み、時々本の虫。

記事一覧

おじちゃんとおばちゃんが遊びに来た 前の日から来てるとお母さんの電話で知っていたけど 本当に来てくれた こんな 遠い遠い 神奈川からしたらすっごく遠い田舎まで 私は…

大粒の雨が 僕たちの不安をぬぐい去るかのように 灰色を流していく。 染み込んだ灰色は 大地を潤す糧となって 新しい芽を息吹かせる。

無題

かわいさにかこつけて 笑顔を振りまくあの子たち 高見えする服で 今度は何を望むの 自信のなさに輪をかけて いつも猫背で上目遣い 自分の殻にこもったら 次が来るたびため…

一番ボタル

母を隣に乗せてホタルの出る川まで 普段は見ない数の車 子供連れ 田んぼの角の道で脱輪した車 大階段を降りて夜店を眺める 草むら近くに 人 人 人 手作りの竹笛があちこ…

お店の中では

肉が卵液の中で泳ぐ ジュジュ ジュワワァ オタマがフライパンに当たる音 ひっくり返す音 かき混ぜた箸の液垂れをボールで切る音 真っ黄色のお月さんみたいに フライパンの…

午後の有休

何もかもほっぽりだして、休みたい時がある。 やることはいっぱいたまってるけど、みなさん、ごめんなさい。今日の私は我慢の限界です。 午後から休む宣言をして、荷物を…

涙くんさよなら

久しぶりに泣いて胸がきゅうとなる。 なんでかは多分月1のホルモンの揺らぎ。 そうだ、昔から影響を受けやすい方だった。たびたびコイツに泣かされる。丁度疲れがたまった…

焚き火のような恋

そもそも長い間一人の人を好きでいたことがない 知らない間に友達になって ある日突然いい感じになって 好きが何かもわからないまま 気づけば付き合っていた 自分がどう…

ただ 在るだけなのに

ただ 在るだけなのに 照らす光が強くなれば 影が濃くなり 光が弱ければ 影は薄くなる 障子の向こうの柿の木は そのままなのに そのまま 在るのに 人間も ただ同じように在…

月の輝き

たなびく雲の手が月をつかもうとしていた きっとつかんでも月はそのままで 雲の隙間から光を放ち続けるだろう

朝が来るまで

水平線に朱が拡がり空と海が離れていく 溶け合っていた二人 二人の時間は 朝日がいたずらに邪魔をして 仕方なく離れていく きっとまた二人で溶け合う時間は 何度も何度もや…

そうめん日和

こんなに暑い日は、オレンジの浮き輪を持って そうめんの川に入りたい。 そうめんの川はつるつるしてて、水底や土手が 竹になっている。 浮き輪に乗って流れると、 上流か…

ハワイの生き物

ホロホロシュリンプを飼った。 前から動画で犬や猫や鳥やアヒルを見るたび可愛いなぁなんて思ってたけど。 昔姉がもらってきたハスキー、祖父が闘鶏に飼ってた軍鶏にチャ…

物語3

銀色の天幕が張られオーロラが波打つ 北の最果てで狩人達が空に向かって矢を放つ 弦をはじく音に雪原で眠る狼が遠吠えを始める 矢じりの水晶が輝きながら 山や狼の頭上を …

物語2

光の柱が立つ南の空の雲は 銀色のくじらが跳ねたような形を成し 鏡面の輝きの海は 空に続いていく 船乗り達は帆を張り 光の柱の梺まで船を走らせ銀色の魚を追う 海藻で編…

物語1

縦横無尽に横たわる 灰色のヘビ その硬い背中には 草木も生えることなく 農夫達はヘビの背から逸れた大地に 畑を作ることを許されている 兵士たちは長い間ヘビを見下ろす…

おじちゃんとおばちゃんが遊びに来た
前の日から来てるとお母さんの電話で知っていたけど
本当に来てくれた
こんな 遠い遠い 神奈川からしたらすっごく遠い田舎まで

私は明日出発するし 今日は早く帰って一緒の時間を
いっぱい過ごそうって思ったんだ

夜には美味しいものも食べるって聞いてたから
お昼はおにぎりとオニオンスープで軽く済ましてた
5時近くなって手が震えて 脱力感があって体が熱くて
インフルエ

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大粒の雨が 僕たちの不安をぬぐい去るかのように

灰色を流していく。

染み込んだ灰色は 大地を潤す糧となって

新しい芽を息吹かせる。

無題

かわいさにかこつけて
笑顔を振りまくあの子たち
高見えする服で 今度は何を望むの

自信のなさに輪をかけて
いつも猫背で上目遣い
自分の殻にこもったら 次が来るたびため息をつく
あの子も その子も 他人と自分を区画分け

勝手に築いた隔たりを越えて
ホントはちっぽけな僕らだと知る

完璧に乗りこなしてた日々が
薄っぺらく感じたら
立ち止まらないで景色を見よう

冷たくなった体を 温めて溶かすから

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一番ボタル

母を隣に乗せてホタルの出る川まで

普段は見ない数の車
子供連れ 田んぼの角の道で脱輪した車

大階段を降りて夜店を眺める
草むら近くに 人 人 人
手作りの竹笛があちこちで鳴る

みんなが見ている方向は
川向かいの茂みのホタルの群れ

高瀬舟を待つ列の間を抜けて
人々の頭上をゆるゆると飛ぶ

見上げると星が出ている
一番星と一番ホタル 見つけた

お店の中では

肉が卵液の中で泳ぐ
ジュジュ ジュワワァ
オタマがフライパンに当たる音
ひっくり返す音
かき混ぜた箸の液垂れをボールで切る音

真っ黄色のお月さんみたいに
フライパンの中で卵が広がる
みんな みんな 嬉しそう
まな板の上のささみも
揚げられたエビフライにハンバーグも

お皿の上では ハムのタオルケット ポテトサラダの枕
パスタのスプリングにハンバーグのベッド
最後にデミグラスソースのシーツをかけて

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午後の有休

午後の有休

何もかもほっぽりだして、休みたい時がある。

やることはいっぱいたまってるけど、みなさん、ごめんなさい。今日の私は我慢の限界です。

午後から休む宣言をして、荷物をイスに置き、夏の日差しみたいな中を歩いて車に乗り込む。

もわっとあたたかな空気が体を包み、そのまま走らせると海が見えた。あー、とてもいい海。夏の色の波。

平日午後からの有休で心が元気になるなんて。
今朝の私は腰痛で、さっきまで職場で

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涙くんさよなら

久しぶりに泣いて胸がきゅうとなる。
なんでかは多分月1のホルモンの揺らぎ。
そうだ、昔から影響を受けやすい方だった。たびたびコイツに泣かされる。丁度疲れがたまったり、色々思ったりしてる頃、普段は心の押し入れに閉まったものたちが拡大鏡を通したみたいに、ポンと目の前に置かれる。
私は閉まったはずの感情たちを久々目にして、一瞬「君たちって誰だっけ。どこから来たの?」ってなってるけど、思いや感情たちは、す

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焚き火のような恋

そもそも長い間一人の人を好きでいたことがない

知らない間に友達になって ある日突然いい感じになって
好きが何かもわからないまま 気づけば付き合っていた

自分がどうかもわからずに 気持ちをすっ飛ばして
楽しいが続いて いつか始まったモヤモヤから
釣り合ってたはずの気持ちも
相手が見えないまま 相手のことを知らないまま

見えてるのに 心は見えなかった
見ているようで 見ようとしなかった

知らな

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ただ 在るだけなのに

ただ 在るだけなのに
照らす光が強くなれば 影が濃くなり
光が弱ければ 影は薄くなる
障子の向こうの柿の木は そのままなのに
そのまま 在るのに
人間も ただ同じように在るだけなのに
注目され照らされる光が強ければ
濃く写る

月の輝き

たなびく雲の手が月をつかもうとしていた

きっとつかんでも月はそのままで

雲の隙間から光を放ち続けるだろう

朝が来るまで

水平線に朱が拡がり空と海が離れていく
溶け合っていた二人
二人の時間は
朝日がいたずらに邪魔をして
仕方なく離れていく
きっとまた二人で溶け合う時間は
何度も何度もやってくる

そうめん日和

こんなに暑い日は、オレンジの浮き輪を持って
そうめんの川に入りたい。
そうめんの川はつるつるしてて、水底や土手が
竹になっている。
浮き輪に乗って流れると、
上流から輪切りの草が流れてくる。
川の終わりの滝壺は、ガラスのお椀型で
つゆがたまって濃い色になっている。
バシャンと飛び込み、つるつる流れる。

そうめんの川に入りたいと思った暑い日だった。

ハワイの生き物

ホロホロシュリンプを飼った。
前から動画で犬や猫や鳥やアヒルを見るたび可愛いなぁなんて思ってたけど。

昔姉がもらってきたハスキー、祖父が闘鶏に飼ってた軍鶏にチャボ。みんな、高校か大学頃にいなくなった。

今は父親が近所の人と共同で鶏を飼っている。
ロッキーにポッキー、クッキー、マドンナ、ポンパドール。
父が名付けた鶏達も今は一羽になってしまった。
同級生も知り合いも、少なくなっていくことに時折虚

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物語3

銀色の天幕が張られオーロラが波打つ
北の最果てで狩人達が空に向かって矢を放つ
弦をはじく音に雪原で眠る狼が遠吠えを始める
矢じりの水晶が輝きながら 山や狼の頭上を
速度を早めて走っていく
空気が震え一番高い杉の木を越えて
矢じりがオーロラに近づくと キンと高い音を立てて
水晶が虹色の火花を散らす
放たれた矢が弧を描き流れ星となって天に吸い込まれていく

虹色の火花のかけらが凍った湖に落ちると
落ち

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物語2

光の柱が立つ南の空の雲は
銀色のくじらが跳ねたような形を成し
鏡面の輝きの海は 空に続いていく
船乗り達は帆を張り 光の柱の梺まで船を走らせ銀色の魚を追う 海藻で編んだ網は潮に強く 流れ着いた小魚がかかるので
船乗り達は餌を持たずに漁に出る

東の大地では 緑の風が吹くと
村の外れで今朝生み落とされた卵が収穫され
大小様々な灰白色の卵は機械小屋に集められる
風熱で膨らんだ殻は飴細工のように薄

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物語1

縦横無尽に横たわる 灰色のヘビ
その硬い背中には 草木も生えることなく
農夫達はヘビの背から逸れた大地に
畑を作ることを許されている
兵士たちは長い間ヘビを見下ろすように立ち
中には老いて傾いた者が一人、二人
それでも列を乱すことなく
銅褐色と銀色の甲冑の隊列は続く

山を掻き分け農夫達の村へ着くと
陽が昇ると同時に朝が始まり
朝露に濡れた桑の実を摘んではせっせとジャムを作る
赤いホーローいっぱ

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